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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
25/75

忙しき日々編13/13(終)

遂に25部目です!と言ってもまだまだ続いて行きますが

「あぁ~、疲れんなこれ」

 そう独りごちて適当な席に座る。本当に疲れた、まさか宴会に来て二時間の肉体労働任務が待っていたとは、昼の買い出しなんてまだ楽な部類だったのか。

 「お疲れ、結構勤勉ね」

 「まだまだですけどね」

 ねぎらいを口にしたパチュリーは俺の隣に座る、何かしらを含んだ笑みが目につく。

 「ねぇ、突然で悪いんだけど取引しない?」

 「取引?」

 ずいぶん突拍子も無い事を言い出すもんだ。

 「なぁに簡単な事よ、自由に使える人間の男って貴重なの、だから新魔法のモルモットに……」

 「いや……お断りします、一応未だ死にたくは無いですし」

 「まぁまぁ、最後まで聞きなさい、はっきり言って今のあなたでは咲夜には釣り合わないの」

 仕事終わりの達成感から一気にげんなりする、そんな事は百も承知の事実であり今更確認する必要も無い事だ。

 「そりゃそうですよ、咲夜さんって完璧じゃないですか」

 「見た目も戦闘技能もね、それに比べてあなたは多分この会場の者の中で最弱よ」

 「はぁ……」

 話がなかなか見えてこない。

 「そこで先天的な魔女である私が魔法を教えてあげよう、と思ってる訳よ、どう?」

 先天的な魔女。職業としての魔女ではなく種族としての魔女!そうとくれば相当なレアケースではないか?。ファンタジーものなら一族固有の強力な魔法が使えたり他とは比べ物にならない魔力を持ってたりする、パチュリーもそうであるなら教えには期待しても良いかもな。それにしても魔法かぁ、相棒に魔法って似合わないんだよな。それでも魔法はファンタジーの代名詞、憧れは深い。それにモルモットと言っても実験に失敗して未知の力を手に入れる展開は相当ベターだ、能力が使えるようになったり、変身出来るようになったり。まぁ人間で無くなったりするかも知れないが……とにかく戦闘力は高まる、乗るしかないなこの取引。

 「是非お願いします!」

 「じゃあ明日から仕事が済んだら来て頂戴、準備は整えとくから」

 うんうん、これはまた明日からの生活も忙しくなりそうだなぁ、とワクワクしていると休憩の許可が出た。

 「要件はそれだけだから、レミィが帰ろうとするまで好きに飲んでていいわよ」

 生返事を返し、身動きを止める。身動きを止めるのは考え事に移行する際のルーティーンだ、久々に行った。何から考えようか、ネタなら沢山ある。独りでちびちび絶品料理をつまむには、俺的には最高のシチュエーションだ。しかし、いよいよ本格的に妄想に浸かりかけた石橋に声が掛かる。

 「お疲れ様でした、料理の味の方はどうですか?」

 「ああ、お疲れさまでした、料理はとても美味しいですよ」

 それは良かった、と妖夢が胸を撫で下ろす。幻想郷の少女の中で初めて見た目と態度が正比例している人を見た。皆こんな感じなら可愛らしいのに。

 「あれ?、妖夢さん飲んでいかないんですか?」

 「私の主が帰るので、本当はもう少し居たいのですけど、その……、夜道って怖いじゃないですか……」

 そう言った妖夢は耳まで真っ赤だ、恥ずかしいのか?。年頃の少女だったらそれが普通だと思うのだが……。まぁ霊夢のあの説教の後に一般的な事を言ってもな。

 「そうですか……、次は一緒に飲みましょうね!、どうかお気をつけて」

 照れくさそうにはにかむ妖夢。良い人だなぁ、ついついナンパ紛いの事を口走ってしまってしまう。

 「妖夢~まだぁ?」

 遠くではあの大食いの女性が妖夢を呼ぶ。なるほど、あれが主人なのなら調理も速くなる筈だ。府に落ちた。

 「はい!、直ぐ行きます!、それではまた、さようならー」

 妖夢は走り去って行ってしまった、ああいう女性を大和撫子というのだろう。何と言うか、そう、清らかだったな。背に差した二振りの刀には非常に気になる所があったが、幻想郷は物騒なのだろう。

 妖夢の作ったと思われる地鶏の様な何かの肉を一つパクつく、塩加減が丁度良く、それが食欲を増進させる。これだけでも非常に美味しいがこれをつまみに酒を呑めればきっと最高だろうなぁと思う。昔から両親のおつまみを横取りしておやつにしていたけど酒との相性まで考えさせられたのは初だ。それだけ妖夢のスキルがよほど料理人として高みにあるのか、和食が作りたくなったときには是非とも指導を頼みたいものだ。まぁ、洋食がメインの館じゃそんな事有るわけ無さそうだな、と長々とした脳内講評を終えると咲夜さんが向かって来る。

 「何食べてんの、もう帰るわよ」

 「お嬢様は?」

 「待ってらっしゃるわ」

 地鶏みたいなのを食ってる場合ではない、今日お嬢様を待たせるのは今回で二回目。洒落にならない。

 「ご馳走さまでしたっ!」

 美味なご馳走と華やかな少女達から目を背け、会場を飛び出す。そして二時間前に歩いた階段を跳ぶ様にして駆け降りる。足元が疑わしい状態でいきなりの階段ダッシュはきつい。

 「遅いわよ~」

 うっすらと輝く魔方陣の上でお嬢様とパチュリー先生が手を振っている。呑気にも手を振り反そうとしたが、咲夜さんからの無言の咎めを浴びる。

 「お待たせしました」

 「じゃあ帰るわよ」

 パチュリー先生の高速詠唱が始まり、魔方陣の輝きが増す。格好良いんだよなぁ、これ。なるだけ早く覚えたいものだ。そうして徐々に魔方陣が回転し始める。そんな光の向こうで誰か手を振っている。あの古めかしい魔女風の帽子は確か──魔理沙か。

 「また来いよー」

 「言われなくてもね」

 魔理沙からのお見送りにお嬢様が静かに返す。聞こえて無さそうだが本人達は笑みを浮かべている、こんな距離感もまた、良さげなものだ。

 こうして華々しい会場を輝く光のトンネルにより引き返す、その先には新たな日常が待っている筈だ──。

閲覧有難うございました!

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