1-3
辺りに光が満遍なくあたり始める。時間にしたら二,三時間ぐらいたったのだろうか。
ドタドタ音がする。ディグニが起きたのだろう。僕も起き上がる。
「おはよう。ここら辺を片付けたら出発するからちょっと待っててくれ。」
「うん。」と返事をする。手持無沙汰でいると岩陰の向こうに黒馬がいる。
こんなに近くにいたのに気付かなかった。恐る恐る近づく。
黒馬はこっちをじっと見ている。興奮している様子はしないし、触っても大丈夫だろう。
頭を撫でようとした時ちょっとピクッと動いたがそのあとは鼻を伸ばすような動きをしている。
驚いたことに黒馬は近づいてきて頬擦りしてきた。
「うわっ。や、やめろよ。はははっ」
沈みきっていた心が少し安らいだ感じがする。
「すごいな。」片付けが終わったのかいつの間にかディグニが側に来ていた。
「こいつは大人しくて扱いやすいんだが、こういう風に感情を表に出すようなタイプじゃないんだよ。」
「これってどういう意味があるの。」
「んっ。ああ。お前に甘えたいみたいだぞ。」
ディグニはニヤっと笑う。なんだかディグニの笑いは気になったが、単純に馬の行動はうれしかった。
「さあ、いくか。早くしないと王国に着くまでに日が暮れちまう。」
そういうと、ディグニは馬にまたがり僕をひきあげた。
「寄らないといけないところもあるし、ちょっと飛ばすぞ。」
黒馬が草原を駆けていく。風が気持ちいい。
風景が瞬く間に変わっていく。田んぼ、畑,川,山。雲すらも形を変え流れいく。
途中ある村に寄った。ただ僕は黒馬と少し離れたところでお留守番をした。
黒馬とじゃれあっていると何かを持ってディグニが戻ってきた。
「それ何?」
「これか。サンドウィッチだ。お腹すいただろう。」
話しを聞くとどうやら、ディグニは昨晩この村に泊まるはずだったらしい。
それを謝りに行っていたみたいだ。宿屋の人は、そんなこと気にしていなかったようで、
むしろ昼食にと、このサンドウィッチをくれたらしい。
なにが入っているかわからなかったので恐る恐る口にした。結論から言うと美味しかった。
シャキシャキという触感、お肉だろうか塩味がちょうどよくて野菜のみずみずしさとマッチしている。
またディグニに「ゆっくり食べろ。」と言われてしまった。恥ずかしい。
食べ終わったらすぐに出発した。食べたばかりだからだろうか。さっきより速度が遅い。馬の揺れが心地よい。わざとしているのだろうか。眠気が襲ってくる。ディグニが何か言っている気がしたが、声が音が遠のいていく。