幼なじみが男だと思ってたら実は女の子だったってあるよね
「…和。今日は私と過ごす」
時刻は朝の八時頃。ホームルームまでは今しばらく時間がある中で僕は彼女、アイナに拉致されていた。
事の顛末はこうだ。
なに、難しいことではない。
アンジュと一緒に学校に行く
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アンジュが手洗いのため席を立つ
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アイナ後ろから強襲
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屋上へ輸送
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僕の胸に顔を埋めながら無表情に甘えてくる←ィマココ
さて。プチ誘拐されたことは別にいいんだけどそれよりホイホイ誘拐される自分とそれを黙って見ていたアンリは絶対許さない。
僕の世話役(困惑)の実力を見せてほしい所だ。
しかし僕も男だ。こういうふうにべったりされたりすると僕でもやっぱり嬉しい。
表に出すとどう思われるか分からないから絶対出さないけど。
しかき掛け値なしの美少女だ。
美少女だよ?
美少女なんだって!!そこんとこよろしく!!
…ふう。少し興奮してしまった。落ち着こう。
彼女、アイナはアンジュとまた違ったよさがある。
あっちが活発系なら、こっちは小動物系。
こういうのが好きな男子だったらもう垂涎ものの可愛さなんですよわかってくれないかな?
…いかんいかん。落ち着け僕。
一先ず教室に戻らなきゃいけないだろう。そのためには、そう。説得だ。
そうと決まれば実行。早く引き離さなくては。
…別に、惜しくなんてないからな!!
「お、おー…、アイナ、それは嬉しいんだけどさ。もうちょっとでホームルーム始まるじゃないか。もう少ししてからでもいいけど早く戻らなきゃ…」
「…大丈夫。私の行動に口は出させない。」
「いやそうじゃなくて。2日目からサボりはまずいよ。勉強にもついていけなくなるかもしれないし…」
「…それも大丈夫。私が全部手取り足取りあんなことやこんなことまで教えるから。」
なんだと。あんなことからこんなことまで!?
「…いや…でも…やっぱり不味いような…」
「…だめ?」
目を潤ませながら上目使いに僕はーーー
「はい、喜んで」
あっさり陥落した
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その直後。
バァン!!
「こーらあんたたち!!もう授業始まるのになにしてるのよってぎゃあああああああああああああああああ!!!」
屋上に勢いよく入ってくるなり絶叫する少女が一名。
黒髪をポニーテールに纏めた女子だ。
クラスメイトの中に見た覚えはあるが…誰だ?
先程の状態のまま、ずっと僕の服の上からフンスフンスしてるアイナに彼女はズカズカと歩み寄ると、ベリベリベリっと強引に引き剥がした。
「アイナ!!なんてうらやまじゃなくてけしからんことを!!年頃の子がすることじゃないでしょう!?」
「…なんだ、カナデか。邪魔しないで。今、和成分を補給してたところ。欲しがったとしてもあなたには譲らない。さっさと帰って。」
「だ、だだだれもしたいなんて一言だって言ってないじゃない!!それにもう授業始まるって言ってるでしょう!!」
突然の登場に呆然とせざるを得ない僕。
それは、この少女が一体だれか気づいてしまったから。
そう、この子はーーー
「はぁ…全く!アイナはともかく和がしっかりしてよね!そんな簡単に誘惑される様じゃ、本当に心配だわ。」
ずいぶんと前にどこか遠くに引っ越してしまった幼なじみ、南條奏であった。
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「…え、奏。女の子だったの?」
「むしろ和は私のこと男だと思ってたわけ?」




