4話
アグマはゾッとするような笑みを零し
「そんなに死にたいなら……屠ってやろう!」
重心をやや前にし疾駆するアグマ。彼からはまがまがしい気配が発散されていた。それに対抗する為にクラトはあれ放題の金髪を靡かせ剣を下段に構えながら駆け出した。そして魔腕を発動させる。
魔腕とは筋肉を増強し力を上げる技だ。彼の腕が膨らむ。クラトは縦切りを繰り出すがアグマはそれを右手で握った。クラトの剣を赤い血が伝う。アグマは己の優位を確信しトールを人差し指で指差しながら言葉を紡いだ。
「お前の力量は理解した。まだ伸びしろもある。その赤髪のガキを差し出せ。これは要求では無い、命令だ」
クラトは歴戦の猛者だ。相手の力量を理解できないほど愚かではない。しかし逃げるわけにもいかなかった。
自分にとって最も大切なものをみすみす失うのは耐えられない。彼は教え子のためなら命を捨てる覚悟があった。死んでも守りきるとクラトは心の中で呟いた。彼にアグマの強力な圧力が加わり顔中から汗を流す。アグマはノルテの中で自分が最強だと自負していた。
多岐に渡る理由から同族と死闘を展開したこともあった。しかし一度も敗北をきっすることは無かった。全て圧勝で面白みに欠けているとアグマは内心つまらなく思っている。




