8-1 レーグル王国の現状
やっとレーグル王国が見えてきた。
レーグル王国はモーヴェ王国と違って拓けた場所にあり、王国の周りに何もなかった。
「森を抜けてから何もなかったわね。」
「ええ。何もなくてよかったというべきでしょうか。
なんだか、不気味で逆に怖いですね。」
「考えすぎじゃないか。休息になったと思って喜べばいいじゃないか。」
「クラフト、私は疲れたわ。」
「大丈夫ですか。シェーン様⁉休みますか?」
やっぱりクラフトはわかっていなかった。僕はなんとなくわかってきた。
「い、いいわよ。別に。ほら、レーグル王国の門が見えてきたわよ。」
クラフトとシェーン以外は笑いが漏れていた。
シェーンが言った通り門に近づいていて、二つの人影が見えてくる。
「止まってください。あなたたちは誰ですか?」
「話は聞いてないのか?」
ディグニと一人の傭兵が揉めている。そこにもう一人の傭兵がやってくる。
「おい、お前何やっているんだ。すみません。ディグニさん。
こいつ新人で。それにちょっと前にコテンパンにやられて気が立っているんですよ。
許してやってください。」
そのあと、ディグニの耳元で一言いっていた。
僕は近くにいたので聴こえてきた。
「こいつ、レーグル出身のやつで。ツァール様の方針で、
レーグル王国で傭兵をしていた奴らもそのままこっち所属の傭兵になったんです。・・・」
聴こえたのはそこまでだった。まだ話をしていて聞き耳を立てたが、やっぱり聴こえなかった。
「そうか。そうだったか。」
ディグニの顔は見えないが、何か安心しているようなこれから
起こることに覚悟をきめているようなそんな雰囲気を感じた。
「ああ、それと入っていただく前に馬を預かります。それとちょっと確認させていただきますね。」
「わかった。大丈夫だ。宜しく頼む。」
僕たちはセフォンたちから降りる。
すると、セフォンたちは最初に話かけられた傭兵に連れていかれてしまった。
大丈夫だろうか、と思ったが昨晩のことを思い出し何かあったらどうにかするだろうと考えなおす。
「じゃあ、確認させていただきますね。ええと、ディグニさん、ビス君、で合ってるよね?」
「うん。」と僕は返事をする。僕のことも話が通っているみたいだ。
「クラフトさん、ペルフェットさんっと。ってあれもう一人いる?四人ではなかったんですか?」
ディグニは苦笑いをしている。傭兵はシェーンに顔を近づけた。
「んんっ⁉もしかして、シェーン様⁉」
「顔が近いわよ。」
「も、申し訳ありません。でも、なぜここに?」
シェーンは答える気はないようだ。
「いやぁ、ちょっと訳ありでな。ダメか。」
「ダメか、って言われてもさすがにシェーンさまだけここで帰ってもらうわけにもいきませんし・・・
大丈夫だと思います。ただ、ツァール様には伝えさせていただきます。」
「済まない。宜しく頼む。」
「それにしても、ツァール様は慕われていますな。弟妹が訪ねてくるなんて。」
後ろから、凄まじい気配がする。後ろを振り向けない。
向いてしまうと、それが僕に襲い掛かってきそうで。
「あっ。やべ。ツァール様にこのことはディグニさん以外に話すなって言われていたんだった。
あははは。」
傭兵が焦ってる。
「い、今門開けますのでちょっとだけ待っていてくださいね。」
足早に元の場所に向かっていった。
ギギギギギ。とそんな音を立てて門が開く。
開ききった時、門のそばから「どうぞ、おはいりください‼」と叫ぶ声がした。
彼は決してこっちにこようとしなかった。
レーグル王国に入ると、それなりに活気があった。
それに、人間だけではなくエルフやドワーフ、オークなど、様々な種族が闊歩している。
挨拶が飛び交い楽しそうに会話をしている。でも、なんだろう、この違和感は。
こう腹の底で何かが溜まっていく感覚。
「なんだか気持ち悪いわね。」
「ええ。反吐が出ます。」
シェーンの言葉よりも強い言葉をペルが発した。
しかし、誰もそれに返事をしなかった。みんなそれぞれ思うことがあるのだろう。
「ディグニ。今から向かう場所ってあそこ?」
僕はこの王国で一番目立つ建物を指さした。
「そうだ。あの城に向かう。よくわかったな。」
誰でもわかると思うけど。あれだけ自己主張が強かったら。
それにしても、僕は城には縁があるなぁ。
どこの国にいっても最初に行くところが城なんて。
もしかして、将来城に住んでいたりして。まあ、そんなことはあり得ないと思うが。




