38話
今は深呼吸を「スーハー」としている。トール達に気付くとニッコリと微笑み言葉を口にした。
「俺様はかの有名な勇者カーノンだ! 今は訳あって盗賊に身をやつしているのだ。さあ食べ物をよこせ! さもなくば……」
トールは息を飲み
「さもなくば……」
「……俺の考えた難しいクイズにチャレンジするか選びな」
ガクッとするトール達三人。このうさん臭い勇者はアホなのかそれともアホなのか。
大きなパンパンに膨れた鞄をせおわされている弱気なトールは
「じゃあ難しいクイズで……」
顔立ちだけは男前なカーノンは言葉を紡いだ。
「ではいくぞ……」
ゴクリと唾を飲むトールと白けている女性陣。
「……いつも自分の真似をしてストーカーしてくるのは何?」
トールは即答した。
「え……えと影?……」
「……うぐ! うぐぐ! 正解だよクソヤロウー!」
カーノンはそう言い残すと涙と鼻水を盛大に垂らしながら疾走して姿を消した。
「なんなのよあいつは……」
残念な人を見る目でスミレはカーノンを見送った。滅多にいないほど残念な勇者だ。ていうか本当にあんなのが勇者なのであろうか。疑問が山積だ。




