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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第2章 ”別れ”と
31/176

7-5

ペルが僕から離れる。


「どうやら、ビス様と話したい人がいるみたいですよ。」


そういうと、ペルはディグニたちの方に戻っていった。



代わりにやってきたのはシェーンだった。


「少しは落ち着いたかしら。」


「うん。だいぶ。」


「そう、それはよかった。」


シェーンが何か言いづらそうにしている。


「その、傷を治してくれないかしら。やっぱり傷が痛むの。」


ペルに治してもらっていないらしい。

僕に治して欲しくないって言ってたのに。


「うん。いいよ。どうなっても知らないけど。傷見せて。」


「なっ。・・・軽口叩けるならもう大丈夫ね。」


シェーンなりに心配していてくれたみたいだ。

ただ、不器用にも程がある。


「けっこう傷多いね。」


「しょうがないじゃない。数が多かったんだから。

あれでも善戦したほうだと思うわ。やっぱりディグニたちには敵わないわね。」



あの二人と比べたら大抵敵わないのじゃないだろうか。


「それに、なるべく私の方に人間が来ないように立ち回っていたわ。

本当に嫌になるわ。獣も人もたいして変わらないっていうのに。」


シェーンは強いなぁ。


「ねぇ、シェーン。その殺す感覚ってどんな感じ?」


「あんたねぇ、もっとオブラートに包みなさいよ。」


溜息をついている。


「まあ、いいわ。そうね、何とも思わないわ。というより考えないようにしている。

やらなければ、私がやられる。だから仕方がないことだと思ってね。」


簡単そうで簡単ではない。そう思った。どう足掻いても僕はそうなれそうにない。


「そう、なんだ。」


「割り切れないなら、割り切れないなりにどうにかすればいいんじゃない。

具体的に思いつかないけど。」


どうにかとは?と思ったけれど、それを考えるのは僕の仕事だ、

と思い返し聞くのを止めた。

そんなことを話しているうちにシェーンの傷を治し終わった。


「できたよ。どう、異常はない?」


「有難いことにね。ありがとう。ビス、痛みが引いたわ。」


そういうと、立ち上がってみんなの方にむかっていった。


「ああ、それと、二人とも強がっているけれど、

結構つらそうよ。戻って治してあげたら?」


「えっ?あ、うん。」


僕はシェーンの後を追った。





「やっと戻ってきたか。」


シェーンに背中を押される。

よく見ると、手を翳さなくても違和感を覚える。


「ディグニ体見せて。」


「な、なんだ。急に。」


「いいから‼」


ディグニは「うおっ。っ‼」と奇声をあげた。


上半身の服を脱がすと痛そうにしている。外傷はないけど、

両腕から肩にかけてがおかしい。案の定、手を翳して見ると筋繊維が少し切れている。

まだ、軽症のようだが、これ以上筋肉を酷使し続ければひどくなる一方である。


「これぐらい大丈夫って言ったろ。」


「うるさい‼黙って。」


僕の態度に驚いたのかディグニはポカンとしている。

気にせず、治すのに集中する。


それを見ていたのかクラフトの笑い声が聞こえてくる。

クラフトの方を見ずに声をあげる。


「次はクラフトだからね。」


自分が話しかけられると思っていなかったのかクラフトは変な声をあげる。


「へい‼」


ペルがクスクス笑っている。




「終わったよ。異常はない?」


ディグニに向かって言うが、治療中から心ここにあらずであった。


「お、おう。ないよ。ありがとう。」


クラフトの治療も終わった。クラフトは上半身より下半身がひどい。

特に腰に来ていた。まあ、あんな武器を振り回していたんだ当たり前か。



「終わったよ。異常はない?」


「ああ、ないぞ。楽になったよ。ありがとうな。ビス。」


頭をワシャワシャやられる。何だかむず痒くてクラフトから距離をとった。



僕は今しかないと思って、意を決して想いを伝える。





「僕はまだ、敵を攻撃する勇気が出ない。でも、みんなが傷ついたら治すことができる。

だから、だから、それぐらいは役に立たせて。頼りないかもしれない。

信じられないかもしれない。でも、お願い・・・」






しばらく沈黙してディグニが口を開いた。


「わかった。体に異変が起きたら、ビスに診てもらうよ。頼んだぞ。」


その言葉が僕の心を少しだけ軽くした。


「ぼ、僕もう寝るから。」



僕は急に照れくさくなってそそくさと横になった。







自分の世界に入り込む。そして改めて思い知らされた。

僕は自分自身のことしか考えていなかったと。さっきの言葉さえ。

体よく言っているけど、結局は自分のため。そう考えてしまった。



考えすぎなのだろうか。こんなことシェーンに言ったら、

「うじうじ気持ち悪いわね。」なんて言われそうだ。

ただ、僕は考えるのを止めたくなかった。



それをしてしまえば何かを失ってしまいそうだから。

強くなるにはそれを捨てなくちゃいけないことはわかっているのに・・・

そんなことを考えているうちにいつの間にか意識が薄れていった。







ディグニに起こされて目が覚める。

朝食を食べ、出発の準備をする。




太陽は申し訳程度に顔を出していた。


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