2話 死も問わぬサポート
2話‣ 死も問わぬサポート
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4月2日。授業初日。
無事、本主人公「石谷涼」は
小、中別々だった幼馴染「立花千恵」と再会し、帰国少女「花園桃花」に絡まれ、
無事ラブコメをスタートさせる立派な一日となった。
ここの序盤辺りはフラグさえたてときゃ何とかなるから楽だ。
謎に求愛してくる第3の美少女ヒロインは半年後ぐらいに来る予定であり、
全てが順調である。
…
さて、高校生活序盤だが、
我々ラブコメを裏から支える主人公とヒロインの友人どもは
かなり忙しい時期だ。
特に忙しいのが、放課後イベントの選択。
ラブコメで起こる重要なイベントは「放課後」がほとんどであり、
放課後がどうなるかはほとんどここ出来まる。
「りょう、お前部活はもう決めたか!?俺サッカー部!」
「りょう、帰りマック寄って行こうぜ!アップルパイ食いてぇ!」
この選択によって道が大きく分かる。
まぁどちらを選んでも忙しくなるのは確実だが。
…
まぁ今回に関しては「タイムスリップ」が本質であるため、
そこらへんどうでもよくなるけどな。
前話でも言ったが、ヒロイン側の親友りえは必ず立花千恵を勝たせようとしている。
その為には、普通なら、本作のヒロインになるであろう帰国少女のツンデレ桃花が
自分の気持ちに気付いたりして告白してしまう前に、
さっさと立花と涼をくっつけなければいけないのである。
幼馴染を勝たせる必要がある。
過去に戻る系は、必ず幼馴染が勝つ。
それゆえ本作はタイムスリップがテーマだ。
作戦的には、
後悔してたことが起きる
↓
過去に戻れることに気付く
↓
そのくり返し
↓
終盤、かなり前(幼い時)までタイムスリップする
↓
約束かなにかを思い出す
↓
未来に戻ってハッピーエンド
この様な流れにしていく予定だ。
つまりは過去に戻るので、
幼馴染と言うスキルが一番色濃く強く出るシチュエーションなのである。
…
よし、じゃあまずは涼に、自分が時を戻せることを知ってもらわなければならない。
タイムスリップ系はどことなく暗い話になる傾向があるが、
本作戦はそこまで物語を重くしないから大丈夫だ。
作戦というのは、幼馴染の立花千恵を殺すことだ。
...ん? ラブコメにしては重いって?
いやまぁ別に俺が死んでもよかったんだけど、
なんか利恵に猛反対されてこうなったんだ。
なぜああまで反対したのだろう。
俺でも彼女でも変わらないし、どうせ時間も戻るから死なないのに。
...ん? そういう話ではないって?...まぁいいか。
関係のない話は置いといて、作戦の内容はこうだ。
『「帰ろう」と知恵から誘われ、
涼は大したこと無い理由で断ってしまう。
そこで千恵が誘拐され殺されたことになり、
「一緒に帰っていれば」と、
後悔をしたところで時を戻す。』
まぁ正確には、「千恵を殺されたように見せかける」だな。
ベタだが成立さえすれば完璧な流れである。
しかし簡単にこういった出来事が起こるならば、
俺たち「主人公とヒロインの親友」の立場は必要ない。
それに、このシチュが自然に成功するには無理がありすぎる。
まず、千恵もりょうもご存知の通りかなりのヘタレなので、
初日になんて全く話さない。帰宅の誘いなんてまぁないだろう。
ましてやそう簡単に誘拐や殺害が起きるわけなんてない。
ということで、裏取り、伏線から代役まですべて我々が担当するのである。
例年通り、今日は忙しくなりそうだ。
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