プロローグ
皆様も知っているように、かつてこのアーレン王国の隣には、サナン王国という国がありました。サナン王国は特に魔法の研究が盛んな国の一つで、多くの優れた魔法使いが集まり、その魔法の研究はサナン王国ばかりではなく他の国々の人々にも役に立っていました。
そんな王国が、ある日突然深い深い闇に閉ざされました。この時サナン王国で何が起こっていたのか詳しいことは分からないまま、国境には特殊な結界が張られているらしく、外からサナン王国に出入りする方法も分からなくなってしまいました。
闇に閉ざされたサナン王国を支配するようになったのは、クイーン・デスメラリアと名乗る人物でした。彼女は国名を「カリザ・ラー・ルーダ」と定めたため、サナン王国が闇に閉ざされたこの事件のことを、「カリザ・イブン」と呼んでいます。
カリザの女王となったデスメラリアは、次々と周囲の国々に攻撃を仕掛け始めました。その目的は果たして何だったのか。
多くの軍人や魔法使いたちがカリザを止めようと動いていましたが、中でも特に優秀な、エディアストロと名乗る魔法使いがいました。
彼は何故か素性を明かさずに活動している魔法使いで、そのために彼を怪しむ者も多かったのですが、それでも彼は他の多くの魔法使いと協力してカリザへの対抗手段を探っていました。
そしてカリザ・イブンから三年ほどたったころ、あの国境の結界をどうやって突破したのか、彼は単身でカリザの国へと向かいました。
ーー以来彼が戻ってくることはなかったかわりに、カリザが周囲の国々を攻撃することもなくなりました。
偉大な魔法使いとして、エディアストロはそれから八年たった今でも尊敬の対象となっています。