底辺動画配信者、異世界を撮影する
作者の妄想ですので、実際の動画配信とは異なります。似たものがあったとしても関係ありません。あらかじめご了承下さい。
「今日もせっせとお洗濯~♪」
〝そんなことするより、さっさとゴブリン倒せるようになれよ〞
〝それな!あとホーンラビットもな〞
「わかってるよ。他人事だから言いたいこと言いやがって。倒してるとこ見たいなら、武器代をプレゼントしてくれよ。」
〝ハッハッハ!野郎にかける金はねぇ!!〞
〝まぁまぁ、お茶でも飲みなされ〞(お茶をいただきました)
〝まぁまぁ、おむすびでも食べなされ〞(おむすびをいただきました)
「皆酷いなぁ…この洗濯だって、ちゃんとしたF級のギルド依頼なんだぞ?頑張って日銭を稼がなくては野宿になっちまう。漫画みたいに冒険出来ないんだよ。」
〝俺達の知ったことか!〞
〝ならさっさと終わらせて、受け付けのケモ耳お姉さんを映せ〞
〝そうだそうだ!ロリ奴隷を映せ。お色気はまだか?〞
「そういうの流せるわけないだろ!地球用のアカウントがバンされたら生活出来ないんだからな。…されるかわかんないけど。」
融通の聞かないリスナーめ。こちらはライフラインが整ってない世界でなんとか1ヶ月生き抜いたとこなんだぞ。
アカウント名:蘭丸は、心で涙を流し、表情は笑顔で生配信を続けた。
☆★☆★
時は遡り1ヶ月前、蘭丸は無料動画配信サービス【フェアリー★サークル】
に載せる動画を考えながら帰宅していた。
この配信サイトは、大手の有名サイトのように登録数や視聴時間、CMを獲得してお金を稼げるシステムではなく、視聴者がサイト上のアイテムを買い配信者にプレゼントすることでお金を稼げるものだ。
このシステム上、バカな男の視聴者が、キレイでセクシーな女性にバンバンとプレゼントしていることは想像出来ることであろう。願望道理のお色気動画が見れるとは限らないけどな。
そんな片寄った動画や動画配信者が多いため、なかなか視聴者の全体数は多くない。配信者に登録する人はごく少数だ。同じ無料動画なら、配信されている数も多い大手の安全なサイトを見るだろう。
なぜこんないつ閉じるかもわからないサイトで、男の蘭丸が配信作業をしているかというと、すぐにお金が手に入るからだ。
大手のように登録者数伸ばして、なんかして、審査受けて、待って、なんて煩いことはない。芸能人でもない、凄い特技もない蘭丸には【フェアリー★サークル】のほうが希望があった。
「まっ。こっちも上手くいかないがな。」
動画を配信して1年、登録リスナーは増えてきたが、プレゼントされるのはお茶(投資金額10円、配信者には5円が支給される)ばかり。大学を中退しアルバイト生活。明日には二十歳になる。一人暮らしも、もう慣れた。
「奮発して、ホールケーキ買ったけど、上げる動画の構想が思いつかないなぁ。」
今度こそは、金の延べ棒(10万円)ゲットだ!と、頑張っているが、心の奥では『出来るわけないだろ』と諦めている。
「あっ!やばっ!!」
蘭丸はケーキの入った箱を落とした。バイト終わりの帰り道、疲れていたけど不自然な落とし方。瞬間で『ぐちゃぐちゃになったケーキ配信したら面白いのかな?』なんて考えるのは、もはや、職業病ならぬ配信病だ。
ぶつくさ考えながらケーキを拾おうとしたとき、景色が夜から昼間に変わった。
「えっ?」っと呟いた蘭丸は、辺りをキョロキョロ。全く知らない町だった。
「まさかの異世界転移?いやいや、ドラマの撮影だろ。」
