いつもの変哲もない朝の話かもしれない
構想練ってたんですけど、意外と書けるものなんですね…テンションの問題でありました…。
いい朝だ。
窓から差し込む陽光に、ベッドの上であくびをしながら伸びをする。
お腹に絡み付く二対の腕を起こさないようにゆっくりはずし、窓に歩み寄る。
カーテンを開けると、青々とした森林の風景。あまりにも幻想的で、つい見とれてしまう。
ここがドイツだとしても、太陽の暖かさは変わらない。
そしてアンジュとアイナのべったりさ加減も。
ゲームの中でどうしようもないレベルの呪いの装備を強制装着されたような、もしくはいつか見たどこかに置いてっても戻ってくる人形の話を聞いた時の気分になりながらベッドに目を向ける。
実に安らかな寝顔だ。二人の美少女が、片やグラマラスな、片や幼さを残す、されど成長を感じるような肢体を、あられもない姿で晒してスヤスヤと眠っている。
「………………………………………………………」
扉に目を向けると、していた筈のつっかえ棒が真っ二つに割れている。記憶が正しければあれ火掻き棒で金属製なんだけど。つっかえ棒が何をどうしたら真っ二つになるのかどんな経緯でああなったのか物凄く知りたいっていうかいやいいや知ったら正気を失いかねない。
かくいう僕も、ちゃんと寝巻きを着ていた筈なのに上半身裸の下着姿。
この時点で正気を保てている僕、偉いぞ。
虚ろな目のまま、扉に向かう。
部屋一面に赤い絨毯が敷き詰められているため、足音は心配要らない。
と、途中で服を着なければということに気づき、自分の寝巻きを取りにベッドへ…。
「…うふふ…和さまぁ…」
「………Nagomi……Ich liebe dich(大好きだよ)……」
(……………………oh………………………)
寝巻きは既に二人に奪われていた。
上はアンジュが。下はアイナが抱き枕のように抱えて眠っている。
うっそだろ…と、信じられない気分になりながら深い絶望に陥る。
仕方なくクローゼットに向かい、音を立てないように制服へ着替える。
準備完了。ここまで十分も掛かってしまった。
満を持してドアへ。ベッドを見てみると、僕がいないことに気づいたのか二人はのそのそ動き出している。
その動きはまさに、親を探す子犬のよう。
「…んむう…和さまぁ…?」
「……nagomu……Wo(どこ?)……」
その光景に心がグッと動かされそうになるが自制心を働かせる。待て待て僕のマイマインド。
あそこにいったら次抜け出せるのはいつになるかわからない。
ならいまはリビングにでもいこう。
目頭を右手で押さえ、呼吸を整える。
「あー、二人とも、寝起きで悪いけど。僕、先に行ってるからね。早く起きてくるんだよ。」
返答を待たず、素早く部屋から逃げる僕。
扉の前にはアンリさんが無表情で立っていた。
反射で悲鳴を上げそうになるのを気合いでこらえた。
「あら、和様。おはようございます。よく悲鳴を堪えましたね。悲鳴を上げられたらその瞬間に喉を潰さなければならない所でした。」
さらっと怖いなこの人。末恐ろしいわ。
「いやというかアンリさん。いたならあの二人を止めてくださいよ。さすがに心臓が持ちませんって」
「…お嬢様の望む事に、異を唱えることはメイドとしてできませんので」
ほんの少しだけ目を伏せながらそう言う彼女に違和感を感じるが、どういうことだろうか…。
「余計な事を考えないでください。両耳に電極を差し込んでさしあげましょうか」
いやこええよ。無表情がこええよ。目が虚ろだよ。
「…お嬢様方は私にお任せください。和様は先に行っていて下さいますよう」
軽く目を閉じながらそう言う彼女。仕方ない、とでも言いたげではあるがお言葉に甘えることにしよう。
「あー、うん。わかったよ。ありがとう。またあとでね」
「…ええ。また後程」
少しだけ含みを感じつつ、先にコーヒーでも飲んでようと思う僕だった。
安定さんが刺激的ですねー…。




