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1話 入学式以前の事前段取り


1話‣ 事前段取り


我々の苦労は、実は学園生活が始まる前から始まっているのだ。


当たり前だが、学園ラブコメを成立させるためには

学校生活序盤のうちにさっさと出会わせて

ラブコメを繰り広げられざるをえない環境にする必要がある。


ラブコメの主人公とヒロインが「初日に運命的に出会う」ことも

「偶然的に都合の良い環境に放り込まれる」ことも

まぁまずないと考えていいので、


事前の準備は、必然で、絶対なのである。



さて、今ちょうど、ヒロイン側の親友である「帆香りえ」の家の目の前に来ている。

インターホンを鳴らそうとした所だ。


「プルルル プルル...ガチャ」

「俺だ」

「今開けるわ」


特に余計なやりとりはない。お互い長い付き合いのためそんなものはないのだ。

あと、マジでそんなラブコメみたいなことやってるほど余裕ないのだ。


ガチャっ


「あがって、親はいないわ」

「悪いな」


そう、彼女の親はいない。我々の関係は極力気取られてはいけないから。

特に親にはだ。


親とはラブコメにおいては面倒なもので、

サブキャラの我々にでも、親の登場は、まぁ確実にある。

そこで「あの二人、いつも家に行き会ってる程仲良いのよね~」とか言われたら

純愛ラブコメでは絶対いられなくなる。


なんか俺たちもメイン寄りになって、

90年代ぐらいのドロドロの少女漫画になりそうなので、

この設定をなるべくずらさないためには

「そこまで関わり合いは無いけど息は合いそうな二人」を維持しなければいけないのだ。



朝の早い中、かたずいている彼女の部屋で

そこそこあったかいお茶を飲みながら

こたつに入り話し合っている。


「それで、そっちは上手くいったの?」

「手筈通り。過去のクラス割りを逆算し二人が同じクラスになるようしといた。

昨日学校に忍び込んで確認もとれた」

「こっちも順調。初日に出会う段取りは、テンプレでありつつ少し味のあるものにしといたわよ」


まだ眠気が残っている中、体制を整え彼女の方を見る。

そして、少し真剣に彼女に言う。


「じゃあ、ついにあれか...」

「ええ。そのことについて話さなきゃいけない様ね」


「どんな『環境』にしようか」



環境=すなわち本作品の肝である。

この要素は作品の趣向が大きく変わるポイントであり

今後の物語にまるまる影響してくる、ものっ凄く重要な点である。


例を挙げるなら、●●●団とかいう部活や

生徒会、サークルだったり、青●症候群だったりする。


「私に考えがあるんだけど」

「お、何か自信がありそうだな」


珍しくりえが自信ありげだ。


「私側、ヒロインサイドは、幼馴染というテンプレな要素をもっているから、

ひねりすぎる必要はないと思うの」

「それはそうだな。俺たち超能力者や宇宙人でもないし、

俺側の親友(主人公)もピアノにトラウマがあったり幽霊が見えたりはしないからな」


メタすぎるも真剣に話し合っている。

彼女が眼鏡をかけなおす。

おれもお茶をすする。


「でまぁ、私はね、巨人か鬼が良いと思うの」

「ブフォーーーーー」


盛大にお茶をふいた。

ってか、え?巨人?鬼?

どっちも全然ラブコメじゃなくね??

落ち着け、俺。

何か理由があるはずだ。


「...りえさん、おたくのヒロインはアッ●ーマン家じゃないのですが。

何か理由が?」

「え、別に?かっこいいじゃん。」

「えぇ...今からバトル漫画にするのはちょっと無理があるぞ...」


「というのはおいといて、実は幼馴染が勝つラブコメってほとんどないのよね。

なんだかんだで主人公に尽くしても結局は負けてしまう

「幼馴染」というハズレくじを引かされた私の親友を救いたくてね」


「でも、巨人...?」

「極地に追い詰められたら大体幼馴染の勝ちだから」


なるほど、確かに最近のラブコメは幼馴染を勝たせない風潮があるな。

それを想ってのことか。


でも、それなら...


「そんなことをしなくても、考えがありますぞよ、りえ様」

「ほほう、どんなことだねたつやくん」



チッチッと時計の針がなっている。

今ではレトロともいえるアナログ時計はすでに22時を回っていた。


「まさか、タイムスリップなんて壮大なものをやろうと言い出すなんてね」

「しょうがないだろ、過去の約束ほど幼馴染が強いものはないからな」


「でも大丈夫?北海道もザ●シャインラブも

最終的に幼馴染みとはくっついてはいないけど」

「まあ、なるようにはなるだろ」


「それより、過去の都合に合わせたシナリオはどうだ?終わりそうか?」

「思ったより早く終わりそうよ。それよりそっちの時間を操る魔法の蝶々はどうなのよ」

「いや、このネットに乗ってる作り方結構難くて...」


そんな話をしてるうちにも、10時半を過ぎようとしていた。


「あんた今日は家に泊まっていきなさいよ」


「そうさせてもらうわ、もう限界。眼えいてぇ、足しびれたし何もしたくねぇ...

適当にこたつにでもねるわ」


「風邪ひくわよ、バカなの。布団で寝なさい」


「親が帰ってきてるだろ。別の部屋に布団取りに行けないだろうからいいよ」


「何言ってるの、一緒の布団で寝ればいいじゃん」


「さらっとすごいこと言うなぁ。お前それでも乙女か?」


「余計な世話だ。どうせ最終的にくっつくんだからいいよ。

それより腹へったんじゃない?

コンビニで弁当でも買ってくるからそれまでは寝るんじゃないわよ」


そういって、窓を飛び越え駆け足でコンビニに駆けて行った。


自暴自棄になってるのか知らないけど、すごいこと言うな、ほんと。

そんな簡単に男を一緒に寝かせてはいけないだろ。


いやまぁ、うれしいっちゃ嬉しいけど。




冷たい風の中、コンビニに駆けるりえの顔は、少し赤く火照っていた。


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