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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第2章 ”別れ”と
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10-1 真実


「やっと終わったか。ペル、ツァール様の様態は?」



「今は眠っていますが、命に別状はありません。」



「よかった。とにかく安全なところに移そう。そしたら、俺は町に向かう。」



「わかりました。ただ、せめて傷を治させてください。それからです。」



僕はみんなのもとに向かう。



「ペル、僕がやるよ。魔力沢山使ったでしょう。」



僕は何でもいいから役に立ちたかった。



「そうですか。それではお願いします。ディグニ様もよろしいですか。」



「ああ、ビス。頼むよ。」



ディグニに魔法をかける。なかなかの重症だ。それに今回は頭。気を引き締めなきゃ。



「ヒール」



慎重に治していく。僕が治療している間シェーンはペルに抱き着いていた。







治すのに結構時間がかかってしまった。



「終わったよ。どう?」



「ああ、大丈夫だ。ありがとうな。」



そういうと、ディグニはツァールを抱え移動を始める。



「どこに連れて行くの?」



「ツァール様の部屋に連れて行く。」



部屋に向かう途中町の様子が見えた。

少しだけ火の勢いが強まっているように見える。

クラフトたちは無事だろうか。



「ビス。外を見てないで。はやく行くぞ。」



「う、うん。ごめん。」



僕はディグニたちを駆け足で追う。




部屋に着いてディグニがツァールをベッドに下ろした。



「じゃあ、ペル。後は頼んだ。」



「待って。僕もいく。役に立ちたいんだ。」




間髪入れずにディグニが答えた。



「ダメだ。はっきり言って足手まといだ。」



ディグニの言葉が突き刺さる。



「でも、僕は・・・」



「でもじゃない。諦めてくれ。ペルたちとツァール様を守ってくれ。な。

それに鎮圧が済んだら大勢怪我人が出ているはずだ。それまで力を温存して欲しい。」



ずるいよ。体よく理由をつけて僕を危ない場所に行かせないようにしている。

僕はまっすぐディグニを見る。



「わかったよ。絶対帰ってきてね。どんな怪我をしていようと僕が治すから。」



ディグニは柔らかい笑顔を浮かべていた。



「ああ、頼むよ。」








「いっちゃったわね。」



「僕はてっきりシェーンもいくって言いだすと思ってた。」




「私も行こうとは思ったわよ。でも、さっきの出来事を思い出しちゃって声が出なかったの。

情けないわ。まだ、震えが出てくる。ビスに偉そうなこと言ってたのに。

戦うことが怖くなっちゃった。身近にいた人がいなくなるのはこんなに来るものなのね。

それがどんなに嫌われていた相手でも。」



ツァールが言っていたことが徐々にわかってきた。

ああ、シェーンは優しいな。僕は、僕は、フィロの首が落ちた瞬間ざまあ見ろって思っちゃった。



「下向いてどうかしたの?」



「ううん。何でもないよ。」



「ペルも大丈夫?」



シェーンの言葉で僕はペルに視線を向ける。



「ええ、ただ、ちょっと、魔力を使いすぎてしまったみたいです。少し休めば大丈夫だと思います。」







「んんっ。」



「ツァール兄様⁉」



ツァールが起きたみたいだ。



「シェーンか。無事でよかった。」



ツァールが部屋をキョロキョロしている。



「ペルもビス君も無事か。ディグニはどうした?」



自分のことより他人を心配している。



「ディグニ様は町へ向かわれました。」



「そうか。ディグニも無事であったか。…フィロは?」



問いにくそうにツァールは声を出す。



「死にました。ディグニ様が首を落として。」



「そうか。」



喜びとも悲しみとも言えない声。

ただ、僕にはわからない感情だった。シェーンがベッドの近くにいく。



「ツァール兄様。ごめんなさい。私、私。フィロ兄様を説得しようとしたの。

でも、聞いてくれなくて。どうすればよかったのかな。わからなかった。

いつもなら、策が頭に浮かぶのに、フィロ兄様に改めて拒絶されて頭が真っ白になっちゃった。

私、ツァール兄様をぶったたく資格なかったみたい。ごめんなさい。ごめんなさい。」



シェーンは壊れた様に謝っていた。それに後ろ姿でもわかるぐらい泣きじゃくっていた。


そんなシェーンをツァールは優しく抱きしめていた。



「シェーン。大丈夫。大丈夫だ。誰も責めたりしないよ。

それに私もフィロの説得をしたんだ。それでも、聞き入れなかった。

誰が何を言おうと同じことだったと思う。だから自分を責めるな。シェーンはよくやったよ。」



段々とシェーンが落ち着いてくる。僕はこの隙に抜け出そうとした。



「ビス君もシェーンを守ってくれてありがとう。」



振り返らずに答えた。



「ううん。僕は何もしてないよ。」



「行くんだね。」



「うん。止めても無駄だよ。決めたんだから。」



「そんなつもりはないよ。ただ言わせてくれ。

不甲斐ない王に代わって国民を助けてくれ。頼む。」



重い言葉。ひどいものを背負わされた。

いや、背負ったのはツァールも同じか。

そんなこと言わなければいいのに。僕なんかに頼んじゃって。



「うん。わかったよ。」



「ぐすっ。ちょっと待って。私もいく。」



「大丈夫?目腫れてるけど。」



「言ったわね。あとで覚えてなさいよ。」



いつものシェーンに戻っている。



「シェーンもいってくれるのか。二人とも頼んだぞ。」




「うん。」「ええ。」






僕たちはディグニたちのもとに向かう。



「いつから行くって決めてたの?」



「ディグニに行きたいっていってから変わってないよ。」



シェーンは口をあんぐり開けていた。」



「驚いたわ。」



「へへっ。僕隠すのうまくなったでしょ。」



パシーン‼



「調子に乗らないの。」

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