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2日目にして胃痛薬が必要な予感がします助けてください

あーたーらしーいーあーさがきたー♪


なんて脳内メロディを流しながらフカフカのベッドで目を覚ました僕は、下着姿であられのない姿を晒しながら狸寝入りを決め込んでいるお嬢様(笑)を無視して洗面所へ向かう。


昨日の時点で場所等は把握しておいた。広いとは言え、大まかな地図さえあればすぐ覚えられる物だった。


暖かな廊下をひた歩く。


この屋敷は、どこでも過ごしやすいように最適な温度が保たれているようだった。


そして着いた洗面所もまた豪奢で、マンガや映画の世界でしか見たことがないようなレベルだ。ここ1つでどれ程の金が吹き飛ぶことかわからん。


で、この屋敷、っていうかお城の主人に僕がなる、と?


冗談はよしてほしいと思う。


財団(っていうか財閥?)のご令嬢だけでもお腹いっぱいだというのに、最悪その財団の地位すらアンジュお嬢様の意思で自分に与えられてしまうのではないか?


いやいや、ないない。


だってそうでしょ?ただの高校生だよ僕。どんな冗談だよ、成り上がりにしてはお粗末すぎる。


少し冷たい水で顔を洗う。気分もさっぱりした。

お次は歯磨き。食事の前にするのが日課になっている。


歯ブラシは固めが好きだ。彼女はどこから知ったのか、僕の好みを押さえている。


というかこの歯ブラシ昨日と違うような?新品だなこれ。


まぁ細かいことは気にしない方が良いか。どうせ未だ見えない使用人が手を入れてるんだろう。


そういえば昨日アンジュが呼んでいた爺やというのは誰だったんだろう。


「お呼びですかな?和様。」


「おうわぁ!?!?」


背後から声が聞こえたと思って振り返ったら目の前に執事がいた。


歳は初老くらいか。背筋を伸ばして自分の方に向いているその瞳は、鋭く、冷たく、自分のことを見透かすようだった。


「驚かせてしまったようで申し訳ございません。私、アンジュお嬢様の執事でありまして…セバスと呼んでいただければ幸いに御座います。しかして…」


そう言葉を切ると、目を細めて僕を見つめるセバス。


「…あの、僕の顔になにか…?」


少し怖くなってきてそう問うと、彼はフッと相好を崩した。


「いえ、不躾に見つめてしまい申し訳ありません。ただ、いい顔をしていると思っておりました。聞くところによれば、お嬢様を守り、助けて下さったとか…」


?なんのことだ?


「…申し訳ありません。この話は忘れてください。お嬢様にも、この場でこの事を言われたということはどうかご内密に。」


そう言うと、人差し指を唇に当てるセバス。


…やばい。メチャクチャかっこいい。イケオジはどんな仕草でも様になるのだろう。僕もこうなりたいものだ。(多分無理)


「和様。そろそろ朝食の御時間に御座います。どうぞこちらへ。」


そう言って恭しく礼をする。僕はセバスの後ろに付いていく形で朝食の場に向かうことにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


うん。これはさすがに予想外だったわ


目の前には明らかに不機嫌そうなアンジュ。


明らかに今朝のことを根に持っている。


「和様は日本の修行僧かなにかですの?目の前にこんな美少女がいますのに!少しくらい手を出してもよくってよ?」


あー、そういうこと。と、僕は心のなかで嘆息する。


「僕の知っている美少女は自分のことを美少女と言わないし、まだ高2の僕にそういう世界は早いと思うんだよ。うん。」


しかしこのスープマジ上手いな。いつかここのシェフに会いたい。そして料理を教わりたい。


「むぅ…ですが和様。日本の諺には『据え膳食わぬは男の恥』という言葉があると聞きしたわ。今からでも遅くありませんわよ?」


顔を赤らめながらそう言うアンジュ。


「いや、遠慮してくよ。僕には少し身に余る。君みたいな『美少女』に手を出すのは、『完成された芸術品』を汚すのと同じだと思う。『まだ』僕は君とつりあわないし、ね?」


そしてとんでもない重荷を背負うことをしたくないんですよ分かってくれません?


誉め言葉と、未来への希望を織り混ぜた言葉にアンジュは顔を赤らめながら嬉しがっている。


めっちゃ可愛いと思う。さっきはあんなことを言ったが僕も男だ。そりゃ異性には興味がある。


しかし相手が悪すぎる。


何せ世界でも指折りの金持ち、その一人娘だ。下手な芸能人のスキャンダルよりとんでもないことになるだろう。


事は穏便に済ませなくてはならない。


なんか後ろに控えているセバスが僕の背中をスゴい目で見ている気がするが気のせいだろう。


「あ、そうですわ。和様?本日は私、所用で出掛けて来ますのでお世話係をつけますわね。」


そう言うと、パンパンッと手を鳴らすアンジュ。


「お呼びですか?お嬢様。」


すると室内に一人の女性が入ってきた。

この人もとんでもない美人で、僕より少し年上くらいだ。鮮やかな赤色の髪がまぶしいほどだ。


「アンリ。今日から私が不在の場合につき、和様のお世話を命じますわ。拒否権は、ありません。くれぐれも無礼を働くことのないのように!」


「承知致しました、お嬢様」


そういう彼女、アンリはペコリとお辞儀をする。

メイド服といい、その整った容姿、プロポーションといい…素晴らしいとしか言いようがない。


ギロリ


そう思っていたらアンリさんに睨まれた。

マジかー。なんでだぁー。おかしいなぁああ?


しかしそんな事をおくびにもださず、僕にお辞儀をするアンリ。


「和様。『短い間』になってしまうかと思いますが、よろしくお願いいたしますね?」


殺意を滲ませながらそう言うアンリ。


うん。無理☆


とアンジュの前で言うわけにもいかず、コクコクと頷く僕。


「うふふ、アンリも張り切っちゃって!仲良く出来そうで私としては安心ですわ!!」


そうか君とはわかり会えそうにないようだねアンジュ。


…ホント、勘弁してくれないかなぁ…?


「ははっ…ホンット…勘弁してくれ…」


ポツリと呟く僕の声は誰に届くでもなく霧散した。

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