そう自分に言い聞かす蘭丸こと『菊川 刀蘭』は夜から昼間に変わったことすら忘れていた。
そして、極めつけに周りにはケモ耳生やした人達がたくさんいた。この光景を見たら撮影だと思うだろう。
「あっ!これはチャンスだ!俺もケモ耳撮影してアップすれば流行ること間違いなし!許可は後で貰おう!!」
そう息巻いていた刀蘭だが、機材がない。それ以上に財布と鍵とスマホもない。
「おいおい…なにも持ってないってどういうことだ?ポケットに財布もないなんて。」
絶望の淵に立たされた刀蘭のもとに、更なる絶望が声をかけてきた。
「おい、貴様。さっきから何を騒いでいる。」
声をかけてきたのは、軍服らしき服を着た狼男。近くで見るとラバーマスクや、特殊メイクではないことが良くわかる。ギラついた目が怖い。
「えっと…迷子です。」
必死の言い訳。通るはずもない。
「その年で迷子だぁ?怪しいな…詰所まできてもらう。」
刀蘭は諦め、ドナドナされていった。
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「貴様が犯罪者でないか確認させてもらう。」
「はい。」
刀蘭は、素直にしたがった。
「この水晶は対象の能力、賞罰を映し出す。触ってみてくれ。」
言われた通り、水晶に触った。すると水晶の上に文字が浮かび上がった。
【ランマル 20 人族
スキル:動画撮影、動画編集、動画投稿、投げ銭受け付け
賞罰:なし 】
なんじゃこりゃ?それが刀蘭の感想だった。
「4つとも見たことのないスキルだな?まぁ、賞罰もないし問題ないだろ。帰ってよし。もう騒ぐんじゃないぞ。」
そう言われ、追い出されそうになる。
「待ってください!!ホントに迷子なんです。」
だが、刀蘭も必死だ。今投げ出されたら野垂れ死ぬ。なんとか助けてもらわねば。
「そう言われてもなぁ。」
狼男も困ってしまった。成人前の子供ならいざ知らず、20も年ある男を匿うと、スラムのやつまで面倒みなきゃならなくなる可能性がでてくる。
が、ふと昔話を思い出した。
「変なスキルを持っているから、もしかすると『イタズラ妖精の迷い子』かもな。冒険者ギルドに案内してやる。」
そう言って、また、刀蘭をドナドナしていった。
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立派な建物に着いて中に入ると、狼男は暇そうにしている受け付け嬢に尋ねた。
「ギルマスはいるかい?いるなら、ギランがイタズラ妖精の迷い子らしき人物を連れてきたと、伝えてくれ。」
「畏まりました。少々お待ちください。」
そう言うと、受け付け嬢は裏に消えた。
五分もせずに戻ってきた。
「ギラン様、ギルドマスターは応接室でお待ちしてます。」
「了解。ランマル、行くぞ。」
「あ、はい。」
刀蘭は、必死に付いていく。
応接室に着くと、ギランはノックし中に入った。
「久しぶりだな、ギルマス。報告した通りイタズラ妖精の迷い子らしき者を連れてきた。確か、冒険者ギルドが保護することになっていた気がするが合っているか?」
中にいた筋肉モリモリのやつが答えた。
「あぁ。合ってる。建国されたときの法案にあるんだよ。」
「なら、あとは任せていいか?巡回の途中なんだよ。」
「ああ。法に乗っ取り、ちゃんと保護するから大丈夫だ。」
「では任せた。」
そう言うと、ギランは帰っていった。
