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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
39/75

魔法小話~講釈~

※番外編(小話)です

新年初投稿です!(ほんとは昨日に出したかった……)

非常に会話が多く、いつも以上に読みづらいです……すいません。

「暇だけど何をする気にもならない……」

 昼食を食べて、特にやる事無く迎えた春の昼下がり。軽く気だるく、ぼうっとしているだけでは睡魔の襲撃に甘んじてしまう、現に今だって瞼が重い。

 「では解読途中の魔導書の続きでもしたら如何ですか?」

 こあの提案に飛び付いてしまおうかとも思ったが却下だ、頭が働かない。

 「眠すぎて頭働かない~、それに今のやつは防御系の魔法ばっかりでちっとも面白く無いのよ」

 はぁ、とこあが呆れからのため息を洩らしたのは聞こえた。仕方ないじゃないか、防御系の魔法は同じ様な術式が多い、どうせやっても何処の貢を開けようが同じものに見えてきて、最後は変に目が疲れるだけだ。それに今だったら寝てしまうかも知れない。

 「あ~、今日はもう寝てしまおうかしら」

 机でうつ伏せになり、目を閉じる。そんな睡魔にとって最高の環境を整えてやった──にも関わらず、寝る事はできなかった。

 「先生!お時間宜しいですか!」

 私の弟子が扉を勢い良く開けて飛び込んで来たからだ。

 「何よも~、私今から昼寝するところだったのにぃ~」

 「え~、良いじゃないですか、先生は仕事らしい仕事もしてないですし、それに、昼寝と言うからにはどうせ暇だったんでしょう?」

 何でバレているんだか……変に勘が鋭いな。

 「まぁ、あなたの言うとおり暇してたから良いけど」

 歩み寄って来た石橋と机を挟んで向かい合う、何故か長くなりそうな気がする。

 「ではまず──魔力について教えて下さい」

 「えらく抽象的ね……もう少し具体的にならないの?」

 「ん~、魔力が何を指しているのかと言うか……う~ん、魔力は質の事なのか、量の事なのか──そこですかね」

 分かりづらい上にめっちゃ根本的な事じゃないか、教えてなかったっけ?。

 「魔力自体についてで良いかしら?」

 「お願いします」

 「まず、魔力が何を指しているかについて、あなたは質か量かで迷ってたけれど、答えは両方よ、魔力は一様なものじゃない、持ち主によって様々な違いがあるわ」

 私の発言をしっかりメモに取る石橋、これは単なる知識に分類されていい事だし、実戦において何の役にも立たないのだが……。

 「じゃああれですか?魔力自体にも属性とか有ったりしますか?」

 「勿論有るわよ、人によって得意な魔法が違う原因の一つね」

 「なるほど、うーむ……一つ新たに疑問なのですが、属性とかはともかく質ってどう影響するんですか」

 まぁ有りがちな質問だ。

 「具体例を挙げるとすれば──そうね、仮に術者Aとしましょう、そのAの魔力が滞留し易すい特徴を持ってるとして、火属性の魔法を使うとどうなるか分かる?」

 少しの逡巡を見せるもすぐに答えてくれた。

 「魔力の供給が止まってもしばらくは燃え続ける──とかですか」

 「正解、属性魔法と言っても基本は変質した自らの魔力だからね、魔力の特徴はそのまま魔法に現れるわ」

 「えっ!?なら魔導書にはどんな事が書かれているんです?魔力に個人差が有るなら魔導書に書かれた魔法は再現出来なくないですか?」

 「そりゃあ著者が自分用に書いた魔法を完全再現するのはほぼ無理よ、でも、一般向けに手掛けられた物ならフラットな魔力を使用した際の効果が記されていたりして結構親切だし、そうじゃなくても参考ぐらいにはなるわ」

 あぁ……、と唸って石橋は少し俯いた、こいつの動作の意図は良く分からない。

 「あっ、そう言えば、僕の魔力の属性って何か分かります?」

 「ん?属性?そうね……ちゃんとしたやり方で測ってる訳じゃないからあれなんだけど──あなたは純粋な闇属性だと思うわ」

 それを聞いた石橋は嬉しそうだった。闇属性ってそんなに好かれている印象は無いけどなぁ、やはり変わった奴だ。

 「闇属性──やったぜ、じゃ、気を取り直して次の質問です、付加魔法に属性って有るんですか?」

 「正直一概には言い切れないのだけど、基本的には無いわ、まぁ当然、属性を付けるとかであれば別だけど」

 「では、その肝心な付加魔法のやり方ってどんな感じですか?」

 「発動までの行程としてはこんな感じよ、えー、最初に対象を指定する、次に魔力の変質、属性を付けたい時は付けたい属性に、属性じゃ無い場合は物理的な力に変質させる、最後にそれを好きな形で付ける、これだけよ」

 石橋は大きく頷いているが本当に分かっているのか?まぁ出来なくて困るのは石橋自身だけど……。それにしてもあれだな、眠気が離れていかない。昼寝がしたくなってきた。

 「あー、そう言えば、お手本とか無いんですか?」

 「付加魔法の……私はちょっとパスね、あまり得意じゃ無いもの、それだったらね──適任が居るわ、こあー!?マリアル呼んでくれるー?」

 「了解でーす!」

 幾つかの本棚を隔て、聞き慣れたこあのくぐもった声が届いた。後は任せても良いだろう。あのマリアルが人にものを教えられるとは思えないが……まぁこれも経験って事。

 「お呼びでしょうか……?」

 なんだか久々な気がする、マリアルはいつも図書室の一角に設けられた部屋に籠っていて、案外出会う事が無い。でも常に青ざめている様な顔色とか細く震える喋りは変わっていなかった。

 「あなたは付加魔法が得意でしょう?こいつに付加魔法を教える事になったのだけど、ほら私属性魔法以外は得意じゃ無いじゃん?だけれどあなたは大得意、大体分かった?」

 「む、無理です……嫌、無理無理できる訳無いです……絶対に、私には」

 察しは良いのだけどねぇ……。その自信の無さは治した方が良いだろうし、今回はちょうど良いチャンスだ、初の友人になるかも。それを逃させるのはちょっとねぇ。

 「無理でもやりなさい、それに忘れがちだけどあなたは本来私の使い魔であるのよ?、使い魔が主人に逆らうって言うの?」

 「主人が間違った事をしようとする時、それを正すのも使い魔の役目です……」

 小賢しい言い訳を……!。

 「言い訳は結構!」

 マリアルの頬をおもいっきり引っ張ってやった。

 「痛いですぅ……!やめてぇ……」

 「痛いじゃなくて、"はい"は?」

 「はい……分かりました」

 「分かれば宜しい♪じゃああれが弟子になるから」

 マリアルはようやく石橋に気づいたみたいだ。

 「男……!?尚更無理ですよ……!」

 「どうも、初めまして」

 「あとは任せた、宜しくねー」

 袖を掴んでくるマリアルを振り払って自室に向かう、もう本格的に眠い。

 そして自室に着き次第、ベッドに潜り込んだ。お休みなさーい。

閲覧有難うございました

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