拉致られ編 6/6(終)
──もうどれくらい飛び続けただろうか。右手に掛かる重さは健在であったが生死を確認しようとはしなかった。館に着く事が最優先、その他の事は考えたくも無かった。そのうち館が存在する湖の畔が見えた。それだけで少女は喜びで全身が色めき立ったのを感じた。重さは感じるものの彼は生きているだろうか。そうして少女は自分の居場所に舞い戻る。
「Zzz……はっ、咲夜さん!お帰りなさい」
門番であるチャイナドレスの少女が声を掛けてくる。口元のヨダレ等からいつもの居眠りが分かりきっていたが今は許そう。
「ただいま、来客は無い?美鈴」
「いえ、変わりないです、それより彼は?」
「お嬢様の依頼品よ」
「そうでしたか、ではお勤め頑張って下さいね!」
「言われるまでもないわよ、あなたも居眠りしないように」
「うぅ、気をつけます」
肩を竦める美鈴と会話を交わし門を通る。いつもの事だが今はそれすらも嬉しい。館に入り、真っ先にお嬢様の元へ急ぐ、やはりバルコニーに居るようで、館の中は紅茶の匂いが漂っていた。
咲夜の予想は的中した、いつものように菓子と一緒に紅茶を嗜なまれている。
「失礼します、お嬢様、指定通りの者を連れて来ました」
「こいつがそうなの?」
「はい、現世人の男でございます」
「御苦労さま、咲夜、さっそくだけどその男を空き部屋に連れてってくれないかしら」
「どうなさるのですか?」
「別にどうだって良いじゃない、そいつが起きたら呼んで頂戴」
「かしこまりました」
返事を行い、直ぐに部屋を探す。幸い近くにあったので扉を開け少年をベッドに放る。それにしても暇だ。眠り続ける少年を眺めても暇だし紅茶を淹れられるような場所も無い。眠るのも無理ときた。仕方ない、これも仕事なのだと思い直し、取り敢えず少年の持っていたバッグを漁ることに決めた。
はい、これで拉致られ編終了となります!まだまだ稚拙な文章ですが続きますのでどうかお付き合い下さい!
閲覧有難うございました!