「さて、まずは自己紹介だな。俺の名はジラート。ここアトラ支部のギルドマスターだ。宜しくな。」
「宜しく。俺は…ランマルだ。」
本名とペンネーム、どちらを名乗るか迷ったが、水晶に出てきた。
「ギランはああいったがこちらでも本当に『イタズラ妖精の迷い子』なのか調べさせてもらう。問題あるか?」
「問題ないのでお願いします。」
ここまで来たらトコトン調べてもらい保護してもらったほうが良さそうだ。
詰所でみた水晶と同じようなものを机においた。
触れると詰所で見たものと同じような物が浮かび上がった。
【イタズラ妖精の迷い子】
浮かび上がった中に追加されたものがあった。
「ほぉ。本当に迷い子だったか。そうなると、初代国王の遺言によりお前の身柄は、冒険者ギルドが預かろう。安心しろ。」
良かった。本当に良かった。
情報がないから、詐欺や人拐いの可能性もあるけど、冒険者ギルドないの雰囲気からないと予測できる。
「ありがとうございます。ところで、冒険者ギルドが保護してくれるなら、俺は冒険者として生きろ、ということですか?」
「ん?あぁ。いくら保護するといってもただ飯をやる余裕はないからな。身分証としてギルドカードは作るから自分で稼いでもらいたい。」
まぁ当たり前のことだよな。
「それと、確認だが、迷い子は魔物もスキルもない世界からやってくると言われているが、間違いないか?」
「はい。科学が発展した平和な国から来ました。他国は戦争をしているようですが。」
ギルマスは首をかしげた。
「科学と平和ねぇ。本当にそんな世界があるもんなのか?まぁいい。殺生したことのない人間には辛い世界だが、頑張って生きてくれ。とりあえず、ギルドの説明だ。」
聞いた説明を簡単にすると、
①ギルドに入ると級が存在し、最低級Fから最高級Sまである。
②依頼は自分の級の一つ上まで受けられる。しかし、B級以上になると同じ級だけ。上も下も受けられない。
③ギルド所属の冒険者同士の争いはご法度。ギルドカード没収もあり得る。
④依頼失敗は級を落とすこともある。
簡単にいえばそんなところだった。
説明が終わると同時に、受け付け嬢が入ってきて、カード渡し、すぐに出ていった。
「これがランマルのギルドカードだ。無くすと面倒くさいから無くすなよ?F級の依頼は薬草採取以外、町の雑用。殺生はないが達成報酬は安い。この紙にオススメの宿が書いてある。節約すれば問題なく生活出来るだろう。」
話しは終わりだ、とばかりに机に紙を置き、ギルマスは出ていった。
刀蘭はため息をついて一言
「こりゃ、死んだな。」
★☆★☆
こうしてなんだかんだ言いながら1ヶ月、貧乏だがなんとか生き延びた。
「少し振り替えると、リスナー兼、貧乏ケチケチパトロンのお陰でなんとか生きてる訳だな。」
〝何をぉ~!ヘタレの分際で〞
〝武器が欲しければ、女湯に特攻決めろ!〞
「さっきも言ったが、んなことできるわけないだろ?たく…自由なリスナーが羨ましいよ。」
今日もせっせとお洗濯をする。
リスナー達との会話?は俺のスキルだ。動画投稿サイト【フェアリー★サークル】がそのままスキルになっていた。
動画撮影:見ている物を撮影、保存する
動画編集:保存された動画を編集できる
動画投稿:保存、編集した動画を【フェアリー★サークル】に投稿できる
:生配信もここから可能
プレゼント受け付け:動画サイトからプレゼントされたもの、支給金を保管する。出し入れ可能
以上が、俺のスキルだ。これでどうやって魔物と戦えと?
