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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
壱章~十六夜咲夜の消失~
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慣れと部下と首切り編3/?


 落ち着いたところに巻物の様な紙が飛んで来た、広げて見るとそれはこの館の地図の様であった。とてもない広さだ、自宅の何十倍なんだろう。

 「今から館内一周するから、地図見ながら覚えていって」

 言うが早いか、執事長は足早に歩いて行く。置いていかれない様にその大きい……と言うより細長い背中を追う。

 館内一周はちょうど二時間で終了した、朝の全力疾走もあったことだしもう足がパンパンだ。

 「次は料理だよ、二人分宜しく、昼食になるから頑張って」

 執事長はキッチンには入らず近くに置かれた一対の椅子の片割れに腰掛け、何処からか出した新聞を広げ始めた。作ってくれる訳では無いのか。

 「作るのは何でもいいですか?」

 カウンター状のテーブル越しに問い掛けるも執事長は新聞に夢中。仕方ない、材料の揃っていたオムレツを手際良く作り上げる、塩と砂糖を間違ったり等のベタなミスは無い筈だ。

 「出来ましたよー?」

 両手のオムレツを目の前に差し出して再度問い掛けるが反応してくれない。何にそんなに夢中になれるのだろう、所詮文々。新聞──大した事の無い真実とド派手な虚構が半々の胡散臭い代物じゃないか。

 「何が書いてあるんですか?」

 「あぁ?金持ちの成功話だよ、チッ、胸くそワリぃ」

 ……あまりの豹変ぶりに言葉が出ない、最初の穏やかな雰囲気は何処へやら。今は言葉使いだけでなく目付きまで悪い、もはや別人の様である。

 「あっ!ごめんね、僕現世生まれなんだけど、向こうでちと病んでてね」

 新聞を畳んだ執事長の心から申し訳なさそうな表情には、新聞の記事一つに殺気を放つ男の面影は跡形も無い。

 「もう出来てたんだ、じゃ、頂きます」

 合図に任せ僕も卵の切れ端を口に運ぶ。味見の時と全く同じ味だ、この特に問題も特徴も無い味は。

 「うん、美味しいね、これじゃ僕なんか直ぐに越されちゃうなぁ」

 執事長は褒めてくれるが、自分はそうは思わない。こんなのレシピ通りに作っただけの物だ。ましてや執事長が僕より料理が出来ない筈がない。

 「いや、絶対執事長が作った方が美味しいですよ」

 「うーん執事長つってもねぇ、勤務十日目なんだよなぁ……俺」

 独り言のつもりでもしっかり聞いてしまった、十日!?十日でこれ!?。

 「本当ですか!?」

 「えっ、聞こえてた?あちゃー、うん、まぁガチですけど……」

 十日でここまで板につくものなのだろうか、会った時はまるでベテランの様な風格だった。しかし控えめに次の説明に進もうとする執事長からはもう微塵も威厳を感じれない。前途多難過ぎる気もするが──まぁ仕方ない。

 「例え十日でもついて行きますよ」

 「有難うね……じゃあ次行こっか」

閲覧有難うございました

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