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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
26/75

弟子入り編1/?

まずい……そろそろ書き溜め分が尽きてしまう──!

視界が燈に染まる。

 「……眩しいなぁ」

 きらびやかな直射日光は朝嫌いには凶器のようだ。未だに慣れない部屋を眺めるとカーテンが開けっぱだった。今日の用事は……何も無いな。普通に仕事するか。

 「……飯どうすんだっけ?」

 石橋は寝癖を軽く直し目を擦り、廊下に出る。夜更かしをしていた訳でも無いのだが激しく眠い。五度寝位出来たらなぁ、と寝ぼけた執事長は食堂を目指す。そして、その食堂では今、レミリア達がお食事の真っ最中であった。

 「お早う、あなたの分も有るわよ」

 指定された席は咲夜さんの隣。

 「頂きます」

 挨拶を忘れず、パンに手を伸ばす。フワッとした食感が堪らない、安定の美味しさだ。毎朝こんな物を食べれるのか、パン派には嬉しい限りだ。それにしても幻想郷に来てからは旨い物しか食べていないな。

 夢中で目の前に有った三個のパンを平らげる。他にも料理は有るが、別にいいか。

 「ご馳走さまでした」

 皿を片手に席を立つ。それにしてもどうしたものか、一言で仕事と言っても初日に教えられた内容の内、何から手を付けて良いのか分からずにその場を彷徨く。

 「咲夜さん、仕事って何からしたら良いですか?」

 「掃除でもやってて」

 素っ気なく返される、まぁそれも仕方ない。せいぜい中学の時に叩き込まれたスキルをお見せしよう、俺の居た中学は清掃への力の入れ方が尋常ではなかった。それこそ並みの高校なぞ比べ物にもならないと思う、二年前、入学当初はその事に大変拍子抜けし、不思議な安堵に包まれたものだ──と倉庫までの道すがらに軽い懐古に浸る。さて、ここではどうだろうか?。

 そして倉庫から幾つかの道具を物色して来た道を戻り、軽く緊張しながら初清掃のターゲット一階の廊下に元にたどり着く。

 「やる必要あんのかこれ……」

 赤い廊下には目立つ様な埃は見受けられず困る、まぁそれでもやるに越した事はなかろう。倦怠感を追い出すために箒を強く握り、一息吐く。しかし

 「侵入者……?」

 物陰からの視線が気になる、呟きまでしっかり聞こえて来るのだが。僅かにヘッドトレスが確認できるためメイドではありそうだ。咲夜さんからもお嬢様からもそんな事一切聞かされてないのだが……、まぁこのまま仕事はやりずらい。

 「すいません、この館のメイドの方でしょうか?」

 一声掛けてみるが、先方も予想していなかったのだろう。ビクッとして更に深く隠れてしまう。どうすれば良いのだ……この何とも言えない気まずい空気感。もし仕事を取ってしまっているのならちょっと面倒だし、なんとか手を打たねば。

 「侵入者ですか……?」

 「侵入者じゃ無いんですけどねぇ……」

 こちらもぼそっと呟いてみる、するとおどおどと少女が出てきた。背に生えた羽が忙しなく動いている、あの虫っぽい羽は妖精か?。

 「侵入者じゃないなら何ですか?、こんな時間に来客なんてあんまり無いのに……」

 どうやら俺の事は伝わって無いようで、初対面の者とは毎回こんなやり取りをする羽目になるのか、と考えると少しうんざりする。

 「この館の執事ですよ、そういう格好でしょう」

 「あっ!、本当だ」

 「この辺りの担当なんですか?」

 「いや、そうじゃないけど、館で執事を見たこと無かったから」

 本当に全然伝わって無いな、同じ従業員の事位教えて欲しいものだ。業務に支障が出るだろうが。石橋が館の情報伝達状況にムカついていると妖精メイドはふらっとどこかに行ってしまった。まぁ、今は仕事だ。

 先ずは床。廊下はとてつもない長さが有るが、石橋は無心で掃いて行く。埃やゴミが見えない故に気休め程度の効果しかないのだが。そうしてある程度全域を掃けたら一旦箒を置き、濡らした布と交代させる、次は窓だ。幸い高さも、大きさもさほどでもないので背伸び無しにハイペースで拭いていく。但し数はそこそこ有るし日が出ている今、外の眩しさとの勝負になる、薄暗い館との明度の差がきつい。

 この床と窓拭きのループをひたすら繰り返していく──、一体どれだけの広さが有るのか。地図を一瞥するだけでは測れなかった館の広さに石橋は戸惑い、思考を停止させ、時には呟きながら業務をなんだかんだ、淡々とこなしていった。

 そして日差しがにわかに強くなった頃、石橋は一階部分の廊下は全て磨き終え、二階に取り掛かっていた。そして執事長の元を、日が頂きに達する頃にメイド長が訪れた。

閲覧有難うございました

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