12-1 帰国
そんな日常を過ごし、僕たちはモーヴェ王国を出ることになった。クラフトを除いて。
「俺はここに残ってツァール様の元で働く。
モルカとレイスにあったら宜しく伝えてくれ。こっちで元気にやっていると。」
「うん。わかったよ。寂しくなるな。」
「あらそう?私は暑苦しくなくなって清々しているわ。」
シェーンは振り返っていった。そんなことを言っているシェーンの目には涙が溜まっていた。
「ん?シェーン様、何か言いましたか?」
「何でもないわよ。」
「みんな、レーグル王国の復興に尽力してくれてありがとう。
助かった。まだ、復興するまで時間がかかると思うが、
軌道に乗ってきたし、あとはこっちでどうにかするよ。
国民も率先して動いてくれるようになったしね。
みんながいなくなるのはさびしいけど、あっちの様子も気になるし、
モーヴェ王国のことはよろしく頼むよ。ディグニ。」
「はい。ご期待に応えられるように努力します。」
なんだか、言い方が固くなった。
「あ、ああ。シェーンもビス君もよろしくな。」
「うん。」「ええ。」
「じゃあ、そろそろ行くか。それでは、お元気で。ツァール様。クラフトさん。」
僕はお辞儀をして、その場をあとにした。
僕たちは城門を出た。セフォンたちが待っていた。
「セフォン‼久しぶり。一緒に帰ろう。」
「ビス、どうする?一人で乗るか?」
「いいの?だったらセフォンに乗りたい。」
「ああ、いいぞ。」
「シェーン様は?」
「わたしも一人で大丈夫よ。ね、アイブス。」
「そう、ですか。では、私はクラフトさんが乗ってきた馬に乗りますね。」
ディグニは寂しそうな顔をしていた。
僕たちは来た道と同じ道を通ってモーヴェ王国に向かった。
しかし、着た時とは様子が変わっている。異質な生物が闊歩しているのだ。そして襲ってくる。
「相手をしている暇はない。二人ともしっかり着いてこい。」
僕とシェーンはディグニを必死に追った。
「は、はやい。頑張って。セフォン‼」
セフォンは鼻を鳴らし、スピードを上げる。
プロウバの森に着いた。やっと、異質な生物たちを撒くことができた。
ただ、おかしいことに逆にプロウバの森だけ異質な生物はいなかった。
それに、じとっとまとわりつく感覚が僕を包み込む。不気味で仕方ない。
シェーンは知識欲を必死に抑えている。シェーンも何か違和感を覚えたんだろう。
それに気づいたのかディグニが言った。
「ここで少し休憩しましょう。目の見える範囲であれば自由に行動していいですよ。」
「で、でも急がないと。」
「ここを抜けたらおそらく休憩する隙がないと思います。
ですので、ここで一休みしましょう。そうしないと体が持ちませんよ。」
「わかったわ。」
態度には出さないがシェーンはワクワクしている。そしてそこら辺を探索している。
「ビスもいいぞ。時間が来たら、呼ぶから。」
「うん。」
「そろそろ行くぞ。」
その声に僕とシェーンはディグニの元に行く。
シェーンは両手いっぱいにいろいろなものを持っていた。シェーンは僕の視線に気づく。
「な、何よ。これは必要なことなの。私がやろうとしていることに。」
シェーンは顔を赤くしていた。
「別に。何も思ってないよ。」
「何してるんだ。行くぞ。」
僕たちはプロウバの森を進んだ。
ディグニの言う通り、プロウバの森を出たら、休む暇がなかった。
大勢の異質な生物がいてレーグル王国に向かっていた時よりも時間がかかった。
「何でこんなにいるのよ。」
「シェーン、そんなに大きい声だしたら気付かれるよ。」
「わかってるわよ。」
「二人とも静かに。」
どうやら僕もうるさかったらしい。
進んで、隠れて、進んで、その繰り返しだった。
モーヴェ王国に着いたのは太陽が少し顔を出している時だった。
不思議なことに回りには異質な生物がいなくなっていた。
「おーい。俺だ。」
橋が降りてくる。進むと見覚えのある人が立っていた。
「戻ってきたか。ディグニ。ビス。シェーン様も。」
ハウだ。ただ、雰囲気が少し違っていた。それに疲れているような。
「ああ、いろいろ話したいが、王様に早く報告しなくちゃいけないんだよ。」
「そうか、そうだよな。」
ディグニが急いでいる。
「モーヴェ王国は変わりないか?」
「自分の目で確かめな。」
なんだか含みのある言い方。嫌な予感がする。
城門をくぐり抜けるとそこには
・・・・荒れ果てたモーヴェ王国の姿があった。




