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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
19/75

忙しき日々編7/?

「足いってぇ……、結構掛かるなー、人里」

 人里からちょっと外れた道で、先に幻想郷に来ていた少年が愚痴る。これからの買い出しはいつだって疲れそうだ、これは早く徒歩以外の移動法を見つけねば。そうは思うものの咲夜さんは一切疲れた様子を見せない、どうやら原因は自らの運動不足らしいと石橋が気付いた所で人里にたどり着いた。

 「ここが人里よ、生活に必要な物は大体揃うわ」

 さっそく咲夜さんの解説を聞く、良く聞いておこう。解説が終わると直ぐに、咲夜が先を行く。またもや慌てて追いかけた石橋が見たものは江戸情緒に溢れる活気の有る町だった。通りを桶を担いだ男が走り、侍が集団で歩く、歴史好きとしてはとても上がる光景だ。しかしたまにコスプレのような変な奴もいる、以外と現世寄りの場所なんだろうか。

 「咲夜さん、何であんなん居るんですか?」

 「あなたのように現世や他の世界から来た住民よ、幻想郷は全てを受け入れるの」

 答えを聞き、そうだったらこのカオスにも説明が付くな、と思うが元々の幻想郷の住民はよく受け入れられたものだとも思う。すぐそこでもセーラー服のマッチョと和風の格好の女が楽しそうに話している。どんな漫画の世界より断然不思議な世界だ、事実は小説よりも奇なりと言った所か。

 「朝ごはん食べて無いでしょ?、そろそろ何か食べない?」

 人里の奇抜な住民を観察する石橋を遮り咲夜が提案する、気付けば妥当な時間だった。まぁ腹は空いていないが。

 「そこのうどん屋でどうですか?、デザートも有るみたいだし」

 石橋の指先は渋みを湛えた看板を掲げる店に向けられた。いかにも老舗っぽい佇まいだ。

 「あそこって決して安くないのだけど……、まぁ歓迎会ってことで、良いか」

 咲夜さんは値段をしきりに気にしている。従者の食事程度で傾く経済事情なら館の維持が出来る筈も無いと思うのだが……。

 「いらっしゃい!」

 暖簾をくぐると店主と店主の威勢の良い挨拶が飛ぶ。店内には若者からお年寄り、人間から化け物まで、様々な客で一杯であった。どうやら俺のチョイスは間違えていなかったようだ。とても繁盛している。自らのセンスを誉めていると、やがて店員により奥の座席に案内される、あと一席しか空いていなかったらしい。危なかった、自分の歓迎会で並ぶのはちょっと勘弁というものだ。

 「何にしますか?」

 座った直後に店員からついでとばかりに注文を聞かれる。うーん、ちょっと早くないか。

 「何にする?」

 咲夜からも急かされる、もうメニューを適当に眺め、目を引いた適当な物に決める。そんなに急かさなくても良いじゃないか。

 「きつねうどんと食後に抹茶団子を一つ」

 「じゃあ私もそれで」

 咲夜も速攻で決める、それ俺がやりたかった奴。

 かしこまりましたー、と言い店員が早足で去る、これだけ繁盛していれば仕事も忙しいだろう。あっ、そういえばお嬢様から封筒を貰っていたのだった、バッグの中で開ければ気付かれ無いだろう。バッグを開け、封の外れた封筒を覗く。今度は本当にあっ、と声が漏れて、咲夜さんの目線を手元に感じる。その中身は紙幣が二枚、合計一万五千円が封筒に包まれていた。なんで咲夜さんに秘密なのかは全然分からないが意図は分かる、これで必要な物を買い揃えろ、ってことだろう、ずいぶんと太っ腹だな。まぁ現世と通貨が同じなのが分かった今、金が無い訳ではないが。後で色んな店を覗いてみようか。

 「お待たせいたしました、きつねうどんで御座います」

 店員が二つまとめて持ってくる。うどんからは良い形の湯気が出ており、そこからして食欲を誘う。なかなかに美味しそうだ、俺が現世で食べてきたうどんを越えられるだろうか。割り箸を割って手をつける。うん、現世のものより断然旨い。現世ではインスタントやファミレスで食べる事が多かったとしても、それらとは段違いの旨さ、これが本物の味か。値段だって安くはなくとも日本の観光地価格よりは安い。今度からうどんはここで食べようか、と思う位には旨く箸が止まりそうにない。

 しかし、気まずい。咲夜は美味しいとも、うんとも寸とも言わない。自分だって口には出さないタイプなので気持ちは分かるがせめて気を使って欲しい。仕方ない、何か話題が欲しいしあれを出すしか無いようだ。

 「あのー、咲夜さん?……」

 「何?」

 煩わしそうに咲夜がうどんから目を上げる、一応反応が有り安心する。だがそれに続く言葉が出て来ない、頑張れ俺。言う気が勇気になるのだ、と学校でも言っていただろう。

 「これは……、嫌なら答えなくても良いんですけど……、その〜」

 「だから、何?」

 怖い、気分を損ねてしまうのも、嫌われるのも。でも言っておかねばきっともやもやするだろう。覚悟して喉から声を捻り出す。いたって普通に聞こえる様に装って。

 「クアロと抱き合うとき──顔死んでましたよね?、あれ何でですか?」

 「!!」

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