慣れと部下と首切り編2/?
タイトルぇ……
静かな湖の畔を年の割に幼さが残る少年が全力で駆け抜ける。
──遅刻する、言われていた時間の二十分前には着きたかったのに!。と思いながらまだ覚えきっていない職場への道を急ぐ。何故母親は言った時間に起こしてくれなかったのか、何故夜遅くまで寝なかったのか、後悔は止めどない。
「遅れてたまるかぁ……!」
縺れそうになる足を必死に動かし、更に速度を増す、しかし昨日貰った執事服を汚す訳にもいかないので転けない様に細心の注意を払いながらである。
やがて足も体力も限界が近付いて来た頃には職場である館──紅魔館の特徴的な姿を捉えられた、良し、もう一息──!
「すいませーん、どのような要件でしょうか?」
昨日も来ていた事だし顔パスで通れるものと思っていたが、思い切り門番の美鈴さんに止められる。しかし焦燥は足踏みを止めさせない。
「えっと、執事の癒泉 鈴と言います!今日よりここで働く事になっております!」
「そうでしたか、すいません、とんだ失礼を、通って良いですよ」
開かれた門の前に礼を述べる事すらもどかしく、足踏みから弾かれる様にして館内に急ぐ。そして館内からはうって変わって早足で待ち合わせ場所を目指す、執事長は昨日──二階廊下で待ってるから、と言った。時計を見ればもう五分前だ、急がねば。背中に嫌な汗を滲ませながら階段を一段飛ばしに越える。
角を曲がれば退屈そうに佇む執事服の男が居た、足下に燻るのは……火!?。
「遅れてすいませんでしたっ!」
「いやまだ五分前だし、大丈夫だよ」
男は火に驚いた僕を見て『やっちまった』という感じの顔をした、と思えば火は既に影も形も無い。狐にでも摘ままれた気分だ。
「では改めて、お早うございます、僕が執事長の石橋です」
「お早うございます、新入りの癒泉 鈴と言います、至らぬ身では在りますがどうか宜しくお願い致します!」
九十度に頭を下げても執事長は、硬いなぁ、と言って苦笑するだけだった、その柔和な雰囲気にちょっぴり気分が落ち着く。
「じゃあ早速だけど、これっ」
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