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ヒレイスト物語  作者: 瑛
第1部 第1章 ”出会い”と
25/176

6-4

辺りに独特な鉄の臭いが広がっている。カチっカチっ。

そんな音が鳴ったかと思うと目の前の人が光り出す。これはまずい。

なんだかわからないが感覚的にまずいものだと判断し、体が勝手に動き出す。

階段を駆け上がる。思わず大きい声が出てしまう。


「ドアから離れろ。いますぐに!」


バァァァァン!


爆風で体が吹き飛ばされドアを突き破る。ドン!と鈍い音がする。

体中が痛い。特に背中が。吹き飛んでいる最中反射で体を丸めていたらしい。

しばらく眩暈がして動けなかったが徐々に回復して辺りを見回す。

扉の前にいた傭兵たちは巻き込まれていなかった。ちゃんと言葉が届いたことに安堵する。


「ディグニ様。大丈夫ですか⁉」


「ああ、なんとかな。」


「下で何があったんですか?」


傭兵たちが慌てている。


「落ち着け。下の様子を見てくる。待っていろ。」


傭兵たちを宥め、下に向かう。本音をいえば戻りたくはない。

どんな惨状になっているか考えると血の気が引く。まあ、あんなことをしておいてなんだが。

俺の予想は杞憂に終わった。何もない。あの男に関わるものすべてが。あの男から抜け落ちた髪の毛一本も残さず、証拠になりうるものすべてが。爆発したというより消滅したという方が正しいか。

さてどうしたものか。そんなことを考えて上に戻ると、ペルフェットがいた。


「凄まじい音がしたので。何かあったんですか?」


「あったというかなかったというか。・・・あ、いや何でもない。忘れてくれ。

どうやらやらかしてしまったらしい。今から王様に叱られに行くよ。」


それで済めばいいんだけどな。傭兵たちに封鎖しておけと命令し、玉座に向かう。


「なんだと⁉」


王様の怒声が響く。


「捕虜の男が消滅しました。」


「それはさっき聞いてわかっておる。なぜそうなったかということだ。」


珍しく王様が取り乱している。


「王よ。落ち着いてください。気品がありませんよ。それでは国民に示しがつきません。」


ルトさんの言葉で王様が落ち着きを取り戻す。


「す・・・。んっ。」


王様は何か言おうとして口を噤んだ。


「で、どうしてそうなったのかわかるか、ディグニ。」


「おそらくですが、味方に不利益になる情報を話そうとした時に

発動する何かが仕掛けられていたのだと思います。順調に進んでいました。

やっと捕虜が口を開いた時、カチっ、カチっ、という音がしたと思ったら

いきなり捕虜が光出したんです。そして結末は先ほど述べた通りです。

捕虜が何も残さず消滅したことを考えると体の中に機械が仕掛けられていた

と思うよりは何らかの魔法を仕掛けられたと思う方がまだ現実的でしょう。」


王様が渋い表情をして頭を抱えている。


「魔法か。ややこしいことになったな。」


すぐに視線を上に戻し、ルトさんの方を向く。


「ペルにそんな魔法があるか聞いてみます。」


「うむ。頼むぞ。」


王様とルトさんの関係性が伺えるやりとりだった。


「少し一人にしてくれ。考えたいことがある。」


そういわれ、俺とルトさんは玉座を後にした。






「怪我は大丈夫ですか。」


なにかに気付いたのかルトさんが聞いてくる。


「怪我ですか。なんともないですよ。この通り・・・」


普通に動くことをアピールしようとしたら、ルトさんが背中に触れてくる。


「っっ!」


「はあ、あなたという人は。私がわからないと思いましたか?

ペルを連れてくるので医務室で待っていてください。」


「いや、それは・・・」と反論しようとしたら背中を思いきり叩かれた。


「ぐあっ」


「いいですね。」


有無を言わさない言葉だった。俺は大人しく医務室へ向かった。






医務室に着く。独特のにおいが広がっている。

アルコールや薬品のにおい。若い頃は非常にお世話になった。

最近はここに来ることもなかったからな。懐かしんでいるとペルフェットがやってくる。

だが、ルトさんの姿がない。


「ルトさんは用事があるようで、こちらには来ませんよ。」


王様のところでも向かったのだろう。それよりも気になることがある。


「その、どこまで聞いた?」


「上着を脱いでください。安心してください。やらかして怪我をしたとしか聞いてないですよ。

私のご主人様は勘が鋭いですし、それにあの方に私は嘘をつけません。

それを考慮した上でそこまでしか話さなかったのでしょう。」


ペルフェットはそういいながら、俺の背中を見る。”やらかして”の部分が気になるが。


何やら後ろでクスクス笑い声が聞こえる。おそらくあれだろう。


「いくつか骨が折れているところがありますね。こんなに普通にしていられるのが不思議です。」


「いや、まあ、痛みには慣れちゃったからな。それより、大丈夫なのか。」


俺は昔のシェーン様とペルフェットの出来事を知っている。


「今更じゃないですか。それにちゃんと加減しますよ。シェーン様との約束ですから。

ですので、危険な箇所と応急処置だけしておきますね。

あとは人間の医者か、自然治癒でお願いします。」


何回かペルフェットに治してもらったことがある。今回はそれら以上にひどい状態だった。

一応聞いてみたが杞憂だったらしい。


「わかった。でもあの医者苦手なんだよな。自然治癒一択だな。」


また、ペルフェットがクスクス笑っている。


治療が終わったみたいで楽になる。


「ありがとう。助かったよ。」


ペルフェットは「いえ。」と控えめに言う。


「そういえば、ビスはどうだ?やらかしてないか。」


「そんなことはないですよ。

少々シェーン様に怒られていましたが、ディグニ様ほどではありません。」


徐々にあの人に似てきていると感じるのは気のせいだろうか。


「ああ、それと一つ謝らないといけないことがあります。」


珍しいなと思いながら、耳を傾ける。


「今シェーン様と一緒魔法を教えています。」


驚きよりも納得が勝る。ただ、一つ確認しなければいけない。俺はペルフェットをじっと見る。


「ビスはなんて言ってる?」


「僕は魔法を使いたい、そう申していました。」


「そうか。なら俺から何か言うことはないよ。

無理強いしているなら別だったけどな。ビスは楽しそうか。」


「ええ、とても。シェーン様とも仲良くしています。

なんだか姉弟みたいで微笑ましいですよ。

シェーン様も久々に楽しいのかはしゃいでいます。」


ペルフェットは、顔も声色もあまり変わっていないが、なんだか嬉しそうだった。


「そうか、それはよかった。」


「それでは、私はこれで。二人が待っていますから。」


俺はしばらく横になっていた。







足音が聞こえて目が覚めてしまったらしい。

体を起こすとそこには王様とルトさんがいた。


そして告げられる。




「二週間後、レーグル王国に向かってくれ」と。


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