忙しき日々編11/?
キリの良い所までやっちゃったら少々長くなってしまいました……一応ご注意下さい。
『7/22追記』
一部修正を加えました。
「うわぁ……!、すげえなこれ!」
こんな移動手段があるとは、なんで人里に行くときに教えてくれなかったのだ。と光に包まれながら思う。これさえ有れば時間に遅れる事も無かったのではないか、怒られた方からすると少し恨めしい。お嬢様ももう少し親切にしてくれてもバチは当たらないと思うのだが。今までの二日間でも色んな事を隠されて来た、まぁ、それに値するだけの信用が無いだけかもしれないけど。
じっと考えているとちょっとずつ光が収まってきた、もう到着か。
やがて優しげな朱色の斜光を受けた石階段が目の前に現れ、見上げるとこれまた見事な朱塗りの鳥居が。こんな世界でも神社はしっかりと神社であった。それにしても光の中から急に夕闇の中というのは少しばかし目に優しく無いな、目を擦りながらお嬢様達に続く。あぁ、騒ぎ声が聞こえて来る。宴会と言うだけあって賑やかだ、黄色い声しか聞こえないのが気になるが。そして階段を登りきると巫女っぽい少女が待っていた。
「遅かったわね、レミリア」
「新入りのせいよ」
お嬢様と巫女は随分親しげな様子だ。悪魔の一種である吸血鬼と巫女が親しげに話している。巫女って日本の聖職じゃなかったっけ。
「新入りって?」
「そこの冴えない男よ」
巫女が新入りが男だということに驚く。やはり紅魔館は男が働く場所ではないのか。
「魔力も霊力も、なんなら気配すらろくに感じないんだけど、本当にこいつ?」
「お嬢様、この方は……?」
「博霊霊夢よ、私の友人で博霊の巫女」
ふーん、お嬢様と友人関係にある、という事は実力者なんだろう、慎重に言葉を選ばねばな。
「新入りの石橋と申します」
気を付けて言葉を選ぼうとしても結局同じ様な台詞になってしまう、語彙の少なさが露呈しているが誰の機嫌も損ねなければ別に良い。
「へぇ、宜しく、会場は向こうだから、汚さないでよ」
厄介払いの様に手をひらめかせ案内してくれる。霊夢の言動はぶっきらぼうだがどこか優しげだった。
「ありがと、後で一緒に飲みましょ」
お嬢様が一声掛け、奥に向かう。取り敢えず付いて行くが、さっきの一声が頭の隅に引っ掛かる。飲むって言ったか!?、宴会で飲むと言ったら──酒だ、お嬢様なんかどう見ても成人していないのに飲むのか!?。ちらっと振り向いて見るが霊夢だって成人している様に見えない。まだまだこの世界には馴染めそうに無いなぁ。
そうやって唐突なアウェー感を感じていると、神社の縁側からモノクロの魔女みたいな格好の少女が近寄って来る。さっきの巫女といい、羽の生えた幼女にメイド、しまいには魔女と、まるでコスプレイベントの様だな。
「おぉー、レミリアじゃないかー、遅かったなぁー」
えらく喋り方がおかしい、手に持っているのは酒ビンだ。
「酒臭いわよ魔理沙、後距離が近い!」
酒の匂いがすると思ったら、この魔理沙という少女から匂っているのか。見た感じこいつも俺より歳上には見えないし、おそらく成人していないだろう、なんで飲んでんだ。しかも酔ってるし。
「んー?、そこの男はあれかな、誰かの彼氏さんかな!?」
「だー!違うわよ!、うちの新入りよ、新入り!」
お嬢様がむきになって大声を上げると、それに気付いた様々な少女達が出て来た。角が生えてたり、エルフ耳だったり、目の色や髪の色まで違う、まるで統一感が無い。それに何故か全員がもれなく少女だ。そんな少女達はぞろぞろとお嬢様を囲み始めた、質問攻めに囲まれ、お嬢様は大変そうである。
「こいつが新入り……男だけど弱そうだねぇ」
