28-1 俺たち以外の客
俺たちの前を歩く男性はドイボという名前で、この村の村長で宿を営んでいるらしい。俺たちは今村のなかで一番でかい建物にやってきている。
「いや、久しぶりにお客さんがこんなに来て私も嬉しいですよ。こんなになる前はお客さんもちょこちょこ入ってたんですけどね。なんせこのご時世ですから、お客さんは全然来なくて手持ち無沙汰だったんです。・・・あ、別にお金を催促しているわけではないですよ。」
ドイボは自分の言った言葉に何か語弊があると思ったのか一言付け足した。だがそんな話を聞いたら余計に払わなければいけないと思ってしまう。
「しかし、タダで止まるわけには・・・」
「本当にいいですから。すみません。私はいつも誤解を招いてしまうのです。嫌になりますよ。・・・では、こちらを。右手のつきあたりに二部屋並んでありますから。」
お金を取る気は本当にないみたいだ。この時ばかりはモルテも気にしたのだろう。
「本当にいいんですか?それも一人一部屋なんて。僕たちは一部屋でもいいですよ。ねえ、ビスさん。」
俺はモルテの問いに答えなかった。もうドイボの答えは決まっていると思ったから。
「いいんですよ。お金には困っていませんし、部屋はいくらでも空いてますから。」
「ドイボさんのお言葉に甘えよう。モルテ。」
モルテは納得していないようだったが、しぶしぶ俺の言葉を飲み込んだようだった。
「ビスさんがそういうのなら。」
俺たちはドイボからそれぞれ鍵を受け取り部屋へと向かおうとする。すると、進行方向とは別の方から声が聞こえてきた。
「おっさん戻ってたのか。で、どうだった?」
「え、ええ。アシオンさんの言う通りでしたよ。」
奥から一人出てきた。それは大柄で筋肉質な男性だった。下手をしたらクラフトより大きいかもしれない。
「そうだろ。だから言ったんだよ。無視してもここにやってくるって。」
そのアシオンと呼ばれた男の言葉に反応したのはドイボでもなく、ましてや俺たちではなかった。
「・・・アシオン。あなたうるさいわ。旅の方たちも驚いているじゃない。ごめんなさいね。悪気があるわけではないの。こいつは馬鹿なだけだから気にしないで。」
アシオンの後ろから落ち着いた透き通る声が聞こえてくる。アシオンの後ろに視線をやるとそこにはもう一人、少女が立っていた。背はベルより少し大きいだろうか。声と体格が合ってないように思われるが、不思議と違和感はしなかった。その少女の放つ雰囲気がそうさせていたのだ。
「なっ‼馬鹿ってなんだよ。馬鹿って。」
アシオンは凄んでメイユと呼ばれた少女を睨んでいたが、メイユはそれを気にも留めていないようだった。
「・・・だからうるさいって。他の人に迷惑でしょう?」




