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「ディグニよ。日も暮れてきた今夜は城に泊まって行くといい。シェーンも聞きたいことがあるらしいし、それに明日のこともある。」
「有難いお誘いですが、今日は約束があります。申し訳ありませんが、遠慮させていただきます。」
それに今ビスをあの方に合わせたくない。
勘でしかないが嫌な予感がする。それに気持ちを落ち着けたい。
「そうか。それは残念だ。シェーンが悲しむだろうが仕方がない。
次の機会を楽しみにするように言い聞かせておくから心配するな。」
まだ、根に持っているようだ。「はははは」苦笑いしか出てこない。
「よろしくお願いいたします。」
「うむ。もう下がってよいぞ。」
俺とクラフトさんは玉座から出る。ビスたちはどこへ行ったのだろう。早く探して街に戻らなくては。
「クラフトさん、今日は家に帰るんですか。」
「いや、今日は城勤めだ。」
「働きすぎじゃないですか。それに奥さんやお子さんがいるでしょう。
たまには顔を見せないとお子さんに忘れられますよ。」
「いや、そうなんだが。今は仕事をしている方が楽なんだ。それに明日から何日か休暇をもらったから問題はない。」
真面目に返されてしまった。いつもなら、笑いながら冗談に乗っかってくるのに。
それに含みのある言い方が気になる。奥さんと喧嘩でもしたのだろうか。
「それより、その、あの小僧のことなんだが・・・」
「ビスがどうかしましたか。」
「そう。ビスだ。差し障りなければビスのことを教えてくれないか。」
「大丈夫ですよ。ただ、俺もそんなに知っているわけではないですけど。」
クラフトさんにビスのことを教える。教え終わると、驚きと苦痛が入り混じった表情をしている。
「そうだったのか。俺は勘違いをしていたようだ。ビスに無礼な態度をとってしまった。ビスから異様な雰囲気を感じたから触れないようにしてしまった。俺の勘も大したものないな。謝りたいから俺もついて行っていいか。」
「いや、そこまでしなくても・・・」
「そうしないと俺の気がすまないんだ。頼むよ。」
本当にこの人は真面目を絵に描いたような人だ。馬鹿正直で嘘をつけない。
というか嘘をついてもなんとなくわかってしまう。
「わかりました。ただ、ちょっと急がないと日が暮れてしまうので早足で移動しますがいいですか。」
「問題ない。」
闇雲に探しても時間がかかるだけだ。近くにいた傭兵に聞いてみたが知らないようだった。
誰か知っている人はいないか。そう考えていると廊下の奥に二つの人影が見える。
徐々に近づくにつれ正体がわかってくる。一番会いたくない相手だった。
クラフトさんがビスたちの居場所を聞こうとしている。止めようと思ったが手遅れだった。
「お疲れ様です。フィロ様。一つお聞きしたいのですが、
シェーン様たちがどこにいかれたかご存じないですか。」
最悪だ。気を引き締めなければ。




