弟子入り編4/?
「はぁー!やっと終わった!廊下長過ぎやろぉ……」
石橋は独り言と共に一つ大きく伸びをする。
一階から二階まで全ての廊下の清掃に終止符を打ってやった!。まぁあくまでも任された仕事だけだが。もう良いだろう、結構頑張ったぞ。さて時間が余った、どうしようか。買い物に出るも良いが俺は人里以外のスポットを知らない。現在午後三時、往来を考えれば人里に出るには夕食の時間を考えると少々時間が足りない。それにきっとお嬢様方なら位置の把握位簡単に出来るはずだから、また何か仕事が残っていた時に買い物などしていては対応出来なくなる。館内に待機するのが安全か。
そう考えこんでいたらふと思い出した、昨日の夜にパチュリーから魔法を教えると約束というか取引をしていた。確か準備はしておくから仕事が落ち着いたら来てくれ、との事だった筈だ。
「行ってみるか……」
ひっそりと一人ごちてそそくさと図書室に向かう、正直なところ雑務より魔法の特訓の方がやりたい。廊下をしばらく足早に急ぎ、たどり着いた大扉を控え目に開け、滑り込む。
「失礼しまーす……」
室内は読書に必要な最低限の光源しか確保されておらず、紅魔館の特徴である過剰なまでの赤系統の装飾も鳴りを潜めており、それが独特な雰囲気を醸し出している。今もそうなのだが俺は元々学校の中でも飛び抜けた陰キャであり、友人が居ない時は誰も居ない教室で一人読書に明け暮れていた。そんな陰キャの精神がこの場所に共鳴して俺は初めて来た時からこの場所の少々カビ臭い感じと、薄暗さを気に入っていた。もしかしたらここを作ったパチュリーにも陰キャの疑いが有るが──まぁどっちにしろ今度から暇になったら入り浸ろうとは思う。
パチュリーを探して俺の何倍もあろうかという巨大な本棚の横をすり抜けて奥をめざす、何故魔法使いの書斎は度を越えて大きいのだろう、なんか有名な魔法使いの映画でもそうだった気がする──っと物思いに耽っている内に図書室の中心に到着する、しかしパチュリーのデスクにはパチュリーの姿は無かった。
「マジかよ……、奥行き的に結構広いだろここ……、骨折れんなぁ」
本棚と明かりのせいで視界が悪い、探しだすのは慣れない俺には酷だ、そう思い狼狽えて回りを見渡す。そしてそんな俺に掛かる声が一つ。
「あら?案外遅かったわね、此処よ此処」
近くの本棚の隙間からのっそりとパチュリーが姿を表す、その側には見覚えの無い悪魔チックな少女が控えている。
「パチュリー様、こいつなんですか?新しい弟子って奴は」
「えぇこいつで合ってるわ、姉弟子として気にしてやってね」
「えぇと、この方は……?」
「私はパチュリー様の使い魔兼一番弟子の小悪魔ですっ!気軽にこあ、って呼んで下さいね」
パチュリーの横の少女がふんぞりながら答える、悪魔と言う割にはやたらと明るい気がする、コスプレか?。
「そうですか……宜しくお願いしますね」
「はいはい、じゃあ講義といきましょうか」
俺と小悪魔を置いて自分のデスクに向かうパチュリー、その素っ気ない態度が気になるがあれ程の魔法が使える人だ、講義の内容は心配無いだろう。そう思いながら後をつける。
椅子に腰掛けたパチュリーは三冊の本を取り出してデスク上に並べた。何が始まるのか気になりそっと覗きこむ。
「この本は魔法の入門書的な奴よ、上中下有るから全部読んどいてね、こあは複合魔法の製作の続きをやって」
いきなりの手抜き具合に頷きすら忘れてしまう。最初の講義がこんなんで良いのか、と思うが読まない限り進まないと思い直し表紙を捲る。目次と思われるページには一面の現世では一切見たことが無い謎の文字、現世にも複雑な言語は有るが、英語さえ不安の残る俺でも何がどの言語で書かれたものか程度は一応判別は付く。しかしこの文字列はそれすら出来ない。おそらく三冊とも同じ言語で書かれている筈だ、詰んでないか?これ。
「パチュリー様……読めないんですけど……どうすれば良いですか」
「えっ、あぁそうだった昔の魔女の文献だったわね、そりゃ読めないわ……しょうがない、私が直接教えますかー」
いかにも不承不承といった体でため息を吐くパチュリー、こちとら魔法の習得の為に来ているのであって訳の分からない言語の勉強の為に来ている訳では無い、それぐらいの対応は望んでも良いだろう。まぁそもそも魔導書を読む替わりに新魔法の実験台になるなんて割りに合わないとは思っていた。
「じゃあ、えーと先ず魔女と言っても私が専門としているのは火や水等の属性を伴う精霊魔法だから、あの怪しげな薬とか、祈りで誰々に呪いを掛けたりといった古典的な鍵鼻の魔女からイメージ出来る事はやらないわよ、そっちは専門外、それが知りたいなら他をあたって」
急に勢いを増したパチュリーに少々気圧されながら返事を返す。意外と喋るんだなぁ、まぁ俺もあまり人の事は言えないが。
「えー魔法にも種類があるのは分かるわよね?」
「はい、それぞれ魔力の使い方、もしくは働きかける物が違うんですよね」
これを聞いて面食らった様子のパチュリーだが直ぐに元に戻る、現世人相手とはいえこれくらいは想定内なんだろう。
「まぁそうね、それぞれ魔力の消耗量、必要とされる性質等の色んな要素が変わってくるわ、例を挙げれば……そうね、精霊に詠唱や魔方陣で働きかける『精霊魔法』他にも召喚した者に力を借りる『召喚魔法』物等に力を与える『付加魔法』……まぁ挙げていけばキリが無い位有るわ」
「なるほど……、僕でも使えそうな魔法って有ります?」
「あなたは魔力の量が非常に少ないし……使えても付加辺りかしら、それも恐らく一種類が限度でしょうね」
俺が使いたいのはファンタジーものでよく見かけられる火球等を一声で出現させるド派手な攻撃魔法だ、共闘する仲間も居ないのに補助魔法とは……少々地味が過ぎる。
「うーん……詠唱型の属性魔法とかいけませんか?」
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