25話
スミレはカルトを好いていた。小学生の時、気が弱く虐められていたのを救ってくれたのがクラスでリーダー的な存在のカルトだった。
「闇食い……っ!」
カルトが右手に暗いもやを宿らした時、薮からもう一匹のムカーデが現れカルトの右腕の二の腕辺りに食らいついた。
カルトが苦痛に表情を歪める。しかし右手を反射的に二匹目のムカーデにくっつける。
「グギャー!!」
新参者のムカーデは苦悶し暴れた。何故ならカルトの闇食いで頭部を失ったからだ。激痛を味わったことだろう。
「渦神!」
トールが木の枝を跳び伝いもう一匹のムカーデを小さい渦が指先で五つ巻く右手をぶつける。渦神をまともにくらいムカーデは顔を何度も切り裂かれ地面に落ち赤い血液を流しながら悶絶した。
「グゲゲー!」
地面に横たわる二匹のムカーデの背中に魔法で強化した重いパンチをめりこませるスミレ。遂に仕留めたのだ。
「カルト君手を出して」
ムカーデ二匹の死骸を横目にカルトが流血している四つの小さな穴がある右手を差し出す。するとスミレは目をつむり両手を傷口に当て
「治水!」
スミレの両手から緑色の液体がカルトの腕にかかった。ジュッと音がしたかと思うとみるみる止血され穴が塞がっていく。




