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元殺し屋の異世界転移  作者: 南無
第一章 異世界で最初の仲間は災厄の魔物でした
17/19

冒険者試験 ~想定外の来客~

森に入ったのが昼頃だったが現在は日も傾いた夕方だ

魔獣の縄張りを避けて進んでいるためか地図を確認すると森の半分も進んでいない

ナッシュともその件について話し明日は少し急いで移動することにして今日はキャンプをすることになった

夜に動くのは魔獣の活動時間に引っかかるので避けた方がいいらしい


「では僕たちでキャンプの準備をしてくるのでタルバルと一緒に周辺の調査と警戒をお願いします」


魔獣の生息する森でのキャンプなんて初めてなホムラはナッシュの指示に従いタルバルと共に周辺の安全確認を行う

基本的にはトバリ頼りだが仕方ないだろう


「ホ、ホムラさんは一人で旅をしていたって言っていたけれど、ど、どんな場所に行っていたんですか」


タルバルは話すのが苦手なのか少々どもりながらそんな事を聞いてきた

世間話のつもりなのだろうが一番されたら困る質問だった、実際のところホムラは旅なんてしていない


「ああ、まあ。街には寄り付かない性質でな。ずっと森とかで過ごしてた」

『それはもう旅人というより修練者じゃな』


トバリが茶々を入れるがホムラはタルバルの返答にしか気にかけていなかった

数秒の沈黙が降り、返答を間違えたかとホムラが思った瞬間タルバルは目を輝かせながら一気に顔を上げた


「ぼ、僕もそんな生活が夢なんですっ! ほ、ホムラさんの話聞きたいです」

「その前にここいらの警戒してからな」

「あ……そうですね。す、すいません」


上手い具合に話題を逸らし本来の目的へタルバルを誘導することに成功したホムラは安堵の息を吐いた

タルバルは長いヒモをバックから取り出しキャンプを囲むよう木に縛っていく

ヒモを張り終えると最後の部分をキャンプ近くに置いた木の棒に括り付ける

どうやらヒモに足を引っかけた奴がいれば棒が倒れてすぐに反応出来るようにしたらしい

ホムラはその作業の間の見張りをしていたが特にこれと言った問題は無くキャンプの設営作業はスムーズに行えた


キャンプの準備が終わった頃には日も完全に沈み森には静寂と暗闇が訪れていた

道中で捕まえた兎を焼き、支給品のうちの一つである硬いパンが今日の夕食だ

兎が捕れていなかったら今日の食卓はパンだけだったと思うと兎を捕まえてくれたニッシュに頭が上がらない


「ニッシュの投げナイフ凄かったな。動いている兎に当てるとは思わなかった」

「はは、ニッシュが投げナイフが得意なのは僕が絶望的に下手くそだからなんですよ」

「このチームには弓使いが居ないから狩りをする人が必要だった。最初は兄さんがやるって言ってたけど全然ダメだったから練習した」


ニッシュがボソっと兄の欠点を呟くがナッシュのリーダーとしての資質はニッシュには無いだろう

今までニッシュが喋ったのは挨拶とコレだけだ、無口なのかシャイなのかは分からないが兄程の社交性は無い

お互いがお互いの足りない部分を補い合っている良い兄弟とはトバリの談だが言われてみればそうだとホムラは口に含んだ水でパンをほぐしながら二人を眺める


「ホムラさんはどれくらい強いの?」


脈絡なく明るい声が掛けられた、メリアだ

彼女は目をキラキラさせながらホムラを眺めている、この前の様に周りが口を塞がないのはホムラとの距離を近く感じているのが半分さらに好奇心が半分といった所だろう

ホムラはトバリに目線を向けるがトバリはニヤリと笑ったまま何も答えない、どうやらこの状況を楽しむつもりらしい


「どんくらいって言われても基準が分かんないからなー」


いつもの様にうやむやにして煙にまこうとしたその時ヒモに繋がれていた木の棒が倒れた

それに真っ先にタルバルが反応して立ち上がり遅れて他の三人も立ち上がり各々の武器を取り出す

ホムラは座ったまま辺りの暗闇に包まれた木々の隙間を見つめる


鳴子などが付いていない簡易的な仕掛けだったため接近してきた相手の位置が分からない

そもそも襲われるような場所ではないためナッシュ達は予想外の事に困惑している

すると森の奥から唸り声が響いてきた、犬が上げる声ではなく人に近い声だ


全員の視線が音のする方向へ注がれるがソコになにが居るかは分からない

ナッシュが一番よく燃えている薪を掴んでその方向へ投げた

オレンジ色に揺らめく炎に一瞬だが唸り声の正体が浮かび上がった


「オーガッ!?」


ナッシュが静かに正体を告げた

ゴリラの様なボサボサの毛に覆われた体にずんぐりとした肥満型の体躯、しかし脂肪の下にはしっかりとした筋肉が付いているのが分かるほどの軽い足取り、極めつけは頭部に短い角が二本。ギラギラとした目線をホムラ達へと注いでいる