俺が異世界に転移したとき、【フェアリー★サークル】にアップデートと規制が入ったらしい。少しあべこべな気がしないでもないが異世界にいる身としては何も言えないし、出来ない。
アップデート内容の一つは、プレゼント出来る種類が増えた。それはもう沢山増えた。元々10種類程しかなかったものが、一気に10000以上になった。
今だに[お茶][おむすび(梅)][サンドイッチ(玉子)]しかもらってないから、詳しくは知らん。
大きく変わったのは現物が貰えることだ。もちろんお金も貰えるが投資金額の1/10。つまり、お茶なら1ゴル手に入ることになった。減った…いやいや、今は現物だ!おむすびならちゃんとおむすびが、投げ銭受け付けにあるんだ。正直これのお陰でなんとか生きています。
謎なのは別の配信者にはプレゼントの数は増えていないし、現物は届かないらしい。
あとは規制、何故か300人近くいた登録リスナーが10人減り、今まで上げていた動画は削除されていた。これは運営に連絡出来ないので諦めた。
「洗濯終わり。今日は宿帰ろう。明日はリスナーさん達に煽られたし、薬草採取で町の外にいくかな。じゃ!今日は落ちまぁす。」
そう言うと視界の端に〝魔物倒せよ〞などのチャットが流れた。
これも生配信中の能力だ。
次の日、町の外の丘の上にいた。ここは見晴らしも良く日当たりもいい。薬草が生える有名なスポットなのだ。
そのため、冒険者に成り立てのF級が多く集まる。
〝おぉ!猫耳娘がおるではないか!話しかけてこい!〞
〝いやいや、ここはツンデレエルフに決まっているだろ〞
それを見てリスナー共が騒ぎ始めた。
「はぁ。なんでこの時間に学生である『焼きうどん』さんと『カエル』さんがいるんですか。学校はどうしたんですか?学校は。」
〝大学の単位なんぞ、去年のうちにほぼほぼ取り終えたわ!〞
〝ツンのためならば、留年もヤムオエナイ〞
「まぁ本人達がそれでいいならいいですよ。因みに話しかけませんからね。」
そう言うと、チャットが物凄いことになった。なぜ二人しかいないのにここまでチャットが荒れるのか。謎だ。
薬草を採取し終え、帰ろうと思ったとき、遠くの方で土煙が上がっているのが見えた。魔物達の騒ぐ声も聞こえる。嫌な予感がする。
「焼きうどんさん…すみませんが使い捨てでいいので[双眼鏡]をプレゼントしてもらえませんか?」
〝300円くらい別に良いがどうした?〞
〝冗談でプレゼントをさいそくすることあるが、真剣なのは珍しいな〞
「あそこの土煙がどうも……杞憂ならいいんですが、気になって。」
そう言って指を指した。
〝確かに気になるな、ほれ〞(双眼鏡をいただきました)
お礼をいい、貰った双眼鏡を使い土煙を確認した。それは絶望だった。
「モンスターパレード…………」
魔物達の大群が一直線に町へと向かっていた。
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F級の人達を集めて町へ戻ると、混乱の渦であった。恐らく魔物の軍団が向かってきていることが、町民たちに知られてしまったのだろう。
冒険者ギルドにいくと、ギルマスが指揮をとっていたので話しを聞いた。
「薬草採取にいっていたF級は全員無事だったか。良かった。」
「はい。あそこは丘になっていますから、早めに気づくことができ帰って来ました。」
「帰ってきて早々だが、F級は後方支援!まずは採取した薬草を依頼完了し、すぐに傷薬作りの手助けに向かってくれ。終わったらすぐに冒険者ギルドで新たな指示を出す。わかったか?」
「「「はい!」」」
何人かの声が重なり、駆けていった。
そんな中で刀蘭は駆けてはいかず、ギルマスに声をかけた。
「ギルマス、見てもらいたいものがあるんですが。」
「なんだ?忙しいから手短に頼むぞ。」
刀蘭はすぐに動画編集機能を使い、魔物の集団を双眼鏡で覗いた動画をギルマスに見せた。もちろんチャット部分は消してある。
