四日目。~痛みとは物理的な物だけとは限らない~
微かに、頬に柔らかいものが触れた気がする。
微睡みの中、僕は思う。
昨日は、こっちにきて初めて学校に行った。
なんていうか、手際が良すぎる気もするけど、既にアンジュに引き取られた身だ。覚悟はしている。
でも、やはり腑に落ちないこともある。
なぜ、彼女はあんなに好いてくれる。
なぜ、彼女はあんなに尽くしてくれる。
…何か、忘れている?
僕が?
……なら、思い出さなきゃ。
忘れているなら、思い出さなきゃ。
そうじゃなきゃ、彼女に申し訳ない。
そりゃ、僕がこっちに来てからほんの数日しか過ごしていないのに彼女はメチャクチャなことしかしてない。
でも、それほど悪い気はしなかったんだ。
僕は高校に入ってからは独り暮らしで。
家族とは長い休みの時しかあってなくて。
だから、久しぶりだったんだ。
ああいう、賑やかなのが。
楽しいのが。
……ああ。そういえば。
あのキレイな髪、どこかで。
あの瞳、どこかで。
見た気が、する。
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目が覚めたんだけどからだの上に何か乗ってる。
おかしい。昨日は一人で寝たはずなんだけどな。
体に掛けた毛布、それはこんもりと、人一人分くらいの大きさに膨らんでいる。
うーわー…見たくねぇー…
とは言ってもこの、地味に重いのをどかさない限りは起きれない。
「…さて、これをどうしたもんかうひぃっ!?!?!?」
サワサワサワサワサワフンスフンス!!!!
服の中!!中!!ち、直接まさぐられてかがれてー?!?!
「っってなぁにしてくれとんねんアホンジュ!!」
毛布ごとベッドの外に向け放り出す。
もちろん優しくな。優しくだぞ?(ここ重要)
キャッ、とか言って放り出されるお嬢様(色ボケ)
「むぅ!和様ひどいです!いつもならこの三日間、この時間帯ならまだ起きませんのに!」
はいギルティ。確信犯がこいつ。
ってーか。
「…初めてじゃないの?これ。」
「?はい。当たり前じゃないですか!いつもなら寝ながらでも可愛らしい反応がーって、何を言わせようとしているのですの?もうもうっ!」
いやんいやんと体をくねくねさせるアンジュ。
…アンジュさん。今、どうしようもなく君が怖い。
静かに立ち上がり、未だにいやんいやんしてるアンジュを静かに起こし、静かに廊下に押しやり、静かに扉をしめた。
……二度寝しよ。
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「んもぅっ和さまったら!恥ずかしがり屋さんなんだからっ!んもぅっ!」
廊下で毛布と一緒に放り出され、その場でくねくねしている姿をアンリが戦慄しながら見つめていたのは言うまでもないだろうーーー。




