弟子入り編6/?
書き溜め分が無くなったらキャラまとめとか出すかもしれません
紅く輝く魔法陣から放たれる筈の火球は、何時まで経っても姿を見せず、魔法陣からは多少の火の粉が舞うのみであった。脳内の映像と違い過ぎる現実に必死に張りつめた集中が一気に崩れ去るのを感じた。あぁこんなものか、あんなに高ぶっちゃって馬鹿らしいなぁ俺、と心中で密かに自嘲する。
「あれ?思ったより弱いわね、でも大丈夫よ、これから私がしっかり教えるし、そんなに気を落とさないで」
優しく響く励ましの言葉に弱々しく頷く事しか出来ない、それに何故か疲労もピークに達した、イメージして叫んだだけなのに膝が震えてくる──もう限界だ。全身から力を抜いて膝から崩れ落ちる。
石橋がフローリングの様なひんやりした床に沈んだ時にはもう意識は残っていなかった。
「うーん色々とおかしいわね……ちゃんと私の魔力は使いきっている筈なのに何故出なかったのかしら」
念のため魔法陣の方も点検してみるがそれらしい異常は見受けられ無かったし、倒れ伏した石橋からは私の魔力どころか石橋自体の魔力すら察知出来なかった……という事は全部使いきってあれなのか……。才能が無いのか、それともろくにイメージを持たず射ったのか、どちらにせよ随分と手を焼く事になりそうだ、と出来の悪い弟子を思ってうんざりする。でもそもそもあの時の魔法陣はある程度実体の形成を助ける効果があった、なんなら対してイメージせずとも私の射った火球の様な形になる筈。──もしかしたらこいつは魔法陣のアシストを無視するほどのイメージを有していた?そうだったら魔力の増幅も意味を成さない。この魔法陣の処理をどうするか考えながらふと魔法陣を見ると、魔法陣の輝きが徐々に増していた。
「ん……?どうなってるの?まだ時間差で発動するタイプの魔法なんて使えない筈だけど……」
目の前にある非常事態から目が離せない、何が起こっている?。どうにも出来ず只眺めていると、やがて魔法陣からポンッ、といった効果音が似合う手のひらサイズの火球が放たれ、魔法陣はひっそりと溶けていった。
「何……あれ?」
呆然とする私を尻目に火球はふらふらと宙を浮いている、火球を形成している魔力は紛れも無い私の魔力でおかしな部分は存在しない。しかし長年の経験や魔女としての勘が火球に潜む異常を感じ取っていた。きっと火球はこのままではいない、そうは思うもののどうすれば良いのか判断しかねる。
ジリジリとした空気感の中、先に動いたのは火球の方であった。一瞬動きを止めたかと思うと一息に人間大の大きさとなった。そして噴火を思わせる轟音を轟かせ十メートル近くある天井を焦がす勢いで超巨大な火柱を噴き上げた。
さしもの私もこんな展開は想像出来ずあっさりと思考が止まる、やっとの事で驚きの叫びを上げた時には火柱が減衰し始めていた。
「ええー!?、何なのよあれ!!聞いて無いわよ!?」
「パチェー!?、何なのよ今の!?侵入者?」
さっきの轟音を聞いたのか、レミィが大急ぎで飛び込んで来る。その傍には咲夜の姿もあった、きっと紅茶でも飲んでいたんだろう、咲夜は銀のトレイを持ったままだった。
「いや侵入者では無いのだけど、ええと……、まぁ説明は後で!取り敢えずそいつ運んでくれるかしら」
「かしこまりました」
咲夜が石橋を担ぎ、姿を消す。これで一応安心だろう、ああは言ったが火球に大量の魔力を注ぎ込めば充分な威力を持った攻撃になる、しかも媒体が私の魔力であるため気付きにくい、敵の仕業であれば私はともかく無防備な石橋はひとたまりもなかっただろう。違うとは思うがやはり敵の仕業でもないと説明が付かない、どう説明したものだろうか。
「何固まっているのよ」
「な、何でも無いわ、ほらあいつの部屋行きましょ!」
レミィの追及から逃れる為に足早に消えた咲夜を追う、恐らく石橋の部屋だろう。部屋の場所は分からないが咲夜の魔力を辿れば良い。そう思ってしばらく早めのペースを維持し歩いていたが、私の持病はそれを許してはくれなかった様で、息も絶え絶えとなった上に盛大な咳に見舞われる。動くのがいきなり過ぎたか……。
「本当に何やってんのよ……、しょうがないわね、ほら背負ってあげるから、行きましょ」
「……」
「その程度で喋れないとは──あなた喘息酷くなってない?」
私より小さいのにレミィは私を抱えても顔色一つ変えずに軽やかな足取りで進む、不甲斐ないなぁ、私。
「……ごめんね、レミィ」
「今度身体強化の魔法でも作ったら?」
「そうね、あまり得意では無いけどやってみようかしら」
「その方が良いわよ、百聞は──って言うし本ばっかりじゃねぇ」
レミィはけらけらと笑う、吸血鬼だとは思えない天使の様な笑顔。あぁ久しぶりに見た、異変時には見られなかった笑み、思えばこっちに来てから何年経ったけな。本気で幻想郷を手中に収めようと企んだあの頃が少しだけ懐かしい。あれから比べれば私達は随分丸くなった、得体の知れない執事長が就任したり、悪魔の犬に──本人は嫌がっていたが番候補が出来た。まぁ一番は午前五時位に起きて午後十一時半には寝るようになった夜の帝王か。
「ほら、着いたわよ」
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