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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
28/75

弟子入り編3/?

「その適当な時間って言うのはこういう時間の事?」

 門番さんの首筋に銀色の輝きが添えられる、俺の首筋と全身がひんやりしている理由は眼前に有るのだろう。無論犯人は一人しかいない。

 「「メ、メイド長……!」」

 俺と門番の呻きがシンクロする。見上げたメイド長の笑みはしばらく忘れられそうに無い。

 「初日からサボりとは、やってくれるわね?」

 「あっ!?、え?、あっ!すいませんでしたぁ!」

 「私が誘ったのがいけないんです!彼がサボろうとした訳じゃ……」

 「まだ二人とも仕事残ってるでしょう?話すのはそれをこなした後でも良いんじゃない?」

 その静かな殺意に思わず、ヒエッ、と声が漏れる。その鬼気迫る言葉は門番のさっきまでの元気おも霧散させる。もはや成す術も無く、ただ涙目で狼狽えるのみである。

 「あんた、まだ居たの?バスケット持って早く行きなさい」

 目線だけでも何人か殺せるだろう、何かが色々内包された殺意がダイレクトに刺さる。あの手合わせの際もあんな目はしていなかった。怖すぎる。土下座の一つでもお目にかけたくなったが今すべきはメイド長の指示に基づききっちり働く事のみ。この場を門番一人に任せるのは多少申し訳ない。でもきっとその怒りを、付き合いの長そうな門番なら受け流せる……筈。

 「すいません、後頼みました!」

 そう言い残し館に逃げ込む、勿論振りかえる必要は無い。そしてすぐさま階段を上り二階へ、置きっぱにしていた箒を拾う。残りの部分もさっさとやらなければ。誰かに見られている気がして落ち着かず、密かに窓を覗いて見ると二人は未だに会話を交わしていた。

 「しっかり置いて行きましたね……」

 「そういう問題でも無いでしょ」

 二人のため息は同時に吐き出される。そういえば咲夜さんがあんなに怒っているのは久々に見た気がする。私が仕事をサボっているのは正直日常茶飯事だ、とすれば彼か。

 「ねぇ咲夜さん、今回はやけに新入りを気に掛けますね、気に入りました?」

 咲夜さんは俯いたまま答えようとしなかった、これもまた珍しい。彼が来た事によって咲夜さんは、あるいは紅魔館は変わろうとしているのかもしれない。

 しかし咲夜さんは何を気にしているのか、考えを巡らせるも上手くいかない。人間の執事が増える事による妖精メイド達の失業?、メイド長の指導を直接受けた彼女らの繊細な技術を男が超えられるとは思わないし第一、お嬢様がそんな事をしたがらない。じゃあ咲夜さんは彼を恋愛対象に見てたり……は絶対に無いか。咲夜さんに限ってそんな事が有り得るものか、有ったらさぞかし新聞のネタになりそうだ。考えるとつい頬が緩む、ちょっと見てみたいかも。

 「何でにやけてんのよ」

 「いやぁ、珍しいなぁ、と思いまして」

 「何が?」

 「調子狂ってないですか?」

 「あなたのせいね」

 「酷いですよぉ……彼のせいじゃ──」

 「さっきから奴の事ばかりね、何が言いたいの?」

 さっきまでの笑みを消え去った咲夜さんの目には冷たい苛立ちが据わっていた。彼に執着する理由が知りたかったのだが、もうそんな悠長な事も言ってられそうもない。

 「……お喋りが過ぎました、仕事に戻ります」

 「えぇ、今日はもうサボるんじゃないわよ」

 痛い目には合いたく無いのでそそくさと仕事に逃げる。こうすれば咲夜さんは下手に追及してこない、これは経験から知っているのだ。今度手合わせする時にでも彼に教えておこう──

閲覧有難うございました

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