拉致られ編 4/?
「へぇ、こんなのも居るんだ、結構可愛いじゃんこいつ~」
態度を豹変させ少年は除きこむ。良く見ると頬?らしき部分を赤らめ、顔?が膨らんでいる。あざとい女性が怒った際ふざけて行う動作に似ている気がする、まぁこんなに間近で見た事は無いので信憑性には欠けるが。怒っているのだろうか。そこまで観察すると少年はこのキノコの親族等が居ない事を確認して抱き上げる。触覚もぷにぷにしていて気持ち良い、傘の部分はまた触り心地が異なり面白い。この世界で暮らす事になればこういう化け物等を観察したいなぁと思うが今は余裕がない。少女は何処だ、とキノコを抱えたまま辺りを見回すと見当たらない。まずい事になった、今までの何もかもが無駄になった。悪寒が少年を撫で、時を巻き戻した様に全身に冷や汗が再来する。不安からキノコを抱く腕に力が入り堪えかねたキノコがキュッ、と呻いたとき──
「ねぇ」
少年の背後から声がした。本当に短い一言だがとても美しい声だ、その声に少年を緊張が襲う。更にそれに比例するように冷や汗が増す。焦りまくり前方に大きく跳び空中で振り向く、全くの無駄の無い無駄な動きである。そこで少年は初めて近距離で少女を見た。声の通りにとても美しい。彼女の手に綺麗に収まる銀のナイフのごとき鋭利な美しさ、少女が持てばナイフも武器で無くアクセサリーに見える。声も出ずじろじろと見ていたところにまた音楽的な響きを纏った声が掛かる。
「そのキノコ離した方が良いわよ」
「えっ」
どういった意味か分からぬまま少年の視界に青い粉が舞う、そして少女が歩み寄るのを最期に少年の視界は黒く染まった。