3-4
シェーンの膝を見ると傷が塞がっている。僕の視線に気づいたのかシェーンはドレスを元に戻す。
「・・・ありがとう。」
言葉とは裏腹にシェーンはペルフェットさんを睨んでいるようだ。それを気にすることなくペルフェットさんは「どういたしまして。」と言う。しばらく沈黙が続く。何か話題を作らなければ。そう思えば思うほどある一点が気になってしまう。イチかバチか聞いてみる。
「あの、さっきのって何?」
「魔法よ。」
意外にもシェーンが答えた。
「魔法?」
「さっきみたいに傷を治したり火を出したり水を出したり・・・まあ、呪文を唱えるといろいろなことができるの。」
「すごいね。僕にもできるかな。」
わくわくする。
「無理よ。魔力がないと魔法は使えないんだから。」
「まあまあ、せっかくなので、ビス様に魔力があるか確かめてみましょう。」
ペルフェットさんはそういうと、小さな機械を取り出す。
「無駄よ。人間には魔力がないんだから。」
シェーンが何か呟いている。
「ここを人差し指を置いてください。一瞬チクッとしますが・・・」
「へっ?」
ペルフェットさんが言い終わる前においてしまい、案の定チクっと刺された感覚がする。
「っ!」
思った以上に痛い。
「あらあら。もう人差し指を放しても大丈夫ですよ。」
放すと、血がゆっくりと円球状になって出てくる。「ハンカチで拭いてください。」とペルフェットさんにハンカチを渡される。血を一回拭くと出てこなくなった。ハンカチを返そうとペルフェットさんの方を向くと驚きの表情を浮かべている。シェーンも機械を覗き込んでいる。
「やっぱり、ないじゃない。」
「いや、これは・・・魔力がないというより測りきれなかったのでしょう。」
「えっ。でも、エラーになってるじゃない。」
僕も覗き込んで見ると、機械には「???????」と表示されている。
「魔力がない場合は、零が表記されます。」
「確かに私が前にやった時は零になってた気がする。
こ、壊れているんじゃないの。私もやってみるわ。」
シェーンが機械に人差し指をあてる。機械を覗き込むと零を表示している。
「ビス様。シェーン様。このことは御内密に。伝える人は考えなければなりません。」
ペルフェットさんから今まで聞いたことないような語気の強い声が出ている。
「わかってるわよ。こんなこと・・・軽々しく言える訳ないでしょう。」
「特にビス様。魔力があって嬉しいかもしれません。ただ、それがない人にとっては恐怖の対象である場合があります。たとえそれが人を癒すものでも、生活を豊かにするものでもです。人はそれをお首にも出しません。特に大人は。だから、今は誰にもいってはいけません。わかりましたね。」
ペルフェットさんの言葉は難しく少しピンとこなかったが、ここまで慌てている姿を見ると従おうと思った。
「わ、わかった。だから離して。痛いよ。」
両肩を掴まれている。女性にこんなに力があるとは思わなかった。
「も、申し訳ありません。取り乱してしまいました。」
「ううん。大丈夫。」
両肩は熱を帯びている。どうしてあんなに取り乱したんだろう。聞いて見たかったけど、そんな雰囲気ではない。さすがに聞く勇気はでない。シェーンは何か考えこんでいるし、ペルフェットさんはこちらに背を向けている。微妙に肩が上下しているように見える。必死で何かを抑え込んでいるような。さっきより重い沈黙。困ったなぁ、こんな時どうすればいいんだろう。
「さあ、風が冷たくなってきたし、次のところ行きましょう。」
シェーンがパンと一回手を叩き、沈黙を破る。
確かに寒くなってきたが、多少強引な気がする。ただ、今はそれが有難かった。
「そうですね。目的地は決まっていますか?」
何事もなかったかのように会話が続く。
「次は図書室よ。」
「図書室?」
「まあ、行けばわかるわよ。」
そんなことを話していると、タンタンとリズミカルな音が響いている。
なぜかその音が鮮明に耳の中で木霊する。




