主人公、どう足掻いても逃れられないようです
さてと。突然のバトルで戸惑っただろう。申し訳ないとは思っている。
彼…じゃなかった。彼女、南條奏は僕の幼馴染みだ。
小学生の頃に海外に引っ越してしまったのだが、まさかドイツにいたとは驚きだった。
「いやいや、もう少ししたら帰って見返そうと思ったのに和から来るなんて思ってなかったわよ!」
と本人に言われたが、まぁお互い様ってことで。
僕らは幼少の頃から日本拳法を習っており、俗に言う黒帯保持者でもある。
腕前は、日本のジュニアの大会でトップクラス。
僕の方が昔から一枚上手ではあるが、彼女も間違いなく強者であると言える。
「…和、控えめに言っても化物レベル」
失礼なことを言うなぁアイナは。
「でも、和様の闘う姿は格好よかったですわぁ…」
恍惚とした笑みでそう言うアンジュ。
そう言って貰えるとうれしいけど、その表情はお嬢様がしていいものじゃないと思うぞ。
…ていうか。
「なんで三人とも俺の部屋にいるの?」
時刻は午後十時。良い子は寝ている時間だろう。
「ぇえーと、それは…」
「…んー…」
「まぁまぁ、良いではありませんか和様。細かいことは気にしないで♪」
言い淀む二人を尻目に、然り気無く背後から抱きついてくるアンジュ。
「「!!」」
そんなアンジュに目を丸くして反応する二人。
「な、なにをしているアンジュ!」
「…アンジュだけ、ズルい。」
「ふふん!何を言っていますのやら?和様はうちの子です!!だからいいのですわ!」
いつから僕がお前のんちの子になったんだよ。
…あ、書類があった。言い返せないなこれ。
「と、というかお前のいつもの態度はどうした!もっと大人しかったろう!!」
「…その通り。いつもみたいに、窓際ででも微笑んでいるといい」
そういいつつ何でにじり寄ってくるんですかねお二人さん。
というかいつものアンジュってそんななのか。初めて知ったわ。
「人は変わるものですわ!いつまでも大人しいアンジュ様と思わないことですわ!!」
オホホと高笑いするアンジュ。
…変わるにも限度があるんだよなぁ…。
どうせ口にしても無駄なので言わない。めんどいし。
「むむむ!」
「…そんな態度をとるなら…」
二人はそんな事を言いながら更ににじり寄ってきて…遂に左右から抱きつかれた。
「ち、ちょっとお二人とも!なにをなさっているのですか!」
背後から慌てたようにアンジュはそう言うが、それはこっちのセリフだと思うんだ。
僕は力なく天井を見上げ、力なく笑うのだった。
…今夜は眠れそうにないなぁ…いや、ホント…。
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困ったことになりましたわ…!!
予想外の展開に私は歯噛みする。
私と和様の「いちゃいちゃ」してるところを見せて主導権を握ろうと思っていましたのに!!
今や四人で団子状態…。視線の交差点で、バチバチと火花が散ってるのも見える気がしますわ…。
…あぁ…ダメですわ…段々眠くなってきましたわ…。
寝ては…ダメですのに…。
…Zzzz…
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「…僕以外皆寝ちゃったや…」
…どうすればいいの?これ。
続く
出来ればコメント書いて下さると有り難いのです…モチベーションにも繋がったりするのでお願いしたいのです…(>_<)




