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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第2章 ”別れ”と
44/176

10-2


俺は、町の中心部にやってきた。暑い。都にかく暑い。汗が止まらない。



「なんだこれは。」



そこには、人々の山ができていた。辺りを見回して生きているひとがいないか探す。

建物と建物の隙間に膝をついているクラフトが見えた。



「クラフトさん‼」



駆け寄ろうとするとクラフトさんはこちらを見て叫んだ。



「来るな‼ディグニ。」




俺が足を止めた瞬間、クラフトさんは何かに吹き飛ばされていた。



「ディグニ様がここに来ているということは私の主は死んだんですね。」



聞き覚えのある声。暗く平坦のない声。その声の主が姿を現した。

ただ、なんだか、モーヴェ王国であった時と雰囲気が少し変わっていた。



「お前は・・・・・タド。」



「そうです。私です。」



「お前が言う通り、お前の主は死んだ。もう戦いは終わったんだ。」



「そうですか。まあ、どうでもいいですけど。」



怒りが込み上げてくる。主が死んだというのに。



「何⁉」



「何と言われましても、言葉通りです。

あいつがどうなろうが知ったことではない、そういったんです。」



こいつに心というものはないのだろうか。



「それより、ディグニ様。レンコルには会いましたか。」



なぜレンコル王子を呼び捨てにしているのだろうと疑問に思ったが、今は気にしている場合ではない。



「レンコル王子も来られているのか。」



「来られてるも、何も、モーヴェ王国であったんじゃないですか。

捕虜の拷問はディグニ様が行うと風の噂で聞いたのですが。」



「まさか⁉いや、でも・・・」



「顔が違かった、そう言いたいんですか?顔なんていくらでも変えられますよ。」



「そんな、俺はなんてことを。」



「あっ。もしかして、消滅しちゃいました?イヤー残念です。」



全然残念そうに聞こえない。



「おい、タド、レンコル王子に魔法をかけたのはお前か。」



「そうです。魔法がかかっていることを知っているということは、

裏切っちゃったんですね。あいつ。やっぱりあいつは、自分のことばかりだ。改めて実感しましたよ。」




疑問が出てくるどれだけ理由を考えても浮かばない。



「なぜそんなことを。お前がそこまでする理由が分からない。それにお前が魔法をつかえるなんて。」



「そりゃそうでしょう。相手が知らないということはアドバンテージになります。

そう簡単に知られるようなへまするわけないでしょう。」



タドは俺を馬鹿にしたようにクスッ、と笑う。



「くっ。」



「まあ、ここまで来たら黙っている必要もないでしょう。

教えてあげますよ。時間稼ぎにもなりますし。」



俺は慌てて回りを見渡す。するとヴォルフに囲まれている。足音さえしなかった。



「どこから出てきた⁉」



いや今はそんなことはどうでもいい。

ここからすぐに抜け出さなくては。より被害が出てしまう。



「おっと、動かないでください。あなたが動いたら、あれを燃やしますよ。

まだ生きている人が燃やされるとどうなるでしょう。楽しみです。」



タドの視線を辿ると、そこにはさっき俺が見た人の山があった。

それに続々と新しい山がヴォルフたちが作り上げていた。



「なんてことを。」



燃やされた光景を想像すると、虫唾が走る。



「自分のおかれた状況は理解していただけましたか。大人しく私の話を聞いてください。」



「わかった。聞くから早く話してくれ。」



タドの話を聞きながら何か策を練るしかない。

クラフトさんが無事で加勢にきてくれればどんなに楽か。



「そんなに急かさないでくださいよ。

では、まず私がどこからきたのかということを話ましょう。・・・」



タドは、勿体つけて話始めた。



「私はプロウバの森で前レーグル王に拾われました。そうあの少年のように。」



なぜこいつがそれを知っている。問おうとしたが、時間を鑑み飲み込んだ。今聞くべきことではない。



「そして私は、レーグル王国の王子として育てられたのです。

レーグル王は私が魔力を持っていることを知っていました。

その時からレーグル王国は他種族を国の中に入れていましたから、

確認する方法はいくらでもあったでしょう。



レーグル王は、私を大事に育てていたと思います。

他の王子たちよりも。なぜなのかはわかりませんが。

ただ、あなたも知っているでしょう。この国では人間以外の種族を奴隷として扱っていたのを。



想像は容易いでしょう。私は蔑まれました。

王の寵愛を受けていたのも相まってレンコルにはひどい扱いを受けましたよ。

思い出すのもおぞましいんでしょうね。国民は最初の内は普通に接してきましたよ。



ただ、徐々に徐々に違和感を覚え始めました。普通に接しているのに目の奥が真っ黒なんです。

おそらくレンコルが広めたのでしょう。私を排除したかったのだと思います。



それを意に反さなかった私が気に食わなかったのか、

私への蔑みはなくなることはなくむしろ増えていきました。


私は図書室に籠りました。それしか楽しみがなかったんです。

それを見かねた王が言われたんです。モーヴェ王国に行かないか、とね。



私は全然気にしていませんでしたが、

外からレーグル王国を見るのも悪くないと思い、モーヴェ王国に行くことにしました。

レンコルは清々していたでしょうね。国民も。








モーヴェ王国では、国賓として扱われるはずでしたが、私は断りました。

それでは意味がありませんから。私は使用人として扱ってくれと。



それを知っているのはモーヴェ王とルトさんだけです。

それとレーグル王は魔法のことは誰にもいってはいなかったようです。

二の舞にならないように、せめてもの償いだったんでしょうね。無駄な労力を使わずに済みました。



まあ、ルトさんには怪しまれていましたけど。そしてフィロ様のお付きとして働くようになりました。

驚きましたよ。フィロ様とレンコルの性格がそっくりなんですから。

だからこそ扱い方は人一倍わかりました。操りやすかったですよ、非常に。



フィロ様の求める人物を演じればいいだけですから。

シェーン様やツァール様だったらこう簡単に進まなかったでしょう。

そしてモーヴェ王国で働く内にいろいろ見てわかりました。どこも対して変わりはないと。



それに愚かなことにモーヴェ王国とレーグル王国は争いを始めました。

もう可笑しくて、可笑しくてたまりませんでしたよ。そんなことしても無駄だというのに。



どちらが勝とうが負けようが変わることがないのだから。だから私は決意しました。

そんなに変わりたいのなら私が変えてやろうと。まあ、わたしにとっては暇つぶし程度でしたが。」






タドは、完全におかしい。何かが欠落している、そう思った。

それと同時に少し理解してしまう自分もいた。


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