32-3
朝目を覚ますと、昨日の状態が嘘かの様に静かな朝だった。すでにカーテンから光が漏れている。カーテンを開けるとそこには雲一つない青空があった。どうやら、祈りが通じたらしい。
「んん?ああ、晴れたんですね。」
窓から差し込む光で刺激されたのかモルテが起きてしまう。
「済まない。起こしちゃったか?」
「いえ、大丈夫です。目はとっくに覚めてましたから。・・・それにほら朝食の時間のようですよ。」
モルテが話している途中、ドアをノックする音がした。
朝食を食べ終え俺たちは出発の準備をする。そして、忘れ物がないか確認し、部屋を出た。
フロントに行くとドイボさんが何かを持って待っていた。
「これ良かったら、お昼に食べてください。」
「何から何までありがとうございます。」
「いえいえ。お役に立てたようでうれしいです。」
ドイボさんにお別れを告げ、宿を出る。今度休みでもとれたらここにこようかな。なんて思いながら、透明で平坦な道を進む。通った後の道など気にせずに。ただ、モルテは違ったようだ。
「わかってはいてもやっぱり気持ち悪いものですね。足を踏み出すたびグチャグチャと纏わりついてくる感じは。」
「はははっ。そうだな。」
それしか言わなかった。いや、言えなかったのだ。昨日の今日だ、余計にそれを感じるのだろう。それは仕方がないことだと思う。
ただ、それを表す言葉が出てこなかったから。それだけ当たり前で深く考えなかったこと。久しぶりに振り返った道は俺たちの足跡で荒され透明で平坦な道は、凸凹になり、濁っている。ただ、逆に俺たちが踏んでいない地面が目立っているように見えた。
「やっぱり、振り返るものじゃないな。」
「何か言いました?」
どうやら声に出てしまっていたらしい。心の声が漏れてしまったことに恥ずかしさを感じてしまう。モルテに聞こえていなかったことが唯一の救いか。
「何も言ってないよ。それより早く進むぞ。」
俺は力強く駆け出した。
「ちょっと待ってください。走ったら足を取られてこけてしまいますよ。それに泥がこっちにまで飛んできます。歩いてくださいよ。」
モルテの声を無視し俺はセフォンの元へと向かう。より早く進むために。
アイン村を出たあと、ドイボさんが言っていたように、村から一定距離離れるとどこからともなく魔物が出てきた。
「不気味だな。本当に。」
「そんなこと言ってないで早く進んでください。」
村につく前と同じような会話をしている。さっきは”走らないでください。”って言っていたのに。難しいものだな。ただ、魔物の数も増えそんなことも言えなくなってくる。
「セフォン行けるか?」
セフォンは鼻息で答えてくる。”何を当たり前な事を言っているの”と小馬鹿にするように。
「ははっ。済まない。そうだよな。・・・モルテしっかり着いて来いよ。」
「はい。必死で追いかけますよ、どこまでも。」
どこまでもはなんか怖いな。そんなことを思いながら、全速力でセフォンとともに魔物の道を掛けた。