その少女達に紛れ、張本人の割に蚊帳の外に佇んでいる俺の足下にチルノ位のチビッ子が近寄って来て、ため息を吐いている。その頭には昔話の鬼の様な双角。しかしながら気になるのは魔理沙を遥かに越えるアルコールの匂い。まさかこんなチビッ子ですら飲んでいるのか!?。これは一応、ほぼ成人として正してやらねば、いかに常識はずれな異世界でも未成年者の常習的な飲酒なんて、法に生きる現世人として見過ごしてはいけない気がする。
「こんばんはー、お嬢ちゃん、その瓢箪に入ってるのってさ、お酒?」
早合点で無いことを先に確認しておく。
「これかい?、そうだね、酒ならいくらでも出るよ」
「いくらでも?、おかしい部分はあるにしても、その瓢箪に酒が入っているという事で間違え無いのか……?」
「何独り言言ってるんだい?気味悪いねぇ」
「あぁ、うん、ごめん、えーとまだお嬢ちゃんには難しい話だと思うけど、法律って知ってる?」
「法律?」
やっぱ知らないか、説明は苦手だが頑張って教えよう。それも大人の責任だろうし。
「うん、法律、国の偉い人が決めたルールみたいなやつ」
「人のルールぅ?」
どう見ても胡散臭いと思っていそうな顔だが分かってはいる……のか?。まぁ要点はこの次だ、テンポ良く行こう。
「そうそう、で、そのルールの中に大人に成らないとお酒は呑んじゃ駄目っていうルールが有るんだ、分かる?」
「ほう?、それは私は酒を呑むなって事かい?」
「まぁ、一言で言えばそうだね、お酒は危ないんだよ、体が駄目になったり、うまく成長出来なくなっちゃったりするんだ」
「……」
黙ってしまった、まぁ時間がかかっても良い。問題は、ちゃんと理解してくれたか、それと酒の危険性に気付き酒を断ってくれるかどうかに有る。
「……へっ、まだこの私にそんな事言って来る奴が居たとは……、やっぱり地上は、人間は、面白いねぇ」
「石橋っ!、逃げなさいっ!」
包囲網の中から高笑いするチビッ子を見たと思われるお嬢様から叫びが届く、何故だ?。相手はチビッ子だぞ?。まさか本当に鬼な訳でも無いだろうし、チルノの様なガッツ有るチビッ子なんてそうそう居ない。それに少々言葉使いが大人びていたとしても飲酒は駄目なのだ、説教の一つでも垂れてやらなければこの子の為にならん。
「ふんっ、長ったるい説教の礼として良い事を教えてやるよ!、この世界にそんな面倒なもんは存在しないのさ!」
法律が存在しない!?、どういう事だ。
「おまけに私の名前も教えといてやる!、私の名前は伊吹萃香、山の四天王の一角さ!、覚えときなぁっ!」
名乗ったと同時に萃香の姿が揺らいで消える。どこに行った!?
「おりゃあ!」
「うおわっ!」
萃香は消えたのでは無かった。多分動きが速すぎて俺には視覚出来なかっただけだろう。今、目線のちょっと先ではお嬢様が萃香の拳を受け止めている。拳を止めたのに少し遅れて二人の手元を中心に拳圧で風が発生する。
「流石に吸血鬼、強いねぇ」
「痛っ、やっぱあんたみたいな鬼との力比べは御免だわ」
お互いがお互いを認め、笑っている。それだけ見ると青春のようだが、笑い合っているのはどちらも年端もいかぬ幼女だ。この世界のこういう部分には全然慣れないなぁ、違和感凄い。そうして手持ち部沙汰で突っ立っておろおろする俺の元に霊夢がすっ飛んで来た。
「あんたねぇ!、殺す気!?、それに神社壊れたらどうすんのよ!」
霊夢が怒りのままに萃香をひょい、と持ち上げる。持ち上げられるも、萃香はにへらっとした笑みを浮かべたままだ。
「ごめんよ霊夢~、こいつ面白くてさー、ほら、このとーり、笑って許して!」
萃香が謝って手を合わせて見せる、それを霊夢が呆れながらも許す。良い関係だな。そう思って少しほのぼのとしていたが、霊夢は俺の事も忘れていなかった。
「あんたもあんたよ!、この阿呆!、何でこんなんに喧嘩売ろうと思えるのよ!、レミリアが止めて無かったらあんた生きて無いわよ、それと幻想郷じゃ見た目で強さは計れないのを肝に命じなさい!まったく!」
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