ホムラはオーガの危険度を知らないが他三人の様子からしてかなり厄介な相手と判断し立ち上がる

暗闇からオーガが一体現れたかと思うと一体、また一体と合計七体のオーガにホムラ達は囲まれた


「ホムラさんどうしますか?」


囁くようにナッシュが目線はオーガに向けたまま声をかけてくる


「全員で逃げられる状況じゃねーからなアレ全部殺すしか手は無いだろ」

「相手はオーガですよ? 僕たち四人で二体の相手しかできません、残りの五体の相手をホムラさんは出来るんですかっ!?」


ナッシュが語尾を強くして聞いてくるがその言葉に反応したのはオーガの方だった一番前に居たオーガがナッシュ目がけて持っている棍棒を振り上げながら走り込んできたのだ

メリアが小さな悲鳴を上げてニッシュが剣を抜き始めタルバルは目を見開いている

そんな状況の中ホムラは既に走り出していた


「トバリ、ちょっと引っ込んでてくれ」

『ならば一体一体は黒騎士よりは弱いとだけ言っておこうかのう』


トバリが消えた瞬間ホムラはナッシュの前に飛び出し棍棒を掴む

オーガは自分よりはるかに貧弱な相手に渾身の振り下ろしを止められたことが理解できないのか固まったまま不思議そうに棍棒を掴むホムラの手を見ている


「〝一体一体は”か………数の多さでひっくり返されなきゃいいが」

「嘘……だろ…」


ナッシュが素の口調で棍棒を受け止めたホムラに驚愕し先ほどまでの棍棒の勢いで出来た風に押される形で尻餅をつく


「二匹相手するんだろ早くしろ、残りは俺がやる。そっちが早く片付いたら手伝え」


ホムラは口早にそう告げて棍棒を手放しオーガの腹部に蹴りを入れる

しかし分厚い脂肪と筋肉によって蹴り抜いた感触が全くない

一応、鳩尾を蹴ったせいかオーガは腹をさすりながら後ろへ下がり他のオーガへ何やら話しかけている


すると周りのオーガの視線が一斉にホムラへ集まる、どうやら一人で勝てない相手は集団で襲う程度の知能はあるようだ

ナッシュはオーガの視線が自分たちから外れた事を知ると体勢を立て直しチームメンバーにホムラからの言葉を伝える


「ホムラさんが五体の相手をしてくれるからその間になるべく早く二体を倒して援護に入ろう。ホムラさんがいれば勝てる戦いだ!」

「大丈夫だよ兄さん、棍棒を受け止めた時点で僕たちの生き残る方法はホムラさんを頼るしかないから」

「ぼ、僕も頑張る」

「ホムラさんってすっごくすっごーーーく強かったんだね!」


ナッシュはニッシュの答えに冷静さを取り戻しタルバルに勇気をもらいメリアの言葉に希望を見出した


「うん、勝って生き残ろう!」


ホムラはその言葉を背中越しに聞き二体は任せてもよさそうだと正面のオーガ達へ意識を集中する

七体いるオーガの内、正面に三体、左右に一体ずつ残りはじりじりとホムラ達の周りを進んで背後に回っている

本来囲まれたら不利なのだが今回のホムラ達の作戦からしたら好都合と言えるだろう

ナッシュが準備は出来たとホムラの背中に自身の背中を合わせた


「俺が意地でも食い止める、だから後ろの二体だけに集中しろ。最悪逃げて構わねぇから死ぬな」

「分かりました、なるべく早く倒すので踏ん張ってください」