突然、空中に現れた画面に驚いたギルマスだったが、すぐに気持ちを切り替えて覗きこんだ。
「ふむ。見たものを他人に見せる能力だったか。すまんがランマルは作戦室に行ってくれ。指示を出したらすぐに俺も向かう。」
「分かりました。」
作戦室に向かった。
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臨時作戦室とかかれた部屋に入ると、五人のパーティーリーダーがいた。
A級【飛竜隊】A級【漆黒の闇】B級【紅蓮の炎】B級【復習を誓いし者】B級【クリスタルマーガレット】
もめても面倒なので、バレないうちにササッと席に座った。
少しするとギルマスが入ってきた。
「遅れてすまない。すぐに作戦会議を始める。まずはランマル、さっきの絵を皆に見せてくれ!」
そう言われ、前にでて映像を流した。
真っ先に反応したのは飛竜隊だった。
「これが本当なら制空権を持つ魔物も多いな。一番槍は飛竜隊に任せてもらいたい。飛んでる奴らを叩き落とす必要がある!」
飛竜隊はその名の通り、竜に股がり戦うパーティーだ。四人の少数精鋭。
その後ももめそうになったが、ギルマスがまとめた。
「飛竜隊は、一当てしたら一度下がり、下がり次第、紅蓮の炎が得意な範囲魔法を放て。焼け野はらになっても構わん。その後、復習を誓いし者とクリスタルマーガレットが他の冒険者を率いて突撃。漆黒の闇は影にかくれながら遊撃してくれ。後方にE級F級を待機させるからケガしたら下がって治療。戦闘開始は30分後、質問がなければ行動してくれ。」
ギルマスがそう言うと皆動き始めた。
皆が出ていったあと、ギルマスが刀蘭に声をかけた。
「今さらで悪いが、魔物の種類とだいたいの数はわかるか?」
本当に今さらだな。
「確認します。……いるのは、ゴブリン、オーク、パンサーウルフ、ウォーアナコンダ、ピンクスパイダー、レッドオーガ、グリズリーベアー、レッサーワイバーン、ハーピー辺りと、足元の小さいのは分かりづらいですが、多分ウサギ系とスコーピオン系ですね。数はトータル1000近いことしか分かりません。」
「そこでわかれば前もって準備できる。ありがとう。」
そう言ってギルマスは部屋を出ていった。
部屋に残された刀蘭は出るタイミングを逃した。
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飛竜隊の戦闘の狼煙を上げて、一時間が経過したがまだ戦っていた。刀蘭は町を守る塀の上から戦闘を見ていた。ネットの住人と一緒に。
「うわぁ、皆スゲーな。切った張ったを繰り返してるよ。」
〝映画みたいだな。お茶飲むか?〞(お茶をいただきました)
〝四頭の竜がワイバーンと戦う姿は興奮した。お茶でも飲みたまえ〞(お茶をいただきました)
〝映画みたいなのって一斉に弓矢が放たれて矢がシャーってやつだよね。あっ!お茶好きなの?〞(お茶をいただきました)
「好きなの?じゃねぇよ。あんたらがお茶しかくれないだけだっての!この1ヶ月で100個以上のストックが出来たわ!!」
刀蘭が怒ったところで住人は知らん顔だ。因みに、三人目は『スズメバチ』
〝蘭丸は戦わないのか?〞
「んん…F級は後方支援って言われてるからな。一度も殺生したことなくていきないここでって言うのはやっぱ出来ないよ。焼きうどんさんがいつも戦えって言ってくれてたけど、一度くらいゴブリンと殺りあっとくべきだったな。」
〝確かにな。まぁ後方とはいえ丸腰は危ないだろ?パチンコで勝ったし奮発してやるよ〞(剣先シャベルをいただきました)
「カエルさ~ん!嬉しいけど、ここは剣とかしゃないの?」
〝アホ抜かせ!剣なんて最低10万するんだぞ?しかも短剣。シャベルは軍用もあるくらい実用的なんだよ!堀を作ったりはさることながら、突く、叩く、盾にするなど、素晴らしいものなのだよ!!〞
