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モルテは俯き、ギリギリという音が風に乗って聞こえてくる。
「何でもお見通しですか。・・・少し違います。確かに魔法を使うことも一つの要因ではありますが、理由ではありません。怖いんですよ、あの強さが。」
「怖いか。」
俺がそう呟くと、モルテは急に顔を上げ、じっとこちらを見て腹の内をさらけ出した。
「そうです、怖いんです。自分より強い者は。それの何が悪いんですか。・・・ふっ。それに僕はビスさんあなたも怖いです。魔法を使うからじゃないですよ。やっと近づいたと思ったら気付いた時にはまた遠くにいる。僕はビスさんのことがわかりません。
それなのに、あなたは僕以上に僕のことをわかってる。3人を見ていると僕のいる意味がなくなるみたいで怖いんです。・・・どれだけ臆病者なんだよ、僕は。」
腹の内をさらけ出した後また俯いた。”そんなことはない”と言うのは簡単だ。そして慰めることも。それが逆効果なことを俺は知っている。だから俺はそんなことはしない。
「じゃあ、自分のいる意味を自分で作れ。俺はこれまでそうしてきた。いや、そうせざるを得なかったんだ。」
「ほらね。僕の欲しい言葉をよくわかってる。・・・それにしても、簡単に言ってくれますね。」
表情は見て取れないが、鼻を鳴らしているため、どんな顔をしているか想像できる。顔をゆがめたモルテの表情を。
「簡単?そういう風に見えるか。・・・まあ、いい。今から俺の考えを話す。お前が何を言おうと変えるつもりはない。俺たちはあの二人と旅をする。理由は2つ。1つは魔物を発生させたのはあの二人じゃない。第三者の差し金だ。これは”勘”だが。それともう一つは、あの強さだ。これは実際に肌で感じている。はっきり言おう、俺たちはあの二人より弱い。あの二人が敵だろうがなかろうが、今ここで二人だけで任務を遂行することは困難だ。だから、あの二人が今この時この瞬間一緒に戦うというのであれば最大限利用してやるんだ。骨の髄まで。あの二人が敵意をむき出しにしてきたら、その時はその時だ。俺の考えは以上だ。」
俺はモルテの目ジッと見つめ腹の内をさらけ出した。
「そういうところですよ。遠くに感じるのは。いつもはボケっとして何も考えていない感じのくせに。僕にいつも注意されて考え込むくせに。シェーン様にデレデレのくせに。僕見たんですから、二人が町で手を繋いでデートしてるところ。ビスさん鼻の下伸びてましたよ。」
俺はモルテにそういう風に思われていたのか。それに1つ聞き逃せないものがあった。確かに手は繋いだが、デレデレも鼻の下も伸ばしていない、はずだ。ショックというかなんというか。こんな時は腹の内をさらけ出してくれたことに感謝すればいいのだろうか。
「でも、ビスさんの言いたいことはわかりました。僕はもう悩みません。・・・すみません嘘です。悩みます。それで僕は悩んで悩み抜いた答えをビスさんに言います。それがビスさんの出した答えと違うようでも。ビスさんは強い、でも、危ういところがあります。だから僕がそれを埋めます。もし、間違っているようなら全力で止めますから。いいですね?」
「”いいですね”ってもうモルテが決めたことなんだろ。じゃあそうしろ。」
「言いましたね。今回は納得したので折れますが、納得しなかったらとことん問い詰めますから。覚悟しといてください。」
モルテは無邪気な笑顔をこちらに向けてきた。さっきまでの雰囲気はどこへやら。まあ、立ち直って何よりだ。
「お手柔らかに頼む。」
「嫌です。」
間髪入れずにモルテは言った。これは手強そうだ。気を引き締めないとな。強い風が吹き木々がザワザワと騒ぎ始めた。