一言多い予想外の返答にホムラは背後を確認しようとするが言い切るとナッシュ達は背後のオーガへと走り出してしまった

正面のオーガ達はナッシュ達が予想外の行動に出たことで浮足立っている

知能の低さによって予想外の事態に瞬時に対応できない事が分かった瞬間ホムラも動いた


「打撃がダメなら刃物だよなッ!」


腰に下げていた支給品のナイフの抜き放ち左に居たオーガ急接近する

さらなる事態の変化に周りのオーガは反応できず、当事者たる左側に陣取っていたオーガはただいきなり近づいてきたホムラに対して棍棒を振り回すだけだ

黒騎士に比べて愚鈍なその動きにホムラは体を逸らすだけで対応し大きく振り抜いたところで懐に潜りこむ


大きく前にかがむ体勢になっていたオーガの突き出した顔にある二つの眼球を一閃

ナイフを真一文字に振り抜き両目を潰す


「オオオオオオオオオオオオオォォォォォッッッ!!!」


棍棒を捨てて両手て顔面を抑えて後ろに後ずさるオーガだがその無様な姿を見届ける事無くホムラは次の行動へ移っていた

反転し右側に居たオーガを捉えて走る



すぐに距離は詰められ先のオーガと同じ手法をとろうとするがやはり最低限の知能はあるようで殴りかかる事は無く棍棒を横に構えて防御の姿勢をとった

この行動の変化にホムラは小さく舌打ちをして防御と再生魔法を解き肉体強化に魔力を全て回す

黒騎士とのタックル合戦を行った時と同様のパワーで棍棒を構えたオーガの腕を掴む


メキメキィと耳に悪い音を響かせながら腕を握りつぶすと棍棒が地面へ見た目通りの重鈍な音を上げて落下した

落ちた棍棒に足を潰されホムラに腕を潰されたオーガは目を潰されたオーガ以上の叫び声を上げて後ろに下がろうとして転んだ


片足が潰れたのでコイツは当分問題ないと判断して正面のオーガに視線を向ける

この間およそ十五秒前後、考える一秒はオーガにとって三秒と言われる彼らにホムラの行動は早すぎた

残り三体、しかしこの三体が厄介だ


今までの二体は孤立していたが戦闘自体の反応速度はオーガは早かった

これをまとまった三体に対して行えば一体は無力化できても残りにやられる

防御魔法のお蔭で死にはしないだろうがあの巨体それも二体に抑え込まれれば危険だ

その間に一時的に無力化したオーガ達がナッシュ達を襲うかホムラに群がるだろう


此処からは無力化した二体を助けられないようにナッシュ達の援護を待つことになる

目下の目標は足と腕を潰したオーガの目を潰すことだ

しかし学習能力が多少ある奴等がもう一度二体目に手を出させてくれるかは分からない


『数が足りない』


この前アルマドフの依頼を断った時にも出てきた言葉が頭をよぎる

背後では派手な音が鳴り響きオーガの雄叫びが聞こえるが振り向くことはできない

残りの三体を食い止めながら左右の二体の復帰を阻止してナッシュ達を待つ


「数も足りない上に遠距離武器もない弓とか投げナイフなんて出来るわけないだろ銃ねぇのか銃」


遠距離武器の尊さと元の世界の便利な道具にラブコールを上げながらホムラは残りのオーガ達へ一歩踏み出した



蜂に刺されて入院して、退院したらポケモンと仕事で時間がありませんでした……

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