「へぇ~そう言われると便利そうだ。」
刀蘭は剣先シャベルを装備した。
〝テッテレェ~~〞
「?!スズメバチさん!このタイミングで言われると、カエルさんが嘘ついたみたいになりますよ!」
刀蘭の周りは平和だった。
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あれから一時間ほど経過した。第一陣、第二陣の群れを倒し終わりかと思ったとき、第三陣が現れた。
最悪だった。
第三陣は飛行型のみだった。第一陣にもいたレッサーワイバーン、ハーピー、デスイーグル、ドレイクの軍団だった。
飛竜隊の活躍によりなんとか維持していたが、うち漏らしがいくつか現れた。その内の一匹が刀蘭に向かってきた。
〝蘭丸!くるぞ!デスイーグルだ〞
〝メーデーメーデー!何処かに魔法使える方いらっしゃいませんか??〞
〝丸氏!今こそ左手に封印されし、マーフォークを解き放つのだ!!〞
〝ってマーフォークかよ!〞
他人ごとの住人達はお祭り騒ぎだ。
「くそぉ。戦うことになるとはな。カエルさんのシャベルがフラグだったってことない?」
ぶつくさ言いながらもシャベルを構えた。
突っ込んできたデスイーグルにシャベルを突きだした。しかし、当たることはなく華麗に避けて上空に戻った。
「空を自由に飛べるの卑怯じゃない?勝てる気がしないや。」
〝それは蘭丸が下手くそだからだよ〞
〝それは蘭丸がヘタレだからだよ〞
〝それは蘭丸が童貞だからだよ〞(お茶をいただきました)
「ど、童貞ちゃうわ!!」
ありがとうございます。住人は通常運転です。
バカなことをしている間に、デスイーグルが攻撃を仕掛けてきた。
「次こそは当てる!」
良く狙いをつけてシャベルを突いたが、またもかわされた。かわすだけでなく、反撃のおまけつきで。
「ぐあぁぁ!肩が!」
デスイーグルの爪で肩を裂かれた。
〝これはマズイ!ケモ耳メイドを見るまでは死なれては困る!〞(傷薬をいただきました)
〝貧乳エロフは俺の嫁!〞(傷薬をいただきました)
〝もふもふ、もふもふ〞(傷薬をいただきました)
〝こんちゃ!っていきなりピンチじゃないか〞(胡椒をいただきました)
「レイチェルさん…胡椒って……傷にふって痛がれと?」
〝いや!わざとじゃないんだよ?傷薬の下が胡椒になってて慌てて押したら胡椒だったんだよ〞
そんなやり取りをしながら、傷薬を出して肩に塗る。するとみるみる治っていった。…気持ち悪い。
旋回していたデスイーグルは、三度目のの正直ばりに突っ込んできた。
「せっかくだから使わせてもらいますよ。レイチェルさん。」
そう言って、刀蘭は胡椒を上空に散布した。(大容量1キロ)
胡椒の中に突っ込んだデスイーグルには、効果がてきめんだった。
〝地面で暴れてる今がチャンスだぞ、蘭丸!〞(塩をいただきました)
〝ピンチはチャンスだ〞(砂糖をいただきました)
〝ぴえんがぱおんだ〞(醤油をいただきました)
〝燃え上がれ!俺のコスモス!〞(一味唐辛子をいただきました)
「あんたらは普通に応援出来んのか!!あっ!一味唐辛子は効きそうです。ありがとう。」
デスイーグルはまだ暴れている。爪で引っ掛かれないように慎重に近づき……顔面にシャベルをフルスイングした。
二、三発繰り返すとデスイーグルは動かなくなった。倒したようだ。
「やったぁ!!魔物初討伐いただきました!」
〝蘭丸は俺が育てた〞(お茶をいただきました)
〝いや、俺が育てた〞(お茶をいただきました)
〝いや、俺だ〞(お茶をいただきました)
〝俺という可能性も0ではない〞(お茶をいただきました)
「全員ブレないな!」
その時、あちこちから勝鬨が上がった。向こうも無事終わったらしい。
こうして生き延びた刀蘭の配信生活はまだまだ続くようだ。
その後もきっと楽しく暮らしたでしょう。