光闇に生きる調整者~3~
薄暗い屋敷の中。
先日は、綺麗に飾り付けられ、シャンデリアに光が灯されていた大広間も今は、暗く沈黙に包まれている。
照らすのは、大きな窓から入る月の光のみ。
広いその部屋の中央に、俺は一人立っていた。
「もうすぐ、人が大勢死ぬ」
人間にヒントは与えてやった。
誰が犯人なのか?
あとは、人間達の技量次第。
どこまで上手く出来るのか、見物だ。
あの、“傘の魔女”相手に人が勝てるのか?
「……無理だろうな」
人程度の魔術では、あの最古の魔女には勝てないだろう。
もとから、結果の分かっていた勝負だ。
だが、それでもーー。
「俺は一つの可能性に賭けたんだよ」
振り返ると、そこにはロビショメンが立っている。
相変わらずの無愛想な顔。
「なぁ、ロビショメン。お前はどう思う?」
彼に問うた。
「どう……とは?」
ああ。そうだろう。
お前には分からないだろうな。
「人と神が争ったら、勝つのはどちらなんだろうな?」
窓の向こうで輝く月。
手を伸ばしたところで、届きはしない。
神ならば、そこに手が届くのだろうかーー?
「それは、勿論神でしょう。……人は弱い」
ロビショメンが言うのは正論だ。
神に勝てる者などいない。
だがーー。
「俺は賭けてみたい。……人が神に勝つ可能性にな」
月にだって手が届くと哭いてみたい。
「……俺に可能性を見せてくれよ。ミヒャエル」
お前ならきっと、この理不尽な世界を変えてくれるんじゃないかって俺はーー。
「……馬鹿な期待だな」
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