砂漠に住む魔物~2~
左の肩にかかる重みと、左の手の上に置かれた冷たい体温。
「お腹が空いたわ」
そう呟く彼女の顔は病的なまでに白かった。
灼熱の太陽の下ではその白さがいっそ不気味に思えるほどに。
腰まで伸びた漆黒の髪が、その白さをより一層引き立てていた。
彼女の白さは生まれつきだ。
彼女は決して日焼けをしない。
冷たい手が俺の左手を握った。
「……お腹が空いたわ」
もう一度そう言った彼女。
俺にはどうしてやることも出来ない。
俺はただ、黙って彼女の手を握り返した。
そうすることしか、俺には出来なかったーー。
* * * * *
砂漠の夜は冷える。
岩の影にもたれ掛かり、丸くなりながら目を閉じる。
すると、漠然とした不安に襲われる。
何に対して不安を抱いているのかさえ分からない。
それなのに、不安で不安で堪らない。
胸をかきむしりたいほどの不安に、俺は寝付けなかった。
あと少し、あと少しだ。
ここまで、俺はよく待った。確証は手にいれたも同然。間違いなんてないはずだ。
だから、あとは実行するだけ。
もう少しなんだ。
何もかも順調に進んでいる。
どうして、こんなにも不安なのか自分でも分からない。
畏れているのか? 何を? 天罰か?
くだらない。
神なんて所詮人が生み出した妄想だ。
大丈夫。全て順調。問題は一つもない。
全て上手くいくさ。
己にそう言い聞かせ、俺は無理矢理眠りについた。
誤字脱字があればお願いいたします。