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あのあと、メイユはアシオンから直ぐに離れた。モルテが来たことでもうやる必要はないと思ったのだろう。もうちょっと見ていたかったところだが仕方がない。
「くっそー。あとで覚えてろよ、ビス、メイユ。」
「そんなことよりアシオン。モルテさんが来たんですから。話さないと。」
「わかってる。ったく、手加減を知らないのか。・・・よっと。」
モルテは何が起きているのかわからないのか、俺の方を見て説明を求めているようだった。まあ、今言わなくてもアシオンが話始めたらわかるだろうと思い、ここは無言をつらぬいた。
それにしても、改めて見ると背が大きい。下から上にゆっくりと視線を上げると何か違和感のようなものがあった。確かに大きいとは思っていたがこんなに大きかったかと。アシオンの顔に視線が到達した時その違和感が正しいものだとわかった。アシオンの顔は赤く、額には一本の角が生えていた。無意識に身構えてしまう。
「なっ‼」
モルテも驚いているようである。それに、アシオンがこういう姿になったということはメイユも。メイユがいた方向に視線を向けるとそこには先ほどよりも縮んだメイユの姿があった。ただ、アシオンよりも変化がないように感じられる。それほどアシオンの変化が驚きであった。
「見ての通りオレは人間じゃねぇ。メイユもな。俺は“オーガ”で、メイユは”ドワーフ”だ。騙しててなんだが、謝りはしねえぞ。ただ、これだけは信じて欲しい。オレたちはお前たちの敵じゃない。」
”それを見てどこを信じればいいんですか?”という言葉は聞こえてはこなかった。驚きすぎて声が出ないのか、それとも何か考え込んでいるのか。おそらく後者だろう。
「そうでしたか。何かあるとは思ってましたが・・・納得しました。」
そんな事をモルテは呟いていた。しかし、なんと答えるべきか。ここで有耶無耶にしてもダメな気がする。
「”信じてほしい”か。・・・無理だ。」
「ビスさん⁉」
「俺たちは騙されていたんだ。手放しに信じるなんてできないだろ。ただ、お前たちの強さは信用している。だから一緒に旅をしてくれ、以上だ。」
アシオンの顔は、力が抜け色々なところが開ききっている。そうかと思うと急に俯いてしまった。
「ぷっあはははははっ。なんだ、それ。俺たちのこと利用してやるって言ってるのと同じだろ。」
「ダメか?」
俺の言葉に鼻を鳴らし、言葉を吐き出した。
「いいや。気に入った。利用されてやるよ、ビス。ただ、信じさせることを諦めたわけじゃないからな。覚えとけ。それでいいよな、メイユ。」
「ええ。ワタクシもそれで構わないわ。」
二人の了承を得られた。これでこれからの旅は楽になるだろう。一安心というところだろうか。いい感じに終わったかと思うとなんだか急にアシオンが笑い出す。こらえようとしているようだが、無理だったみたいだ。
「くくくっ。あ、あと、それとな。オレたちは、くくくっ。親子じゃない。それにメイユのほうが。いてててて‼」
笑っているかと思うと急に痛み出している。まあ、何を言いたかったのかも何が起きているのかも想像は出来るが。アシオンの言葉に各々の反応を見せる。
「それは言わなくていいことよ。」
「何言ってるんですか。そんなの分かり切ったことでしょう。」
モルテの言葉を聞いて、アシオンは驚きの顔をしていた。どうやら騙せていたと思っていたみたいだ。
「なっ。マジか。ビスは騙せてたのにな。」
「えっ。ビスさんわからなかったんですか⁉」
やめてくれ。そんな顔でこっちを見ないでくれ。仕方がないここまで来たら、乗ってやる。ただ、お願いだから、モルテはわかってくれと思うばかりである。
「ああ、わからなかったな~。そうだったんだ。おどろいたな~。」
自分のできる限りをした。心が籠ってないなんて言わせない。
「ほらな。馬鹿だろうこいつ。」
「ああ、そういうことですか。ビスさんご愁傷様です。」
よかった。モルテはわかってくれたみたいだ。ただ、アシオンが言った言葉は聞き流せなかった。
「メイユ。いけ~‼」
「わかってるわ。」
「や、やめろ。何なんだよ。さっきから。いってーーー‼」




