54話
「クッ!! 闇渡り! 父と母の恨み!」
カルトは青いタペストリーがかかった壁を走る。スバリスから教わった呪文だ。カルトは右手に闇を集約し駆けて跳んだ。闇食いを発動させた右手を突き出して。
ナリスもそれに応戦するように左手に闇食いを発呪させカルトに突っ込む。二つの闇食いが重なる。ナリスの方が僅かに迅速だ。勝者はナリスかーー。
「グハッ! カルト強くなったわね……クッ」
「な、なぜ呪文を途中で解除した!?」
カルトの右腕はナリスの心臓を貫いていた。彼女から鮮血がだくだくと流れている。このままいけば出血死はまぬがれない。
「……カルト……私のカルト。両親は殺すつもりはなかった……でも父と母は経済的な理由から一家心中を……グッ!……はかろうとしていた……」
ナリスは元から赤い石で出来た床に血を滴らせながら両膝を地についた。するとカルトの手が抜ける。痛みから彼女は美しい顔をしかめていた。
「嘘をつくな! お前は犯罪者で……父と母をあやめたんだ! 自殺なんて作り話だ!!」
「カルト………あなたを守りたかったの私のたった一人の大切な弟……クフッ! ……父と母は本気であなたと私を巻き込んで……ググッ。カルト……姉なのに何もしてあげられなくてごめんね……ウッウウ!」




