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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
22/75

忙しき日々編10/?

「遅い!」

 ついつい叫んでしまう。まさかこの私が待たされる羽目になるとは、咲夜は何をやっているんだ。

 「もっ、申し訳ございません!」

 新入りの執事長の謝罪は意にも貸さない、こいつだけならばまだ分かるのだ。しかし何故私のメイド長が付いておいてこの体たらくなのだ?。

 「僕が友人と会って、そのときちょうど話が弾んで、帰り道の事を忘れてしまいまして……」

 「お前の言い訳はもう良いわよ!、私が聞きたいのは、咲夜、あなたは何をしていたの?」

 咲夜は答えない、まぁ大方事情は分かるがこっちにだって事情が有るのだ。

 「……楽しそうなこいつを見ていたら止め損ないました、申し訳ありません」

 「あなたには五時から神社に向かうって伝えてたわよね?、今はもう五時半よ!」

 「申し訳ございません、早急に支度を済ませます」

 はぁ、ちょっと甘いのではないか?、腑抜けを育てられては困る。これが続くようなら一度ガツンと言う必要が有るかもしれない、朱に交われば赤くなる。咲夜まで腑抜けてしまえばそれはもう終わりだ。

 そんなこんなで怒りを態度に表し、しかめっ面で待つこと五分。

 「お待たせしました!」

 石橋が部屋に飛び込み、咲夜がそれに続く。良し、やっと出発出来る。不定期で開催されるこの宴会は幻想郷での最大級の娯楽だと思う、何と言っても思う存分酒が飲める日なのだ。常日頃は酒を控えている奴も、普段は上司にうだつが上がらない奴も今宵は無礼講。飾らない本音で語る事が出来る。

 「すみません……行きましょう」

 どの口が言ってるんだという気持ちも残ってはいるが……まぁ良いだろう、これ以上小言は必要無さそうだ。しかし大事な事を忘れている気がする──あっ!石橋は普段着のままだ。

 「執事服やったでしょ!?、あれ着なさいよ、お前を紅魔館の執事として紹介するって言ったじゃないっ!」

 「はいっ、着替えてきます!」

 そんな事で素敵なパーティーに遅れてしまうなんて淑女としては絶対避けたい事なのに。そう思うがそう思ったときには石橋はビシッと決まった執事服を来ていた。咲夜の仕業だろう、流石メイド長──仕事が早い。

 これで準備バッチリだ、図書室に向かおう。速足で玄関から逆方向に急ぐ。

 「えっ、こっち玄関じゃなくないですか?」

 私の考えを理解しきれない新人が疑問を投げ掛けてくるがそんなの知らぬ存ぜぬ、とばかりに無視を決め込む、どうせついてくる以外の選択肢も在るまい。

 気付くと目の前にあった重厚な扉に手を掛け、一息に開け放つ。

 「パチェー、呼びに来たわよー!」

 「叫ばなくても分かっているわよ、転送魔法で行くんでしょ」

 最初は歩いて行こうとも考えていたが、宴前に疲れたく無いし何より時間が無い。そうと決まればこういう時に頼る相手は一人だけ。

 「神社前まで頼んだわよ」

 「こんな魔法で失敗しないわよ」

 私の軽口にニヤリとして応え、パチェは高速で魔方陣を床に映す。この際に詠唱もやっているらしいが何を言っているのか全然理解出来ない。パチェが魔法を使う度に聞き取りに挑戦しているが何度やっても駄目だ。そうこうしている内に魔方陣が作動し、魔方陣が光を放つ。

 「それじゃあ、行くわよ」

 パチェの合図で魔方陣の光がより一層強まる、さぁ、楽しい時間の始まりだ。今日は飲むぞー!

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