31-3
俺たちは、トレーニングルームに来ていた。入るとすでにメイユは正座をして待っている。
「な、なんですかここは?こんなに設備が整ってるなんてすごいですね。」
モルテは俺と同じように驚いていた。まあ、俺は2回目なので驚くことはなかったが、デジャヴを感じた。
「だろ。」
「何でビスさんが誇らしげなんですか。」
何か癪に障ったらしい。やっとアシオンの気持ちがわかった気がする。もし、モルテが初めての誰かを連れここにきたら同じことをするだろうと俺は思った。
「ははっ。俺のことはいいから、メイユが待ってるぞ。」
俺の言葉を聞いたからかメイユは立ち上がった。
「話は終わりましたか?」
「ああ、いつでもいいぞ。」
「だから何でビスさんが答えるんですか‼」
そんなモルテを他所にメイユは音もなくモルテに近づいていく。だが、メイユは遠目からだと何も持っていない気がするがもしかして素手で戦うのだろうか。そう思った時何やらメイユの拳にキラッと光る何かが握られていた。それも両手に。
「はああああ‼」
メイユが拳を放った瞬間、メイユの手元に残像のようなものが見えて腕が消え去った。その直後、カキンと金属音が部屋に鳴り響く。寸でのところでモルテはメイユの拳を止めたのだ。だが、まだ押し合いは続いている。
「くっ。いきなりひどいじゃないですか。・・・それにしても、意外と力があるんですね。」
「ふふっ。ありがとうございます。モルテさんこそワタクシの攻撃を初見で止めるなんてすごいですよ。」
「まあ、予想外なことに対応するのは慣れていますから。ねえ、ビスさん。」
なぜ今俺に振るのだろうか。心当たりがないわけではないが、ここは答えないのが最善か。
「まあ、仲がよろしいことで、焼けちゃいます。ビスはワタクシのことを見ててくださいね。」
「いえ、ビスさんは僕を見ててください。」
なぜかモルテはメイユに張り合っていた。なんだかややこしいことになった気がする。まあ、今はこういうのが無難だろう。
「おお、二人とも頑張れ~。」
モルテは珍しい武器を使う。武器の形は、三日月型で今は剣として使っている。そう今は。モルテの使う武器は弓にもなるのだ。三日月型のちょうど中央部分は手が入るぐらいの隙間ができており、凹の方が握れるように加工がなされているのだ。そして柄の部分にカラクリがあり、ボタンを押すと弓にも剣にもなる。このカラクリを自分で作ったのだというのだからすごいものだ。
ある時なんでそんなものを作ったのかと聞いたら”だってこの方がいろんな敵に対応できるでしょう。それに、どこにもこんな武器は置いてませんでしたからね。それだけです。”という答えが返ってきた。まあ、その通りなのだが、自分で作るという発想にいたりそれもいとも簡単に作り出すところがモルテのすごいところだ。
「ここまで攻撃を防がれたのは初めてです。でもモルテさん、防ぐだけじゃワタクシは倒れませんよ。それとも、体力がなくなるのを待ってます?」
「そんなわけないじゃないですか。ただ、小手調べをしていただけですよ。今終わりましたけどね。」
そう言うとモルテは後方に飛び退いた。そしてボタンを押し、剣から弓へと切り替えていた。
「へえ。すごいですね、その武器。弓にもなるんですね。でも、それが何です?放たれる前にあなたの懐に潜り込めばいいだけです。」
メイユは音も出さずに駆け出す。ただその直後、メイユは立ち止まり、矢を弾いた。
「もう、あなたは僕に近づけませんよ。」
「・・・」
メイユの目つきが変わった。いままであまり微笑みが取れることはなかったが、今は真顔に近い表情になっている。そして何か目に光が消えたような気がした。
そのあと二人の間に会話はなかった。あるのは甲高い金属音と木が破裂する音だけだった。




