30話
「ムフフ! 俺はどこにいるのでしょうか?」
スケベ心丸出しの泥棒王は真っ先に大きな目に肩までの黒髪のスミレに接近した。そしてスミレの形の良いお尻を触ろうと手を伸ばした。
「ムフフ!」
「そこ!」
「グゲ!」
スミレが声の発生源を探知し強化魔法で攻撃力を四倍に増したパンチがアッシュの右頬に炸裂した。彼は蛙が踏み潰された際に出そうな断末魔を口にした。
アッシュは吹っ飛び壁に背中をしこたまぶつけた。アッシュは始めはボヤーっと次いでヌッと姿を現した。完全にのびている。スミレの一発KOで寸劇のようだった。
アッシュをギルドに連行した後、宿屋の晩餐のテーブルでカルトは話した。
「トール、スミレ……話があるんだが」
笑顔をカルトに向けスパゲティーを巻き取る動作を止めるスミレは
「え、なになに?」
興味津々といった彼女の表情は次の一言で凍り付いた。
「おまえ達と別行動をとることにする」
「え? なんで? 私達のこと嫌いになったの?」
「違う、俺は強くなりたいんだ……スバリスの元に行く」
カルトの発言にトールは唖然とした様子だったが口を挟んだ。
「え? いつから行くの?」
「……この話が終わったらだ……フッ」




