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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
序章~幻想入り~
17/75

忙しき日々編5/?

だんだんと話数も増えてきたのですが……普通にまとめて出した方が読みやすいんですかねぇ……。ちょっと掴みそこねてますねーその辺。

傷付いた石橋を出迎えたのはベッドに放られたスーツだった。

 「なんじゃこれ……」

 とりあえず試しに触ってみる、生地は全然分からないがとても繊細な触覚だ。

 「オーダーメイドなのよこれ、大事にね」

 いつから居たのか、お嬢様が囁いてくる。まじか、出来るなら仕舞って置きたい。と貧乏性が顔を出す。

 「幾らかかったんですか……これ」

 お嬢様は答えない、含み笑いを浮かべるのみである。そんな事をされると無性に気になる。そもそも仕事中以外着る事あるのかこれ。

 「ちょっと着てみてよ、採寸あってるか気になるし」

 促されるがやっぱりもったいない気がして思い止まる、すると小突かれた。着るしかないのか。こんな物着たこと無いぞ、とぶつぶつ言いながらお嬢様の前から下がる。幸い現世のスーツと着方は変わらず、思ったよりスムーズに着ることが出来るが、ネクタイに苦戦する。学生の身分ではあまり着ける事が無かった物だからなぁ、なんか新鮮。

 「まだー?」

 「はいっ、今行きます」

 催促が飛んで来る。これからの日々もこれくらい慌ただしいのだろうか、現世ではもはや日課に成っていた自問自答も鳴りを潜めている。たったこれだけを考える間にも早くー、と聞こえ、急ぐ。お嬢様はやっぱりせっかちなのかもしれない。

 「思ったより良いじゃない、やっぱり馬子にも衣装とは良く言ったものね」

 お嬢様の感想は誉めているのか貶しているのか分からない。

 「あっ、傷はどう?、もう痛くないでしょ」

 何故か自慢気に聞いてくる。別にお嬢様が治した訳じゃないでしょう、と思うが一応服の上から触ってみる、確かに痛みは無くなっている。次いで服をずらし包帯を取る。

 「えっ、傷が無い!?」

 跡形も無い。まるで時を巻き戻したかの様に皮膚は元に治っている。まさか本当に魔法が使えるのか。

 「魔法よ、パチェは正真正銘の魔女なの、治癒は専門外だって言ってたけど流石ね」

 お嬢様は俺の思考を読んだ様に正確に教えてくれる。そういう能力なのだろうか。しかしじっくり考える時間は無さそうだ。直ぐに呼び声が聞こえて、にわかに焦りだす。

 「準備できた?、出るわよ」

 もうそんな時間だったのか。急いで仕事着を脱ぎ、元の服を着る。ナイフで穴が出来ているが気にせずに着る、バッグも忘れずに背負う、準備は万端だ。しかし部屋から出ようとすると呼び止められた。

 「ちょっと待って!、これ持ってって、咲夜には内緒よ」

 お嬢様から封筒を受け取る。封を外すと、ここで開けないで!、と制される。中身さえ探れない正体不明な物を持ち歩きたく無いが仕方ない、封筒をバッグに収め、扉を開く。

 「待たせてすいませんでした」

 待っていた咲夜さんはいつものメイド服では無かった。灰色のパーカーに黒く長いスカート、そして茶色のブーツ。とても似合っている、春にしては地味目にも思えるがそれが咲夜さんの美しさを際立たせているんじゃなかろうか。また見とれてしまいそうになるが、焦点をずらし床を眺めることで回避する。

 「じゃあ、行ってらっしゃい」

 床を凝視する石橋を押し退け、お嬢様が退室する。行きましょ、と咲夜から言われるが今更ながら、これが二人きりの外出な事にまで気が回る。大変だ!、絶世の美女クラスの咲夜さんとスタイルが悪くその上、顔も中の中位の俺が隣を歩くのか。現世なら写メられてTwitter等に『今年一番の美女と野獣カップル見つけたはwwwww』って感じで投稿されても文句が言えないだろう。全然釣り合えていない。

 「何やってるの?、早く行かないと、後で宴会有るんだから」

 美女が緊張で固まる石橋の袖を引っ張る、動作がいちいち絵に成る人だ。それで我に帰る。リードされっぱなしじゃ男が廃る、と考えかけるがそもそもこれは咲夜さんに案内されるだけだ。奴の言っていたデートなんかでは無い。そう気付くと緊張していたさっきの自分を殴りたくなってきた、彼女居ない歴=年齢、な男の悲しい勘違いだったようだ。そうと決まれば歩き出すだけだ、この世界を少しでも知るために。 

「あっ、そういえば、どうやってどこに行くんですか?」

お嬢様にも咲夜さんにも聞き忘れていた、だいぶ大事なことなのだが。

 「徒歩で人里に行くわよ、買い出しとかでも良く行くし」

 徒歩だった、魔法か何かで飛びたかったなぁ、と愚痴を溢す前に咲夜さんは春の日差しに照らされながら歩き出す。その速度は早く、何かを振り切ろうとしている様にも見れた。少なくともあんな光景を見た俺の目にはその様に映る。咲夜さんは途中で振り返って、早くーと呼び掛けてくるが、その優しげな苦笑にさえどこか痛々しさを覚える。あわ良くば話を聞きたい、少しでも咲夜さんの役に立ちたい、と珍しくまともな事を考えながら、早足で華奢なその背に続いた。

一方その頃、人里の寺小屋では。

閲覧有難うございました。

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