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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
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忙しき日々編9/?

「イブキングじゃん!、何で居んの!?」

 「ん?、あぁ凛穏か、久しぶりやな!、というか懐かしいなそれ」

 同じバドミントン部のエース、伊吹であった。こいつの俺だけの呼び名はバド部の暴力装置。だから今やっている事自体には大した衝撃は無い。それよりさっきから投げられ続けているチビッ子が心配だ。伊吹は基本的に女子供にも容赦の無い好戦的な質で、力は同体格の間では最強クラス、チビッ子に耐えられるものではない。勿論非力な俺にはどうすることも出来ず、みるみるうちにチビッ子に傷が増えていく。そうだ、咲夜さんなら、と思って振り返るが咲夜はおろおろする少女と喋っている。

 「咲夜さん止めてくださいよ!、あれ死にますよ!」

 「そうね」

 咲夜さんが一言呟くと一瞬意識がとんだ。

 「両成敗!」

 気付くと咲夜さんの姿は二人の間へ移動しており、二人の頭を持って畳に押し付けていた。あれは痛いだろうなぁ。

 「いってぇなぁ、何すんだよ!」

 「そうよ!、サイキョーのあたいのじゃましないで!」

 額を赤く染めて二人は叫ぶ。

 「何の騒ぎだ!、もう昼休みは終わりだぞ!」

 それを聞いた青髪の女性が怒鳴り込んで来る。これは言っている事的に教師っぽいな。

 「げっ、けーね!」

 女性の登場にチビッ子が青ざめる、あんなにやんちゃでもやはり教師は怖いのか。

 「なんで伊吹を巻き込んで暴れていたんだ!」

 「昼ごはんの後に教室の後ろで強そうに突っ立ってたから、サイキョーのあたいの前でチョーシにのるな、って言ってケンカ売ったの!」

 その自信はどこから沸いてくるんだ、普通に考えて小学校低学年位の子が喧嘩売る相手じゃ無いだろうに。と蚊帳の外からであるが話を聞いていると

 「チルノが男に負ける所初めて見たなー」

 「まったく……、無鉄砲過ぎるよチルノちゃん、心配だなぁ」

 傍から、黒のワンピースのチビッ子と珍しい緑髮のチビッ子が語る。あいつはチルノというのか、素晴らしいガッツの持ち主だ。そして当のチルノはというと少し目を離した隙に頭に大きなたんこぶを拵え泣きながら机に向かされている。これはこっぴどくやられたな。

 「というかお前何で嬉しそうなんだよ……、全然反省してないだろ……」

 「そんな事言われましてもねぇ、生きの良い玩具が突っ掛かってくるんでねぇ」

 大事な事を指摘してみるがおふざけモードに入っているらしくおちょくった顔とオーバーなリアクションで返される。こいつはそういう奴だった。

 「まぁ、これぐらいの力だから痛くないだろ」

 伊吹に軽く手を掴まれる、辛うじて掴んでいる程度の力、これでどうやって投げてたんだ。

 「うん、で本当は?」

 言った次の瞬間には半笑いの伊吹が力を込める。すると手が軋んでいるような鈍い痛みが押し寄せる。手が取れそうだ。

 「分かった!分かったから!、離せ、手ぇもげる!」

 「へっ、これでも手加減してんだぜ」

 伊吹は愉快そうだ。その様は異世界でもまったく変わり無い、中一のときの休み時間を思い出す。よくこうして過ごしてたっけな。

 「あっ、そうそう、君、名前は?」

 伊吹から逃れ、懐かしんでいたら教師に聞かれた。

 「紅魔館の執事になった石橋です」

 「ほう、紅魔館にか、凄いな君は!」

 大きく驚かれるが気付いたらなっていた、という感じなのでいまいちぴんとこない、そんなに凄いのか?。まぁ普通の人間からしたら吸血鬼なんて恐怖の象徴みたいなものか。

 「伊吹とは知り合いか?」

 「現世で同じ部活やってる友達です」

 教師はさっきから驚きっぱなしだ。だが急にキリッとしたと思ったら

 「まぁ何でも良いけど私は授業に戻るから、もう暴れないでくれよ」

 と言い残し、さっさと行ってしまった。忙しいのは分かるが名前位は聞かせて欲しかった。

 「そういえばお前行く宛てあんの?、必死に頼めば館デカイし一人位だったら……」

 「俺は妹紅さんの家に泊まる事になってっから」

 「妹紅さんって?」

 そこで伊吹が左側を顎で指す。すると咲夜さんと話していた少女が手を挙げ、教えてくれる。

 「おれが妹紅だ、よろしくな」

 「あんなふつつか者ですが、宜しく御願いします、暴力装置なんで気ぃ付けて下さいね!」

 努めて明るく、嫌味無く言おうとしたが逆効果だったようだ。言った傍から苦笑する妹紅さんをしり目に伊吹の膝が脇腹に刺さる。もう痛いのは分かってるんだよ……。

 「こんなんなんで!、本当に気を付けて!」

 体を張った忠告をするが駄目だ。膝の一撃で倒れ込んだ俺の背に伊吹の足が勢いを増して落ちてくる。一発毎に激痛が走りうどんが出そうになる。

 「もっ、もうやめろマジでー!うどん出る!、うどん出るからぁー!」

 まだ若かりし、と言っても数年前の事なのだが。あの頃を強烈に、存分に思い出した昼下がりであった

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