BPM3:イケメンと幼馴染
「またお前達、教室でイチャイチャしてるのか」
そんなやり取りをしていた司たちに、爽やかな雰囲気を醸しだす、一人のイケメンが話かけてきた。
「してない」
近づいてきたイケメンに、司は冷静に反論の意を述べる。
「そうよ、つかさに迫られてただけだもん」
「見事な捏造をどうもありがとう」
むぎゅっと、司は調子に乗った奏の頬をつねった。
「いててててえへへへ」
つねられているのに何だか嬉しそうだ。
「それで、イチャイチャしてないなら何をしてたんだよ」
イケメンが問いを投げかけてきた。
「はいは~い!白川くんも一緒に部活見て回ろうよ!」
名案でしょ。みたいな表情を浮かべ、奏が提案する。
白川登喜。
堺星高校1年生。
司と同じクラス。司がこの学校でできた唯一の男友達だ。
高身長で顔立ちもよい。爽やかという単語は登喜のためにあるのではないのかと考えてしまうぐらい、清潔感溢れる美男子だ。
「友達になってください」と賄賂を渡したわけでもないのに、登喜の方から司にアプローチをかけてきた。
登喜曰く「良い人察知レーダーが反応したから」らしい。
なにを言っているんだこのイケメンは、と当時の司は思っていたが、なんだかんだ意気投合して今に至る。物好きというやつだ。
「あ~部活見学かぁ。行きたいのも山々なんだが今日バイトでな」
申し訳なさそうな表情を、登喜は二人に向ける。
「実家の手伝いか。お前も大変だな」
登喜の実家は音楽レコーディングスタジオで、よく登喜は実家の手伝いをしている。
奏にその話をしたら「え!知り合い割引とかしてくれないのかな!」と目を輝かせていたので、その時に紹介したのだ。
「そういえば、この前レコーディングした奏ちゃんのバンドの音源、店に置いてみたら一瞬で売り切れちゃってさ。びっくりしたよ」
「ほんと⁉すっごく嬉しい!あのミニアルバム、自信のある曲しか入れてなかったからなぁ。司どうする?サイン貰っとく?」
誇らしげな表情を浮かべながら、司に問いかけた。
「そうだな。貰ったら即転売してやるけどな」
「私のファンに叩かれるわよ」
冷たい目線を送り、勢いよく司の頭を叩いた。
「すでに叩かれましたが」
「そっちの意味じゃないわよ」
漫才みたいな二人の掛け合いを見て、登喜は微笑んでいる。
「ははは、相変わらず仲がいいなお前達は。まぁそんなわけで先帰るわ。なんかいい部活あったら教えてくれよ二人とも」
たくましい後姿を見せながら、登喜は二人に手を振った。何をしても格好良く見えるやつである。性格も人一倍良いので、何をやっても嫌味っぽくないのだ。
「やっと二人っきりになれたね」
登喜が居なくなった途端、奏が距離を詰めてきた。
「お、お前な、そんなことばっか言ってると、本当に好きな人ができた時にそいつに勘違いされるぞ」
何の気なしに放った一言に、奏は少し表情を曇らせた。
「……ばーか」
目の前にいる司にも聞こえない音量で奏は呟いた。
「なんか言ったか?」
「なんでもないわよ。それより部活見学!時間無くなっちゃうじゃない!」
軽く濁すように、奏は話題を戻した。
黒板の上にある時計に視線を向けると、もう既に五時を回っていた。
「しょうがないな」
入りたい部活がなかったとしても、心配してここまで来てくれた奏の気持ちを司は汲むことにした。見るだけなら何の損もないだろう。
鞄を持ち、重たい腰をようやく上げた司は、教室の出口に足を向ける。
「えへへ、早く行くわよ」
立ち上がった司の腕に、にやけた顔で飛びついてきた。
「さっきの話、聞いてたか?」
文句を垂れつつも、文化系の部活が集まる部室棟へと足を運ぶことにした。
つづく。
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