激情編7/?
先生!?どうしてここに?」
「小悪魔に相談されてね、そろそろレミィに持論をぶつけに行こうかなって思ったから」
こんな形で勝負が決するとは!と思ったが水ごときでお嬢様が止まるのか?。
「小癪な……パチェっ!どういう訳よ!?」
「どうもこうも、話し相手が襲われているなら助けないとね」
「あれでお嬢様が止まるのですか?」
「大丈夫、吸血鬼の弱点の一つに流水があるから、羽で吹き飛ばそうにもあのサイズなら羽を広げる事すら出来ないわ」
確かに檻の中のお嬢様は窮屈そうでは有るが……。
「て言うか、咲夜迎えに行くんでしょ?早く行きなさいな」
「えっ?あっ!はい、行ってきますね」
何が何だか良く分からないがこれはチャンスだ、脇目も降らず部屋を飛び出す。
「あんたなんかクビよ!クビだからな!?」
俺を追うような叫び、内容はショッキングなものだったが気に止める気にはならない。意識はもう咲夜さん奪還のみに向けて、能力を使用。そうすればそこは暗闇に包まれた人里の中。
「よしっ!皆ぁ、松明持ったかぁ!行くぞ!」
だがそこは俺の知っている夜の人里とは一風変わっていた、普段なら妖怪の時間である深夜に人が彷徨いていることなんかそうそう無い筈だが、今日ばかりは暖かな火で満ちていた。
「あのぉ……今何やってるんですか?」
そんなにテンションが上がっていなさそうな人を選んで話を聞く。
「え?何って言われても、今から人探しだよ、まぁ銀髪でメイド服なんて見た目らしいしすぐに見つかると思うけど」
ではこの松明を手にしている人は全てクアロの配下、もしくはその手の者達なのか。ざっと数百、数千という数。金の力に目眩がしそうだ。
「おいっ!魔法の森の方で見かけたらしいぞ!」
群衆の中でもテンションが高い甲冑姿の男達はクアロ直属の部下だったりするんだろうか?まぁ何でも良いが助かった、魔法の森と言えばここから北の方角。のっそりと進む人混みから駆け出して、文字通り一歩先んじる、こんな奴らに先を越される訳にはいかないからな。
しかし松明を持った人がいる道は大丈夫でも、段々と人気が無くなるにつれて視界の明度が下がってくる。
「──痛っ……くそぅ、走り難くてしゃあないわ……!」
さっきからつまづいてばかりだ、これでは能力によるブースト込みの最高速は出せない、あまり魔力を使いたくはないのだが……仕方ない。『まるで昼間の様だ』という直喩表現を思い浮かべ、それを自分に付加する。
「これで良いか」
一人呟いて、暗視効果のせいで独特の様相を呈している森を目指して駆ける。この方角からなら森に入ってすぐに香霖堂が見える筈だが──あれか!?。静まり返った夜に溶け込む様にひっそりと香霖堂は存在していた、明かりが付いていないが……多少は勘弁してもらおう。
「夜分遅くすいません!霖之助さんはいらっしゃいますでしょうか?」
少々乱暴にドアを叩けば寝間着姿でいかにも眠そうな店主が現れた。
「どうしたんだい……?こんな時間に、営業はしていないけど?」
「それがですね、咲夜さんをこの辺で見かけませんでしたか?」
「いや、見ていないね、何かあった?」
「あぁ~……いえ、また今度話させていただきます、取り敢えず有難うございました!」
会話を無理やり切り上げ森の奥に。何せ三日間も逃げおおせているのだ、その場しのぎで逃げ回っているのではなく、潜伏していると考えるが妥当だろうな。しかし森は相当広い、端から端までしらみ潰しに探す余裕も無いし、やり方を変えて行こう。使用中の走力ブーストを切って代わりにサーモグラフィーの様に熱を感知可能にする、これなら物陰の生物でさえも色で判別可能だ。
「魔力使いたく無いんだけどなぁ……」
そうしてしばらく捜してはみたものの、ろくな熱源は見つけられなかった。さ迷いながらたどり着いた広場の様な空間で息を吐く。既に全身は疲れに蝕まれ初めているし、魔力にも余裕は無い。もう帰ろうか、そう思ったのは思ったのだがやはり咲夜さんが気がかり過ぎる、またもや感情の板挟みか。気が気じゃ無いぜ──そっと夜空を見上げた。
「ん?あれ何だ?煙?」
不思議な色彩の空を台無しにする様に昇って行く煙が確かに見えた、怪しいな。魔法の森に住んでいる者は当然多くは無い、なんといっても基本的に妖怪達の住み処であり、人が住むにはあまりにも危険だ。しかしそれだけに潜伏先としては優秀である、数少ない住民がこんな時間に火を焚く必要があるとも思えない。そうとくればあの煙は外部からの侵入者である筈だ。
「行くか……!」
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