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時が止まっているような感覚。五感が研ぎ澄まされていく。
ジメジメとした空気。カビと鉄の臭い。ポチャン、どこかで水滴が落ちる音。周りを囲う鉄格子。
顔に何か伝っている感覚がし、水でも落ちてきたのかと思い、徐に舐めた。
塩味と少し鉄の味がする。どうやら水ではなかったらしい。
目が慣れてきて周りが徐々に視界が開けてくる。そこには見えていない方がいい光景が広がっていた。
いっそ目隠しをされていた方がよかった。この後どんな目に遭うか容易に想像がつく。
気が休まらない。寝てしまおう、そうすれば幾分かましになるはずだ。横になって目を閉じる。その時がくるまで。
ここにいれられてどれぐらい経っただろうか。
コツ、コツとゆっくり近づいてくる音が聞こえてくる。
ああ、ここまでかと諦めに近い感覚。だが、その予想は裏切られた。
「お久しぶりです。」
そこには見知った顔があった。少し容姿が変わっていたので、
暗闇も相まって勘違いをしてしまっているのではと思ったが声を聞いて確信に変わる。
「久しぶりだな。誰かと思ったぞ。よかった。早くここから出してくれ。」
「その前に、そちらの状況を教えていただけますか。」
「ああ、わかった。」
早くここから出たい、その一心でなんの疑いもなく話してしまう。
それが間違いだったと思い知らされる。
「そうでしたか。教えていただきありがどうございます。
聞きたいことも聞けたので、あなたはもう用済みです。」
そういうと、こちらに手を向けて呪文を唱える。
急いで距離をとろうとしたが間に合わなかった。
「イゾラント・コスト」
何も起こらない。失敗したのか。余計に不安を掻き立てる。
「何をした?」
「ちょっとした遊びです。何も起こりませんよ。
あなたが裏切らなければ・・・ね。それともう一つ。」
気休めでしかないが、距離をとる。
「や、やめろ。あの時のことで怒っているのか。なら、謝るから。な。
そんなこと忘れて一緒にここを出よう。それで二人で・・・。」
こちらの言葉は一切相手に届いていない。
「そんなに距離をとらないでくださいよ。傷つきますね。まあ、無駄なんですけど。セーファ。」
光に包まれ、意識が遠のいていく。
「あなたの記憶を少し弄らせてもらいました。それと、安心してください。
あなたがしようとしていたことは、こちらで成し遂げますので。」
「ふざけるな!×××××っ!・・・」
最後の力を振り絞って叫ぶ。その声は空しく木霊する。やはり届いていない。
コツ、コツ、コツ、コツ・・・。




