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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
9/75

就職編2/?

「それが何か……僕に関係有ります?」

 するとレミリアが、はぁ、とため息を吐く。咲夜は何か分かったような顔になっていた。とてつもないアウェー感を感じ、居心地が悪い。少年も自らの想像力では分からないので何も言えない。

 「執事になるのはお前よ?何で分かんないの?」

 「はぁ」

 思わず声が漏れる。執事となった自分が想像出来ない、分かりやすく動揺する石橋を見てレミリアが愉しそうにククッと笑う、対照的に咲夜は複雑そうだったが。そんな石橋にレミリアが追い打ちをかける。

 「役職はそうねぇ、取り敢えず執事長で良いか」

 その一言が石橋を更なる混乱に落とし込む。自らが人の上に立てる人間だとは思っていない。現世でも結構変な側の奴に執事になれと言う。本当に意味が分からない、何なんだこの幼女は。

 「だ、誰に仕えるのですか?」

 「勿論この私によ、他に誰がいるの」

 マジか、いくら大人びていても幼女は幼女、子供が嫌いな俺に幼女に支えろと申しますか、と喉元まで本音が出るがギリギリで堪える。拒否したい、それも全力で。しかしレミリアは既に聞く耳を持っていないようだった。

 「あの〜それって拒否権とかあったりしますか?」

 「はっ!有るわけ無いじゃない、これは吸血鬼との契約よ、もっと重大に捉えなさい、それに第一他に居場所も無いお前が仕事も無しにどう生きていくの?」

 想像していたよりも結構まともに言い返される、しかしその中に大分聞き捨てならない事を聞いた。

 「吸血鬼というのは……?」

 「信じないのね」

 「い、いえ、何がですか?」

 「なら身をもって知ると良いわ」

 石橋の直ぐ近くに目視出来ない速度でレミリアが寄って来る、構えようとするが、相手にもならず押し倒され、首に痛みを感じた。見てみると小さく深い傷が付き、出血している。

 「ほら、これで分かったでしょ、味は普通ね」

 レミリアの口元には石橋の物とおぼしき血が付いている。いよいよ本物かも知れない。それにしても様々な異世界で恐れられる吸血鬼をこの目で見れるとは、今現在、恐怖より喜びや歓喜の方が強い。これだけでもどこか報われた気がするから不思議なものだ。

 「執事になるの?、ならないの?」

 「よろしくお願い致します、お嬢様」

 取り敢えず直ぐ思い浮かんだ敬語を使う。こうなるならもう少し真面目に国語の勉強をしておけば良かった。

「よろしい♪、なら咲夜、こいつの育成は頼んだわよ」

 「しかしお嬢様!、こんなのが雑用ならまだしも、形だけとは言え執事長等と……宜しいのですか!?」

 「メイド長としては気になる所だと思うわ、でも一応よ、こいつはモデルケースだし、色々問題が発生するようならその時は切るわよ」

 それを聞いた咲夜がため息を吐く、好き勝手言われているこんなのからすれば結構へこむのだが二人とも気に掛けてはくれない。まぁそもそも期待してはいけないのだろうが。

 「ではお嬢様、何から教えましょう」

 「何でもいいわ、任せる、でもしばらく咲夜は育成に専念なさい、両立しようとして疲労から仕事が疎かになっては困るし」

 咲夜は一瞬何か言いたげな表情を作ったがそれも一瞬だけ、直ぐに元に戻した。

 「承知しました」

高三になって未だ一ヶ月経っていないのだがいきなり内定を貰ってしまった。それも真っ赤な館で吸血鬼の幼女に支える執事の仕事だ。こんな人生設計をしたつもりはなかったのだが……。なんだかんだこれからこの館で仕えていくのだろう、それも場合によっては死ぬまで。

 まぁ現世ではこのまま過ごしていてもニート確定のクズなのだから、救われたようにも感じる。今自分だけが消え去った現世はどうなっているのだろう。いつも通りの日常が続いているのか、それとも一人の少年が影も遺さず雲隠れしたとローカル番組で両親が泣きながら取材に答えているのか。もしそうであってもなんとなく友人達には悲しんでいてもらいたいと思う。せめてこの異世界でしっかり生きていこう、全てこれからなのだ、何もかも。

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